SASE(Secure Access Service Edge)の分野で業界をリードするCato Networksは、AIセキュリティの専門企業であるAim Securityを買収したことを発表しました。この買収は、Cato Networksにとって初めての試みであり、企業のAI(人工知能)活用をより安全に進めるための重要な一歩となります。
AIはビジネスのあらゆる面で急速に普及しており、企業はAIなしでは業務を進められない時代になりつつあります。しかし、AIの利用は、セキュリティやプライバシーに関する新たなリスクも生み出しています。Cato Networksは、Aim Securityの技術を取り入れることで、これらのリスクから企業を守り、AIエージェントやAIアプリケーションを安全に導入できるよう支援します。
Cato Networksは、今回の買収発表と同時に、年間経常収益(ARR)が3億ドルを超えたことも明らかにしました。さらに、今年6月に発表されたシリーズGの資金調達ラウンドには、Acrew Capitalから5,000万ドルが追加投資され、資金調達総額は4億900万ドルに拡大しました。

AI変革とSASEの役割
Cato NetworksのCEO兼共同創業者であるシュロモ・クレイマー氏は、「AI変革は、今後10年間で企業の姿を大きく変える主要な原動力になるでしょう」と述べています。SASEは、従業員、パートナー、拠点、クラウド、デバイス、アプリケーションなど、企業内のすべての情報資源を安全につなぐための基盤(ファブリック)として広まりつつあります。このため、AIが関わるすべてのやり取りを管理する上で、SASEは中心的な役割を果たすと期待されています。
Cato Networksのアジア太平洋地域フィールドCTOである金子 春信氏は、「今回のAim買収により、Catoは自社開発のプライベートAIアプリケーションやAIエージェントの保護、AI開発のセキュリティをさらに強化できます。これにより、日本企業のAI活用を包括的なセキュリティ対策で支援したいと考えています」と語っています。

Aim Securityが提供するAIセキュリティソリューション
2022年に設立されたAim Securityは、企業向けのAIセキュリティ分野で最先端を走る企業です。彼らの先進的なAIセキュリティソリューションは、以下の3つの主要な課題に対応します。
1. パブリックAIアプリケーションの安全な利用
Aim Securityは、従業員が許可なく利用している「シャドーAI」(企業が把握していないAI利用)を検知し、すべてのAI利用状況を監視・保護します。これにより、Microsoft Copilotのような公開されているAIエージェントや、Cursorのような新しいAIコーディングエージェントを安全に利用できるようになります。
2. プライベートAIアプリケーションとAIエージェントの保護
Aim Securityの「Aim AI Firewall」は、企業内で開発・利用されるAIアプリケーションやAIエージェントを、ランタイムAI攻撃(AIが動作中に受ける攻撃)から守ります。これにより、ユーザー、AIエージェント、社内AIアプリケーション、AIモデル間のすべてのやり取りに、企業のセキュリティやガバナンスのルールを適用できます。
3. AI開発ライフサイクル全体のセキュリティ管理(AI-SPM)
機械学習モデルの訓練からカスタムAIエージェントの構築まで、AI開発の全工程を保護します。Aim Securityは、AIのセキュリティやコンプライアンスに関するリスクを、実際に運用が始まる前に継続的に発見、検出し、修正を支援します。また、社内AIモデルを検査して設定ミスや弱点を見つけ出し、AIモデルのセキュリティ状態を常に最適な状態に保つ手助けをします。
Aim Securityの研究チームは、Microsoft 365 Copilotで初めて報告されたゼロクリックAI脆弱性「EchoLeak」(CVE-2025-32711)を発見するなど、その専門性の高さを示しています。

CatoのSASEプラットフォームとAIセキュリティの統合
Cato Networksは、企業のすべてのネットワーク通信を保護するために、クラウドベースのSASEプラットフォームを開発しました。このプラットフォームは、AIアプリケーションにアクセスするユーザーから、AIを活用したワークフローを支えるAIエージェント、AIモデルまで、AIに関わるすべてのやり取りを完全に可視化し、保護することができます。
Aim Securityが提供する強力なAIセキュリティ機能は、Cato SASE Cloud Platformの能力をさらに高めます。これらの機能は、AIの複雑な特性や、AIに対する新たな攻撃方法に対応し、脅威やデータ漏洩を防ぎます。Cato Networksのグローバルな可視化とセキュリティポリシー適用機能が、Aim SecurityのAIセキュリティ技術と専門知識と統合されることで、AI変革を安全に進めるための体制が整いました。
SASE導入のプロセス
Cato Networksは、ネットワークの近代化(SD-WAN)、セキュリティ機能の統合(SSE)、ハイブリッドワーク(ZTNA)、そして今回加わったAIセキュリティ(AISEC)といった機能を、シンプルなライセンスで段階的に導入できるモジュール方式をサポートしています。すでにCato Networksを利用しており、AIセキュリティを強化したい企業は、すぐにAim Securityの機能を利用開始できます。
Cato Networksは、すべての機能を一つの統合されたプラットフォームで提供するという方針のもと、2026年初頭にはAim Securityの機能をCato SASE Cloud Platformの一部として提供する予定です。
関連情報
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Cato Networksの詳細については、Cato Networks公式サイトをご覧ください。
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今回の買収に関する詳細は、Cato Networksのブログ記事「AI変革の安全確保:Cato NetworksがAim Securityを買収した理由」をご確認ください。
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Aim Securityの研究チームが発見したゼロクリックAI脆弱性「EchoLeak」(CVE-2025-32711)に関する情報は、こちらで参照できます。

