障がい者主動のAI開発システムが人工知能学会全国大会で優秀賞を受賞 – クオルテックと住友電工の共同研究

AI倫理・社会問題

障がい者主動のAI開発システムが人工知能学会で優秀賞を受賞

株式会社クオルテックと住友電工株式会社が共同で研究開発した「障がい者主動のAI開発を実現するHuman-in-the-Loop機械学習システム」が、2025年度人工知能学会全国大会において「2025年度全国大会優秀賞」を受賞しました。この研究は、AI技術の社会的な活用と、より多様な人々がAI開発に参加できる可能性を示しています。

研究室で顕微鏡とモニターを使う女性研究者

AI開発の課題と新しいアプローチ

AI(人工知能)を賢くするためには、「教師データ」と呼ばれる、AIに「これはネコ」「これはイヌ」のように教えるための準備データがとても重要です。この教師データを作る作業(アノテーションといいます)は、AIの性能を決める鍵となりますが、多くの企業がこの作業に共通の課題を抱えていました。

この課題に対し、住友電工は知的障がいを持つ方々をデータ解析業務の中心に据えるという先進的な取り組みを進めていました。この知見を活かし、クオルテックと住友電工は2024年から、「誰でも簡単に使える」アノテーション・AI開発システムの共同開発をスタートしました。

Human-in-the-Loop機械学習システムとは

本研究で開発された「Human-in-the-Loop機械学習システム」とは、人間とAIが協力し合い、お互いの得意な部分を活かして作業を進めるシステムのことです。具体的には、人間がAIに教えるデータを作り(教師データ作成)、AIがそれを学んで(学習)、AIが出した答えが正しいか人間が確認する(検証)というサイクルを繰り返します。このサイクルに人間のフィードバックを組み込むことで、AI開発の難しい部分を意識せずに、効率的に作業を進められるように設計されています。

タッチスクリーンモニターで画像を操作する人物

知的障がい者のAI開発への参加を実証

このシステムは、知的障がいを持つ方々がAI開発に関する専門的な知識がなくても、AI開発業務に取り組めることを示しました。検証実験では、すみでんフレンド株式会社に所属する知的障がいを持つ方々が協力し、参加者全員がAI開発のタスクを最後までやり遂げました。

この実験の結果、システムは非常に操作しやすいと評価され、さらに、知的障がいを持つ方々が作成した教師データの精度は、障がいのない方々が作成したものと同等であることが確認されました。

これまで、知的障がいを持つ方々がAI分野で関わる業務は、主に教師データ作成(アノテーション)に限られていました。しかし、この研究は、適切なツールがあれば、AIモデルの作成というさらに専門的な領域まで担えることを証明しました。

今後もクオルテックと住友電工は協力し、知的障がいを持つ方々の仕事の幅をさらに広げるための研究開発を進めていくとのことです。

論文情報

本研究の詳しい論文はこちらからご覧いただけます。

株式会社クオルテックについて

Qualtecのロゴ

株式会社クオルテックは、半導体や電子部品の不良解析、信頼性試験などを行う会社です。品質管理のコンサルティングや、微細加工、試験装置の開発なども手がけています。

  • 代表取締役社長:山口友宏

  • 本社所在地:大阪府堺市堺区三宝町4丁230番地

  • HP:https://www.qualtec.co.jp/

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