ZOZO研究所の研究チームが、日本最大級のAI学術イベントである「2025年度 人工知能学会全国大会(JSAI2025)」において、「全国大会優秀賞」を受賞しました。

この受賞は、川島貴大氏らの研究チームによる「集合間Bregmanダイバージェンスと置換不変NNによるその学習」という研究が高く評価されたものです。
なぜ「集合データ」の距離を測るのが難しいのか
私たちが普段使っているAIの技術は、データとデータの「距離」を測ることを基本としています。しかし、ファッションコーディネートのように、いくつかのアイテム(部分集合)を組み合わせてできる「集合データ」の場合、そのデータ同士の距離を正確に測るのはこれまで大変でした。
例えば、クローゼットにある服の中からいくつかの服を選んでコーディネートを作るように、全体の中から部分を選んでできるデータのことを「集合データ」と呼びます。ZOZO研究所では、このような集合データ間の距離を、もっと柔軟に測れる方法を探していました。
新しいAI技術のポイント
今回の研究では、集合データ間の距離を測る新しい方法と、それをAIに学習させるための仕組みを提案しました。主なポイントは以下の3つです。
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集合間の新しい距離の測り方を提案
「Bregmanダイバージェンス」という、データ同士のズレを測るための数学的な方法を応用し、集合データに特化した新しい距離の測り方を考え出しました。これにより、これまでの方法よりも、データの複雑な特徴をより正確に捉えられるようになりました。 -
新しい距離を学習するAIの仕組みを開発
「置換不変ニューラルネットワーク」という、データの順番が変わっても同じ結果を出せるAI技術を使って、提案した新しい距離の測り方をAIに学習させる仕組みを作りました。これにより、AIが集合データ特有の構造を柔軟に理解できるようになりました。 -
実験でその有効性を確認
手書き文字のデータや、3Dの形を表す「点群データ」を使って、提案した方法が本当に役立つのかを試しました。特に点群データの分析では、小さなAIモデルでも、最先端の大きなAIモデルに匹敵する高い性能を出せることを確認しました。
今後の展望
今回の研究で使われたAIモデルはまだ小規模なものですが、さらに改良したり、大規模にしたりすることで、もっと高い精度が期待できます。この技術は、将来的にはZOZOグループのサービスを通じて、お客様の体験をより良くすることにも役立つでしょう。
研究の概要
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対象研究:集合間Bregmanダイバージェンスと置換不変NNによるその学習
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研究チーム:株式会社ZOZO NEXT/川島 貴大氏、メルボルン大学/木村 正成氏、統計数理研究所・理化学研究所AIP/相馬 輔准教授、統計数理研究所・早稲田大学/日野 英逸教授
ZOZO研究所について
ZOZO研究所は、「ファッションを数値化する」ことをミッションに掲げ、ZOZOグループが持つ膨大なファッション情報を活用して、ファッションを科学的に解明するための研究開発を行っています。
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所名:ZOZO研究所(ZOZO Research)
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設立:2018年1月31日

