アイリスが世界大会で金メダルを獲得!国産AIモデル「Fast-Math」を公開、そのすごさを解説

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アイリスが「Fast-Math」を発表、世界トップクラスのAIモデル

アイリス株式会社は、高い精度と計算効率を両立させた新しいAI基盤モデル「Fast-Math」を公開しました。このモデルは、Googleが運営する世界最大のAIコンペティション「Kaggle AI数学オリンピック」で金メダルを獲得した同社のエンジニアによって開発された、世界トップクラスの性能を持つ国産モデルです。

「Fast-Math」とは?

「Fast-Math」は、オープンソースの「AlibabaのQwen3」などを基に構築された、アイリス独自のAI基盤モデルです。このモデルの大きな特徴は、AIの「正確さ」を保ちながら、従来モデルに比べてはるかに少ない計算量でAIが推論を行える「効率性」にあります。

近年、AIの開発や利用には、高性能なコンピューター(GPUなど)や大量の電力が必要となり、これが大きな課題となっています。例えば、アメリカの大手テック企業では、AI開発のために原子力発電所数十基分の電力を消費するとも言われています。このような状況から、「計算効率」の重要性はますます高まっており、地球環境への配慮や社会インフラの維持という観点からも、人類が解決すべき重要な課題として認識されています。

また、AIは国の経済安全保障においても重要な役割を果たすようになっており、海外企業の管理下にない「ソブリンAI(国産のAI基盤モデル)」の必要性が指摘されています。

高い精度と驚きの効率性を両立

アイリスのAIエンジニアである吉原浩之氏によると、「Fast-Math」は、長考型モデルとして知られる「DeepSeek-R1」からヒントを得て開発されたモデル群です。

このモデルは、AIに答えを教え込む「教師あり学習」と、AIが自分で試行錯誤して学ぶ「強化学習」という2つの学習方法を組み合わせることで、数学オリンピックの国内大会レベルの難しい問題にも対応できるほどの精度を維持しつつ、AIが結果を出すまでの時間を最大で約65%も短縮することに成功しました。

特に「Fast-Math-Qwen3-14B」というモデルは、「AIME」や「MATH500」といった主要な性能評価テストにおいて、言語処理の最小単位である「トークン」あたりの精度で、同じ規模の他の大規模言語モデル(LLM)の中でもトップクラスの性能を示しています。

下のグラフは、「Fast-Math」モデルの性能を示しています。

Fast-Mathモデルの精度と計算効率の比較

グラフの縦軸は「精度」(どれだけ正しい答えを出せるか)、横軸は「計算効率」(どれだけ少ない計算量で答えを出せるか)を表しています。グラフの上の方にあるほど精度が高く、左の方にあるほど効率が良いことを意味します。実線で示されている「Fast-Math」モデル群は、破線で示されたこれまでのモデルと比べて、計算効率の面で大幅な改善が見られます。

オープンソースでの公開と今後の展望

今回発表された「Fast-Math」のモデル、その開発に使われたソースコード、そして学習データは、すべて商用利用が可能なライセンス(CC BY 4.0 ライセンス)で、AIモデルの共有プラットフォーム「Hugging Face」上で公開されています。

また、このプロジェクトで得られた研究成果は、国際学会「ICML 2025」の「2nd AI for Math Workshop」でも発表されました。

AIの電力消費や経済安全保障といった大きな課題に取り組む「Fast-Math」は、今後のAI技術の発展に大きく貢献することが期待されます。アイリス株式会社は、AI製品だけでなく、機械学習技術そのものの研究開発も積極的に進めています。今後の展開に引き続き注目が集まります。

アイリス株式会社について

アイリス株式会社は、「みんなで共創できる、ひらかれた医療をつくる。」というミッションを掲げ、2017年に創業しました。現役医師である代表の沖山翔氏をはじめ、医療従事者や行政出身者、AI医療に特化したデータサイエンティストなど、様々な分野の専門家が集結しています。深層学習技術(AI技術)を活用し、医師が持つ専門的な技術をデジタル化するAI医療機器の開発に取り組んでいます。

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