AIVALIX株式会社とインディゴ株式会社の共同研究チームは、第67回 人工知能学会セマンティックウェブとオントロジー研究会(SIGSWO)にて、「Knowledge Graph Retrieval Augmented Generation(KGRAG)」に関する共同研究論文を発表しました。この「KGRAG」は、AIが複雑な質問に対して、より正確に、そして効率的に答えを見つけ出すための新しい技術です。

KGRAGとは? AIの「賢い情報探し」の秘密
AIがたくさんの情報の中から、私たちが知りたい答えを探し出すとき、その情報の多さから「どこを探せばいいか分からない」「計算に時間がかかりすぎる」という問題が起こることがあります。特に、いくつかの情報を組み合わせて答えを導き出す「多段階質問応答」では、この問題が顕著になります。
KGRAGは、この問題を解決するために開発されました。情報を「ナレッジグラフ」という、まるで地図のように整理された形で扱い、質問の内容に応じて、必要な情報の種類(型情報)や、質問文と似ている情報(ベクトル類似度)、そしてAI自身(言語モデル)の評価を組み合わせることで、探し出す範囲を段階的に絞り込んでいきます。
これにより、AIは無駄な計算を減らしながら、高い精度で正しい答えにたどり着くことができるようになりました。
発表された論文はこちらからダウンロードできます。
https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2025.SWO-067_01
KGRAGのすごいポイント
この研究の主なポイントは以下の3つです。
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情報の種類(型情報)で探す範囲をコントロール
質問から「どんな種類の情報が必要か」をAIが予測し、それに基づいて探す範囲を明確に限定します。これにより、従来の単に似た情報を探す方法では難しかった、情報の「構造」に基づいた高精度な推論が可能になりました。 -
似ている情報とAIの評価を組み合わせる
まず、質問と「似ている」情報を幅広く選び出し、その中からAI(大規模言語モデル:LLM)が「本当に正しい」と判断するものを厳選します。これにより、計算に必要な資源を抑えながら、回答の精度を高めることができます。 -
実験で効果を確認
映画に関する質問データセット「MetaQA」を使った実験では、いくつかの段階を経て答えを探す複雑な質問(3-hop)において、KGRAGが優れた性能を発揮することが確認されました。これにより、AIの計算コストを抑えつつ、複雑な質問にも安定して対応できることが示されています。
これからKGRAGが活躍する場所
このKGRAG技術は、生成AIとナレッジグラフを組み合わせることで、これからの社会で新しい知識の活用基盤となることが期待されています。特に、AIVALIX株式会社は、インフラ、プラント、製造業といった分野で、知識の引き継ぎ、意思決定の支援、異常の原因特定などへの応用を進めていく予定です。
AIVALIX株式会社のCTOである大島虎太郎氏は、「この研究では、ナレッジグラフの『構造』をAIがどう活用するかに焦点を当てました。質問から必要な情報の種類を予測し、探す範囲を段階的にコントロールすることで、AIが『考える過程』そのものを最適化できるようになりました。今後は、インフラ・プラント・製造領域での知識継承や意思決定支援など、実際の業務に役立つAIへと展開していきます」とコメントしています。
AIVALIX株式会社について

AIVALIX株式会社は、「AIの力で、しなやかで強い社会インフラを築く」をミッションに掲げる、東京大学発のAIスタートアップです。日本をはじめ世界中で深刻化する社会インフラの老朽化や、熟練技術者の減少といった問題に対し、AI技術を活用してインフラの点検、維持管理、更新といったプロセスを最適化・自動化するプラットフォーム「INFRAI」を開発しています。
同社は、現場の知恵と最先端のAI技術を融合させることで、変化やトラブルに柔軟に対応し、迅速に回復できる「レジリエントなインフラ」の実現を目指しています。インフラメンテナンス業界における世界一のDX/AIプラットフォーマーを目指し、持続可能で強靭な社会を支える新しい基準を創り出すことに挑戦しています。
- 公式サイト: https://www.aivalix.co.jp/
共同研究や取材にご興味のある方へ
AIVALIX株式会社は、今回の「KGRAG」技術の社会実装に向けて、現場のデータや技術文書など、知識活用に関する実際のデータを提供いただける企業、自治体、研究機関を広く募集しています。PoC開発(実証実験)や業務連携、共同研究など、さまざまな形での協力を検討できます。
この取り組みは、「知識活用による生産性向上」「AIの説明のしやすさ」「産業のデジタル変革」といった社会的なテーマにもつながるものです。ご興味のある方は、ぜひAIVALIX株式会社 広報担当までご連絡ください。
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Email:info@aivalix.co.jp
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電話:080-1383-0702

