AIが医療を大きく変える!肺結節を見つける力が大幅アップ
AI(人工知能)が医療の現場でどのように役立つのか、その最先端の研究結果が発表されました。長崎大学病院と、医療画像診断AIを開発するプラスマン合同会社が、2025年日本肺癌学会学術集会で、AIシステム「Plus.Lung.Nodule」に関する臨床研究の成果を公開しました。
この研究で特に注目すべきは、AIを使うことで、肺の異常(肺結節)を見つける能力が大きく向上したことです。特に、AIのサポートを受けた非専門医が、AIを使わない専門医よりも高い精度で肺結節を見つけられたという結果は、AIが医療現場にもたらす大きな可能性を示しています。

研究で分かったAIのすごい力
1. 肺の異常を見つける能力が大幅アップ
少ない放射線量のCT画像(低線量CT)を使った肺がん検診で、AIのサポートを受けると、肺結節を見つける能力(検出感度)が大きく向上しました。AIを使うことで、患者さん全体で見た見つける能力が87.8%から93.8%へ、一つ一つの結節で見つける能力が52.3%から73.8%へと改善し、結節検出能力が約41%も向上したことが示されました。
2. AIが医師の経験の差を埋める
この研究で明らかになった特に重要な点は、AIのサポートが医師の経験レベルに関わらず役立つことです。AIの支援を受けた非専門医の見つける能力(93.4%)が、AIを使わない専門医の見つける能力(91.0%)を上回る結果となりました。これは、AIが経験の浅い医師の診断能力を大きく引き上げ、医療の質を均一化する可能性を示しています。
3. AIを使っても「誤診が増える」心配なし
AIを導入すると、誤って病気と判断してしまう「偽陽性」が増えて、医師の負担が増えるのではないかと心配されることがあります。しかし、この研究では、AIを使った場合でも、誤って病気と判断する割合(特異度)は約90%で安定しており、医師の業務負担が増えないことが確認されました。
4. 実際の医療現場で使いやすい方法を検証
AIを実際の医療現場でどう使うのが良いか、2つの方法が評価されました。
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セカンドリーダー型: 医師が一度CT画像を読影した後、AIが確認し、見落としがないかをチェックする方法です。
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コンカレントリーダー型: 医師がAIの情報を参考にしながら、リアルタイムで診断を進める方法です。
どちらの方法でも診断の精度が向上しましたが、特に経験の少ない医師においては、AIと一緒に診断するコンカレントリーダー型の方が、より効率的に見つける能力を高める効果があることが分かりました。
5. どんなタイプの肺の異常でもAIがサポート
肺結節にはいくつかの種類がありますが、AIはどのタイプの結節に対しても検出感度の向上を示しました。
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Solid nodule(充実性結節): 51.9% → 72.1% (39%改善)
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Pure GGN(すりガラス影): 44.8% → 73.5% (64%改善)
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Part-solid nodule(部分充実性結節): 94.9% → 97.4% (高い感度を維持)
これにより、様々な肺の異常をAIが効果的に見つけることができると期待されます。
専門家からのコメント
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野 教授の芦澤和人先生は、「AI支援により、読影の経験年数に関わらず全ての読影医の検出感度が有意に向上しました。特異度が維持されたことは、AIが偽陽性を増やさず、読影医の業務負担を増加させないことを意味します。本研究はAI支援が実用的なツールとなり得る可能性を示す重要なエビデンスであると考えられます」とコメントしています。
また、プラスマン合同会社 代表社員の大塚裕次朗氏は、「独立した臨床研究でAI支援の有効性が検証されたことは、開発者として大変嬉しく思います。今回の研究結果は、読影医の先生方を支援し、患者さんの早期発見に貢献できることを示すものです」と述べています。
Plus.Lung.Noduleについて
「Plus.Lung.Nodule(プラスラングノジュール)」は、CT画像を解析し、医師の診断を補助するプログラム医療機器です。日本国内の医療機関で使用されており、認証番号は301AGBZX00004000です。
プラスマン合同会社について
2018年に設立されたプラスマン合同会社は、AIを使って診断画像を革新する日本の医療AI企業です。胸部CT解析AI「Plus.Lung.Nodule」や胸部X線解析AI「Plus.CXR」など、患者さんの診断や治療の改善に役立つAI製品を幅広く開発しています。日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、アジアなど世界中でAIを通じた医療の質の向上と効率化に貢献しています。
プラスマン合同会社やAIソリューションに関する詳しい情報は、以下のウェブサイトをご覧ください。
今回の研究は、福島文、村山貞之、筒井伸氏らが「低線量CT画像の肺結節診断に対する人工知能を用いた診断支援ソフトの読影者に及ぼす影響についての検討」として、日本肺癌学会学術集会2025年で発表されました。

