ヘッドウォータース、AIが自分で考えて動く「次世代フィジカルAI」市場に本格参入

ビジネス活用

ヘッドウォータースが「自律思考型フィジカルAIテクノロジー」で市場に参入

AIソリューションを手がける株式会社ヘッドウォータースが、AIエージェント技術「Agentic RAG(エージェント型検索拡張生成)」を軸に、次世代フィジカルAI市場へ本格的に参入することを発表しました。

フィジカルAIとは、現実世界で動き回るロボットや乗り物などに搭載されるAIのことです。これまでのロボットは、指示されたことしかできませんでしたが、ヘッドウォータースは「現場で自分で考えて行動できるAI」や「予期せぬ問題にも柔軟に対応できるAI」を目指す「自律思考型フィジカルAIソリューション」を企業向けに展開します。

なぜ今、フィジカルAIが注目されるのか

製造業や物流、インフラ点検といった現場では、すでにフィジカルAIの導入が進んでいます。しかし、環境の変化にうまく対応できなかったり、急な状況変化に柔軟な判断ができなかったりといった課題がありました。これらの課題を解決することが、フィジカルAI市場をさらに大きくするための鍵とされています。

日本政府もAIやロボットを国の重要な戦略として進めており、フィジカルAIによる生産性の向上は、今の日本にとって非常に大切な課題です。

ヘッドウォータースは、かつて人型ロボット「Pepper」のアプリ開発に携わった経験から、現場でAIロボットを動かすためのたくさんのノウハウを培ってきました。同社のAgentic RAGは、AIに「目標を設定する能力」と「自分で情報を調べて行動する能力」を与えることで、ロボットや乗り物が「言われたことだけをやる機械」から「現場の状況を理解し、最善の答えを自分で見つける賢いパートナー」へと進化することを目指します。

背景:国家戦略とグローバルエコシステムへの位置づけ

主要な企業との連携で技術を強化

ヘッドウォータースは、フィジカルAIとAIエージェントの土台となる技術を提供するNVIDIA(エヌビディア)やマイクロソフトといった企業と協力し、これらの先進技術を積極的に取り入れています。

NVIDIAの技術を使うことで、フィジカルAIが現場で素早く処理を行う「エッジAI」や、現実世界を仮想空間に再現する「デジタルツイン」の技術が加速します。これにより、AIがリアルタイムで判断を下す能力が向上し、開発スピードも速まります。

また、マイクロソフトの技術を活用することで、AIエージェントが大量の情報を学習したり、データを管理したり、高度な判断モデルを作ったりする基盤を強化します。これにより、企業が求める高いセキュリティや安定した運用を実現します。

主要プラットフォームとの連携:エッジ・クラウド・デジタルツインの統合

フィジカルAI市場で光る4つの強み

ヘッドウォータースが今回の市場参入で提供する、AIエージェント技術とフィジカルAIを現場で動かすための主な強みは以下の通りです。

  1. ナレッジグラフで現場の常識を理解
    「ナレッジグラフ」という技術を使うことで、AIは情報を「物事の関係性」として理解できるようになります。これにより、人間のように状況全体を把握し、最適な行動を自分で考え出すことが可能になります。
  2. マルチモーダルAIで自律性を実現
    ヘッドウォータースが自動車向けのAIエージェントで培った「VLM(視覚言語モデル)」と、ソーシャルロボットで実績のある「SLM(小型言語モデル)」の技術を組み合わせます。これにより、カメラからの映像や音声、テキストなど、複数の情報を統合して理解するAIが、より自律的に動けるようになります。
  3. デジタルツインでAIを安全に訓練
    NVIDIA Omniverseのような仮想空間(デジタルツイン)を使って、AIエージェントを安全かつ徹底的にシミュレーション(模擬実験)します。これにより、実際の現場でAIが信頼性高く動くための訓練を行います。
  4. 誤動作を抑え、高い実行精度を実現
    Agentic RAGは、AIが行動する前に、企業のマニュアルや設計図をリアルタイムで確認することで、AIが間違った動き(ハルシネーション)をするのを極限まで減らします。さらに、複雑な作業をAIが実行する「Agentic Work Flow」では、99%という高い精度を達成しており、フィジカルAIの安全性を裏付けています。

これらの技術を通じて、ヘッドウォータースは国内の主要なフィジカルAI企業やロボット提供企業、そして世界のプラットフォーム企業と協力し、製造業、自動車・モビリティ業界、エネルギー業界へとソリューションを展開していく予定です。

今後の展望

ヘッドウォータースは、Agentic RAGを核としたフィジカルAIソリューションをさらに広げ、製造現場での複雑な品質検査や設備メンテナンス、物流倉庫でのロボット連携による完全自動化、重要なインフラの自律的な巡回・点検などへの応用を目指します。

将来的には、AIエージェントが自分で知識を整理し、更新していく「Agentic Knowledge Graph」の仕組みを取り入れ、AIが継続的に自己進化することを目指します。また、AIの判断の「最終的な精度」をさらに高めるために、量子コンピューティング技術の活用も探求し、未来の産業における技術革新をリードしていくとのことです。

用語解説

  • Agentic RAG(エージェント型検索拡張生成)
    企業が持つたくさんの知識(マニュアルや設計図など)を元に、AIが「自分で情報を探し、判断し、仕事の段取りを進める」ための中心となる技術です。これまでのRAGが「情報を探して答える」だけだったのに対し、Agentic RAGは、作業を細かく分解し、どう行動するかを決め、その結果を検証するところまでAIが担うため、現場の仕事を大きく自動化できます。

  • 次世代フィジカルAI
    ロボットや乗り物など、現実世界で動くAIに高い自律性(自分で判断して行動する能力)を持たせ、現場での判断や高度な作業を自動化する技術分野です。AIとロボットが一体となることで、製造、物流、インフラといった大きな市場で、人手不足の解消や安全性の向上を実現する重要なテーマとして、世界中で投資が加速しています。

参考情報

会社情報

  • 会社名:株式会社ヘッドウォータース

  • 所在地:〒163-1304 東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー4階

  • 代表者:代表取締役 篠田 庸介

  • 設 立:2005年11月

  • URL :https://www.headwaters.co.jp

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