GPU高騰時代に朗報!AWS Trainium活用ノウハウが無料で手に入る
近年、AI(人工知能)技術の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスに大きな変化をもたらしています。特に、大規模言語モデル(LLM)のような高度なAIを開発するには、高性能なGPU(画像処理装置)が不可欠です。しかし、世界的なAIブームの影響で、この高性能GPUの調達コストが高騰し、多くの企業がAI開発を進める上で大きな課題に直面しています。
そんな中、国産LLM開発を手がけるカラクリ株式会社が、このGPU高騰の課題を乗り越えるための画期的なノウハウを無償で公開しました。それが、AWS(アマゾン ウェブ サービス)が開発した深層学習に特化したチップ「AWS Trainium」を徹底的に活用する技術です。

なぜAWS Trainiumが注目されるのか?
AWS Trainiumは、従来のGPUと比較して優れたコストパフォーマンスを発揮すると言われています。これは、AI開発におけるコスト削減に直結するため、多くの企業にとって魅力的な選択肢です。しかし、Trainiumを使いこなすには、専用のSDK(Neuron SDK)への対応や、計算の仕組みをTrainium向けに最適化するといった専門的な知識が求められます。特に、日本語で書かれた実践的な手順書が不足しており、導入のハードルが高いという課題がありました。
カラクリ株式会社は、自社でAWS Trainiumを実際に活用してきた経験から得られた知見を体系化し、このノウハウを公開することで、より多くの技術者がTrainiumを有効活用できるよう支援したいと考えています。これにより、日本のAI開発における技術的な選択肢が広がり、より多様なAIが生まれることに貢献することを目指しています。
「AWS Trainium 50本ノック」で学ぶ実践ノウハウ
今回公開されたノウハウは、「AWS Trainium 50本ノック」と題され、AI開発に携わるエンジニアが実践的なスキルを身につけられるように構成されています。シェルの基本操作、PyTorch、TransformerといったAIの基礎知識を持つエンジニアを対象としており、以下のような内容が含まれています。
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AWS Trainiumの基本: Trainiumインスタンスの起動方法や、チップの稼働状況を確認する方法、Trainium特有の「遅延評価(Lazy Mode)」という処理の仕組みを解説します。
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大規模な計算機クラスタの構築: 大規模なAI学習に必要なインフラ(たくさんのTrainiumを連携させて動かす仕組み)を、CUI(コマンド入力)で構築する手順が詳しく説明されています。
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LLMの分散学習の実装: 複数のTrainiumを使って、大規模言語モデルを効率的に学習させるための環境構築や、学習結果の保存、高速化のためのコンパイル、そして実際に分散学習を実行する手順が網羅されています。
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最先端のモデル移植技術: 特に注目されるのが、Llama 3という人気のAIモデルをベースにしたアーキテクチャを、AWS Trainium向けに最適化して動かすための詳細な手順です。これは、新しいAIモデルを新しいハードウェアで動かす上で非常に重要な技術です。
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分散学習の理論: データを複数に分けて同時に処理する「データ並列」、モデルの一部を複数に分けて処理する「テンソル並列」、AIの処理の流れを複数に分けて処理する「パイプライン並列」といった、AIの効率的な学習方法の原理と、Trainium環境での活用方法が解説されています。
この「AWS Trainium 50本ノック」は、以下のリンクから参照できます。
今後の展望
カラクリ株式会社は、このノウハウ公開を通じて得られたフィードバックや新たな知見を活かし、今後もLLM開発における技術的な課題解決とイノベーションを推進していく予定です。将来的には、AWS Trainiumの次期バージョンであるTrn2への対応など、最新のアクセラレータ活用ノウハウを継続的にAI開発コミュニティに提供していくとしています。
カラクリ株式会社について
カラクリ株式会社は、「FriendlyTechnology」をビジョンに掲げ、大規模言語モデル(LLM)をカスタマーサポートに実用化することを目指すAIスタートアップです。2018年からトランスフォーマーモデルBERTの研究を開始し、2022年からはGPTを含む大規模言語モデルの研究に取り組んでいます。同社が提供するカスタマーサポート向けAIシリーズは、高島屋、SBI証券、セブン-イレブン・ジャパン、星野リゾートなど、多くの企業に導入されています。

