イラスト制作、アナログとデジタルどちらが人気?500人アンケートで判明した意外な結果とAIツールの未来

クリエイティブ活用

イラストを描き始める際、まず悩むのが「どんなツールを使おうか」という点でしょう。大きく分けて「アナログ」と「デジタル」という選択肢があり、それぞれに多様なツールが存在します。オンラインイラスト教室を運営するアタムアカデミーが、趣味や仕事でイラストを描いている500人を対象に実施した調査から、イラスト制作ツールの利用実態と、今後のトレンドが見えてきました。

イラスト制作、アナログとデジタルどちらが人気?

イラスト制作に使うツールがアナログかデジタルか尋ねたところ、興味深い結果が出ました。アナログ派は「断然アナログ」(28.2%)と「どちらかといえばアナログ」(18.2%)を合わせて46.4%。一方、デジタル派は「どちらかといえばデジタル」(22.2%)と「断然デジタル」(21.6%)を合わせて43.8%となり、わずかな差でアナログ派が上回る結果となりました。

イラスト制作でよく使うツールは?

近年はタブレットやペイントソフトの普及によりデジタル制作が身近になっていますが、アナログを選ぶ人も依然として多いことが分かります。これは、現在のイラストシーンが「完全にデジタルに移行した」わけではなく、両者が共存する時代にあることを示唆しています。

アナログツールをよく使う理由

アナログツールを選ぶ人の多くは、「描く感覚の心地よさ」や「表現の繊細さ」を重視しています。例えば、「画のタッチや描く感覚が、アナログのほうが好き」といった声や、「自分の筆圧が再現されやすい」といった意見が寄せられました。また、小さい頃からアナログで描き慣れているため、自然とアナログを選んでしまうという人も多く見られます。デジタルツールに挑戦したものの、機能の多さや感覚の違いに戸惑い、アナログに戻ったというコメントもありました。

デジタルツールをよく使う理由

デジタルツールの最大の魅力は、その「便利さ」と「効率の良さ」にあるようです。「手軽に修正できる」「レイヤー機能が便利」「画材を買い足さなくてもいい」といった声が多く聞かれました。デジタルツールは、描いた線をすぐに修正できる、レイヤーで重ね描きができるなど、描く人の技術を補う機能が豊富です。さらに、画材の準備や片付けの手間が少ないため、スキマ時間や限られたスペースで作業しやすい点も支持されています。

最もよく使われるツールランキング トップ10

「イラスト制作でもっともよく使うツール」のランキングでは、アナログツールとデジタルツールが混在する結果となりました。

イラスト制作でもっともよく使うツール

1位:色鉛筆 (29.8%)

色鉛筆は、誰にでも馴染みやすく、手軽に始められる画材です。「繊細な色表現ができる」「温かみのある表現ができる」といった声があり、メーカーによって異なる塗り心地や発色を楽しむ人も多いようです。

2位:ibisPaint (20.2%)

スマートフォンやタブレットで利用できる日本発のお絵描きアプリです。無料版でも多くの機能が使える点が人気で、「スマホで使えるので待ち時間などでも作業できる」と、手軽さが高く評価されています。

3位:CLIP STUDIO PAINT (13.6%)

PC、タブレット、スマホで利用できる日本発のペイントソフトです。漫画、イラスト、アニメ制作に対応できる多機能さが特徴で、プロからアマチュアまで幅広く支持されています。使用人口が多いため、情報が手に入りやすい点も魅力です。

4位:Adobe Photoshop (11.2%)

画像編集ソフトとして広く知られるPhotoshopは、イラスト制作の分野でも人気です。「昔からあるツールのため、改善改良がされており、とても使いやすい」といった声があり、長年の信頼性と使い慣れた操作性が支持されています。

5位:鉛筆 (11.0%)

鉛筆は、濃淡で影と光の感じを表現でき、儚い表現から力強い表現まで幅広く対応できます。「シンプルなぶん、純粋な表現力で勝負できる」と、その奥深さが評価されています。

6位:シャープペンシル (8.0%)

鉛筆と異なり芯を削る手間がなく、細い線を安定して描ける点が特徴です。「間違ったらすぐ消しゴムで消せる」といった実用性や、慣れ親しんだ手軽さが支持されています。

7位:コピック (6.8%)

日本の会社が開発したアルコールマーカーです。発色の良さや色数の多さ、描き心地の良さが支持されており、「色の重ね方でグラデーションが自然に作れる」といったアナログならではの表現力が評価されています。

8位:ボールペン (5.8%)

「スキマ時間で描くのにちょうどいい」と、その手軽さが魅力です。修正が難しいぶん、「緊張感が出る」と感じる人もいます。水性や油性など、ボールペンの種類によってもさまざまな表現が可能です。

9位:Procreate (5.4%)

iPad専用のデジタルイラストレーションアプリで、Apple Pencilとの相性が抜群です。鉛筆や水彩のような「アナログっぽい質感のイラスト」を描ける点に魅力を感じる人が多く、「ブラシの質感がよく種類豊富」と評価されています。

10位:Adobe Illustrator (4.4%)

Photoshopと同じくAdobe社が提供するイラスト制作用ソフトです。クリエイティブ業界で長く使われているため、「本業でも使っていて使い勝手がよい」といった声や、長年使い慣れた安心感が支持されています。

未来のイラスト制作ツール:生成AIへの期待

今後使ってみたいツールとして、最も多かった回答は「生成AIを利用したツール」(28.0%)でした。AIがアイデア出しや構図提案をしてくれることへの期待が高く、学びやスキルアップのサポートとして活用したいという意識が伺えます。

イラスト制作で今後使ってみたいツール

「イメージを簡単に描けば、それをリアルにしてくれる」といった期待や、「AIに聞きながら行うことで、さらにスキルアップにもつながるのではないか」という声が寄せられました。全体的に、生成AIを含めたデジタルツールへの関心が高いことが分かります。

その他、2位には「CLIP STUDIO PAINT」(8.6%)、3位には「Adobe Photoshop」(5.2%)が続き、すでに多くの人が使っている人気ソフトへの関心も依然として高いようです。これらのツールに興味を持つ理由としては、「表現の幅を広げたい」「スキルを高めたい」「制作ペースを上げたい」などが多く挙げられました。

まとめ

今回の調査では、色鉛筆や鉛筆といったアナログツールが、その手軽さや表現の心地よさ、繊細さから根強い人気を保っていることが明らかになりました。一方で、デジタルツールを使っている人は「ibisPaint」や「CLIP STUDIO PAINT」といった高機能なイラスト制作用ソフトを愛用しており、補正機能などを活用して効率的に制作を進めています。

デジタルとアナログにはそれぞれ異なる良さがあり、練習はアナログで本番はデジタル、といったようにシーンによって使い分けることも可能です。自分が目指す表現や、より描きやすくなる環境を可能にするツールを選ぶことが大切です。

アタムアカデミーでは、デジタルイラスト制作の業界標準アプリケーションである「アイビスペイント」や「スケッチブック」を活用し、実践的なスキル習得をサポートしています。受講生は基本的な描画機能から、ぼかしツールやフィルター機能を駆使した独創的な表現技法まで、段階的に技術を身につけることができます。

イラストレーター田上千晶氏の考察

イラストレーターの田上千晶氏は、今回の調査結果を受けて、「手に取りやすい身近な画材が上位にランクインしており、気軽で親しみやすく、利便性の高いものが選ばれやすいのでしょう」と考察しています。また、「画材選びは目的ではなく『描きたいものを描く』ための手段」であるため、アナログかデジタルかという枠にとらわれず、気になった画材は気軽に試してみることが、表現の幅を広げ、創作の楽しさを増すことにつながると述べています。

生成AIを利用したツールへの関心の高さにも注目し、進化し続けるこれらのツールと向き合う上で、「何を描きたいのか」を自分と対話し、価値観や美意識を育んでいくことの重要性を強調しています。

田上千晶氏

監修者紹介

田上千晶(たがみ ちあき)氏:イラストレーター。成城大学国文学科卒業後、セツ・モードセミナー卒業。海外文学などの書籍装丁を手がけるほか、雑誌、広告、Webなどで活動中。2025年には通算10回目となる個展「Ordinary Time」をサンブンノイチギャラリーにて開催予定。作品集に『News from Nowhere』(絵・田上千晶/詩・佐藤由美子、トランジスタ・プレス刊)がある。

データの引用・転載について

本リリースの調査結果・画像をご利用の際は、必ず「アタムアカデミー」のURL(https://atam-academy.com/)へのリンク設置をお願いいたします。

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