一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構は2025年11月26日、『AIエージェントの垂直スタック構造と企業組織・IT資源・ITインフラ白書2026年版』を発刊しました。
この白書は、AIエージェント技術を企業に導入するための包括的なガイドブックです。AIエージェントとは、まるで人間のアシスタントのように、自律的に情報収集や判断を行い、特定のタスクをこなすAIのこと。この技術を企業で活用するには、どのような準備や戦略が必要なのかが詳しく解説されています。

AIエージェント導入の「8層垂直スタック構造」とは?
白書では、AIエージェントを企業に導入する際に欠かせない「8層垂直スタック構造」という考え方を提唱しています。これは、AIエージェントシステムを構成する様々な要素を、インフラストラクチャ(基盤)からガバナンス・監視(管理)まで8つの階層に分けて考えるフレームワークです。
各階層について、導入の形、主要なツールやモデルの特徴、関連する市場の動き、先進的な機能、他のシステムとの連携、そして各階層同士の関係性までが詳細に説明されています。

特に、概念実証(PoC)から本格的な導入に至るまでの企業がたどる道のり、エージェントの設計パターン(ReActやPlanning、Multi-Agentなど)、特定のベンダーに縛られないための戦略、投資効果(ROI)や総所有コスト(TCO)の評価方法、セキュリティやリスク管理、さらには法律や規制への対応といった、実務で非常に重要なポイントが網羅されています。
また、AIエージェントを構築する上で不可欠な技術要素、例えばAIの核となるモジュール、データをまとめるプラットフォーム、複数のAIを連携させるオーケストレーション、画像や音声なども扱うマルチモーダル統合、外部情報を取り込むRAG(Retrieval Augmented Generation)連携、AIを特定の目的に合わせるファインチューニング、プロンプト(指示文)の最適化についても、個別の章で詳しく解説されており、2025年時点での最新トレンドが反映されています。
白書の活用シーン
この白書は、AIエージェントの導入を検討している様々な立場の人々にとって役立つ情報源です。
戦略策定・意思決定
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経営層・CxOレベル: AIエージェントの導入が企業組織や競争力に与える影響を理解し、投資判断や変革のロードマップを作成する際に活用できます。
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デジタルトランスフォーメーション推進: 全社的なDX計画を立てる際の根拠資料として、優先順位付けやリソース配分に役立ちます。
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ベンダー選定・契約交渉: 複数のベンダーを使いこなす戦略や、特定のベンダーに依存しないための対策、コスト構造の透明化に基づいた調達戦略の構築に活用できます。
技術・開発実装
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アーキテクト・エンジニア: 8階層スタックモデルに基づいたシステム設計、各階層間の連携原則、API設計、データフロー定義の実践的なガイドとして利用できます。
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PoC設計と本番移行計画: 概念実証の要素定義、評価基準設定、段階的な展開戦略の策定に役立ちます。
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技術選定・評価: LangChain、AutoGen、Kubernetes、Kafka、PostgreSQLなどの主要なツールやフレームワークの特性比較、モデル選定基準、実装パターンの参照に活用できます。
運用・ガバナンス
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ガバナンス・リスク管理体制構築: ポリシー管理、監査証跡、セキュリティ統制、コンプライアンス対応、システムの監視・評価基盤の設計・運用に役立ちます。
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組織編成・オペレーティングモデル再設計: AIエージェント導入に伴う役割の見直し、人材育成計画、変更管理プロセスの整備に活用できます。
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コスト最適化・ROI/TCO管理: 予算配分、呼び出し回数制限、キャッシュ戦略、スケーリング戦略によるコスト管理と投資効果の測定に役立ちます。
市場・業界分析
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産業アナリスト・調査機関: AIエージェント市場の導入形態、成長性、主要プレイヤーの動向、技術トレンド分析の基礎資料として活用できます。
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技術アナリスト・コンサルタント: クライアントへの提案、ベンチマーク分析、競合比較、ドキュメント自動化やコンタクトセンター、開発者支援、産業オートメーションといったユースケース別の分析に参照できます。
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学術研究・教育機関: AIエージェント技術の体系的な理解、最新の研究動向の把握、カリキュラム開発や教材作成の資料源として活用できます。
企業が取るべき具体的なアクションプラン
白書では、AIエージェント導入における具体的な行動計画が、期間ごとに提案されています。
即時着手事項(0~6ヶ月)
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現状診断と優先領域特定: 既存のIT資産やデータ基盤を調べ、AIエージェントで解決したい課題やビジネスの目標(リードタイム短縮、自動化率向上など)を具体的に設定します。
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PoC設計と最小構成構築: 評価用のデータ準備、評価基準の整備を行い、AIエージェントの骨格となる部分(データ連携、セキュリティ、モデル活用など)を実装します。
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ガバナンス基盤の先行整備: データの取り扱い方、セキュリティ要件、法律や規制への対応、リスク評価と対策のプロセスを明確にします。
中期展開施策(6~18ヶ月)
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段階的本番移行と運用体制確立: 社内限定から部門展開、そして全社展開へと段階的に移行し、既存システムとの比較や問題発生時の自動対処の仕組みを導入します。
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マルチエージェント協調基盤の構築: 複数のAIエージェントが連携し、タスクを分解・統合できるような高度な連携基盤を構築します。
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可観測性・評価駆動型開発の定着: システムの動作状況を常に見える化し、評価結果に基づいて開発を進める手法を組織に定着させます。
長期戦略構想(18ヶ月以降)
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自律型エコシステムへの進化: AIエージェントが自律的に学習し、連携を最適化する仕組みを構築し、新しいAI導入を高速化します。
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データ主権・セキュリティの継続強化: 量子コンピュータにも対応できる暗号技術や、データを安全に処理する技術の導入、ゼロトラストセキュリティモデルの標準化を進めます。
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産業横断標準化・エコシステム形成: 業界全体のプラットフォームとの連携、標準化団体への参加、オープンソースコミュニティへの貢献、SIerやコンサルティングファームとの協業を進めます。
継続的実施事項
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バージョニング・変更管理の徹底: AIモデルやプロンプト、ツールのバージョン管理を徹底し、変更による影響分析や安全なリリース計画を策定します。
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人材育成・組織適応の推進: AI導入に伴う役割分担の明確化、社員の再教育プログラム、AIと人間が協力して作業する仕組みの整備、責任あるAI利用の文化を醸成します。
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ベンダー戦略の動的見直し: オープンなシステム設計や標準的なAPIの採用、データ移行の容易さ確保、複数のベンダーを組み合わせる戦略の定期的な見直しを行います。
白書の構成
この白書は、以下の7つの部で構成されています。
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第1部: AIエージェント垂直スタック・アーキテクチャ論
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第2部: 企業組織・戦略的インパクト
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第3部: ITインフラストラクチャ・実装技術
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第4部: データ統合・プラットフォーム・レイヤー
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第5部: コアAIモジュール・高度な機能
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第6部: ガバナンス・可観測性・ユースケース
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第7部: 戦略的課題・ベンダー選定・実装ロードマップ
白書の入手方法
本白書は、製本版とPDF版で提供されています。詳細は以下のリンクからご確認ください。
PDF版は、eメールやダウンロードでの納品にも対応しています。
一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構について
本白書を監修・発行した一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構は、二十数年にわたり、産業、先進先端技術、経済・経営、IT分野におけるシンクタンク活動を展開してきました。その刊行物は、国内外の政府系シンクタンク、主要研究所、コンサルティングファーム、大学、大手企業など、多岐にわたる機関で活用され、高い評価を得ています。英語版や中国語版も刊行し、より広い読者層に情報を提供しています。
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