AIロボットが商品購入意欲を高める新しい可能性
京都外国語大学と月桂冠総合研究所の共同研究が、消費者の商品購入意欲を高める新しい方法を見つけました。その方法は、「商品PR動画」と、個人の好みに合わせて会話をする「パーソナライゼーション対話ロボット」を組み合わせるというものです。この研究成果は、2025年12月1日から3日にスウェーデンのストックホルムで開催された国際会議「The International Conference of Serviceology 2025」で発表されました。
パーソナライゼーション対話ロボットとは？
「パーソナライゼーション対話ロボット」とは、相手の気分や性格に合わせて会話を変えることができるロボットを指します。今回の研究では、事前にアンケートでモニターが商品PRにおいてどのような話し方を好むかを調べ、その好みに合わせて生成AI（人工知能）を使ってロボットの会話を調整しました。
なぜこの研究が必要だったのか
近年、生成AIの急速な進化により、マーケティングの分野でもロボットやAIなどの技術活用への関心が高まっています。しかし、AIには本来感情がないため、そのままでは人間の代わりを務めることが難しいという課題がありました。そこで、「人とAIやロボットとの共感（Artificial Empathy）」が重要だと提唱されています。また、企業が一方的に製品やサービスを提供するのではなく、企業と個人が協力して新しい価値を生み出す「価値共創（Co-creation）」という考え方も注目されています。これまでの研究では、ロボットやAIを活用したサービスで「価値共創」がどのように起こるか、十分に調べられていなかったため、今回の研究でこの課題に取り組みました。
研究の方法とわかったこと
今回の研究では、「パーソナライゼーションした対話型ロボットによる価値共創の検証」として、京都外国語大学の学生53名をモニターに比較実験が行われました。
実験では、生成AIを用いてモニターの好みに合わせて会話の口調を調整した「パーソナライゼーションロボット」と、調整をしていないロボットが用意されました。モニターは月桂冠の日本酒PR動画を視聴した後、それぞれのロボットと対話を行い、その後の購入意欲の変化などが調査されました。
その結果、パーソナライゼーションされたロボットとの対話は、エンターテイメント性が高まることで、共感の一要素である「信頼性」にプラスの影響を与え、それが最終的に「購入意欲の向上」につながる可能性が判明しました。このことから、単に動画を視聴するだけでなく、個人の特性に合わせたロボットとの対話を挟むことで、動画の説得力が高まり、商品の購入促進が期待できることが示唆されました。
これからの展望
京都外国語大学と月桂冠総合研究所は、今後もロボットやAIとの「共感」を活用した価値共創の研究を進めていく予定です。これにより、新しいマーケティング手法や、より良い顧客体験の創出を探求していくとしています。
関連情報
学会発表の概要
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学会名：The International Conference of Serviceology 2025（主催：サービス学会）
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日時：2025年12月3日 9:00-09:20（現地時間）
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会場：ストックホルム商科大学・欧州日本研究所（スウェーデン・ストックホルム）
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演題：Exploring the Effect of Tone Personalization in Sake Video Promotions Utilizing Chats with Robots
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発表者：〇増田 央（京都外国語大学）、東風上 奏絵（京都大学）、Yin Jou Huang（京都大学）、福田 実奈（京都外国語大学）、根來 宏明（月桂冠・総研）、伊出 健太郎（月桂冠・総研）、下間 敬子（月桂冠・総研） ※〇印は登壇者
各研究機関・法人概要
京都外国語大学
1947年創設。英米語学科をはじめとする主要8言語の学科に加え、2018年には国際貢献学部を、2020年にはロシア語学科を新設するなど、時代の要請に応じた教育領域の拡大を続けています。半世紀を超える歴史の中で、語学教育だけでなく、広く世界の言語や文化、教養を学ぶ教育機関として進化を続けています。
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京都外国語大学・京都外国語短期大学京都は嵐山に程近い右京区にある京都外国語大学・京都外国語短期大学の公式ホームページです。資格課程、海外留学が充実し、2言語同時学習などの特色ある語学教育を行う大学です。www.kufs.ac.jp
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増田央准教授の紹介ページ: https://gyouseki.kufs.ac.jp/kufshp/KgApp?resId=S001034
月桂冠総合研究所
月桂冠株式会社は1637年創業。月桂冠総合研究所は、1909年に11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から業界に先駆けて設立した「大倉酒造研究所」が前身です。1990年に名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般の基礎研究、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで、幅広い研究に取り組んでいます。
