Dental Brain株式会社は、歯科矯正治療の分析を大きく変える新しいAI機能「DIP Magic Compare™」を、クラウド型AIセファロ分析支援システム「DIP Ceph」に正式に搭載しました。この新機能は、これまで専門家が2〜3時間かけて行っていた精密な分析を、AIがわずか20〜30秒で自動的に完了させます。
AIが「重ね合わせ」という高度な分析を自動で行うことで、治療前後の変化や成長の評価がより簡単かつ正確になります。これにより、歯科医師の作業負担が減り、患者さんへの説明も分かりやすくなることが期待されます。
開発の背景
歯科矯正治療では、レントゲン写真を使った「セファロ分析」の中でも、「重ね合わせ」という作業がとても重要です。これは、治療の効果や成長による変化を見るために欠かせないものですが、高い専門知識と長い時間が必要で、分析する人によって結果にばらつきが出ることもありました。
日本では年間100万枚以上、世界では5,000万枚ものセファロ画像が分析されており、この作業の効率化と標準化は、歯科医療業界全体にとって大きな課題でした。この課題を解決するため、Dental Brain株式会社は、普段の診療でも「研究レベルの重ね合わせ評価」ができるようにと、「DIP Magic Compare™」を開発しました。
DIP Magic Compare™:3つの主要な特長

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AIが解剖学的構造を直接認識する独自の技術
「DIP Magic Compare™」は、アメリカの矯正歯科専門医が推奨する「頭蓋底部の安定した解剖学的構造を基準とした重ね合わせ法」に基づいたAI技術を使っています。AIは、レントゲン写真に点を打つ「ランドマーク」という方法ではなく、頭蓋底などの骨の形を直接認識することで、これまで必要だった人の手による確認や修正を大幅に減らします。これにより、わずか数秒で正確な重ね合わせ分析が可能になります。成長期の子どもから大人、外科矯正の患者さんまで、どんな症例にも対応し、分析結果のばらつきを減らすことができます。 -
治療効果を客観的なデータで分かりやすく示す
このシステムは、骨格や歯並び、口周りの軟組織(唇など)がどのように変化したかをAIが自動で測り、ミリ単位の動きや角度の変化を数値で示します。さらに、ヒートマップや重ね合わせた画像を使って、治療の効果を視覚的に分かりやすく見せることができます。これにより、治療の評価がより正確になるだけでなく、患者さんへの説明(インフォームドコンセント)の質も高まります。すべての症例で高精度の自動重ね合わせができるようになることで、治療の科学的な評価が進むことが期待されます。 -
症例タイプに合わせて最適なAIアルゴリズムを自動適用
AIが患者さんの症例タイプ(成人、小児、外科矯正など)を自動で判断し、それぞれの状況に合った最適な分析方法を選んでくれます。成長による変化や治療による変化を区別して、より信頼性の高い分析結果を提供します。
DIP Magic Compare™ がもたらす主な臨床効果
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分析作業の効率化
これまで2〜3時間かかっていた精密な分析が、AIによって20〜30秒で完了します。これにより、分析にかかる時間が約99%も短縮され、作業がずっと効率的になります。 -
臨床判断への集中
この機能の導入により、年間で150〜1,000時間以上もの作業負担が減ると言われています(症例数によって異なります)。これにより、歯科医師は診断や治療計画の作成、患者さんへの説明といった、より重要な業務に集中できるようになります。 -
患者説明の質の向上
AIが治療による変化を分かりやすく見せることで、患者さんは治療内容を深く理解し、納得して治療を受けることができます。 -
評価の標準化と教育支援
AIによる分析は、分析結果のばらつきを減らし、若い歯科医師の学習にも役立つでしょう。
今後の展望
「DIP Magic Compare™」の登場により、年間5,000万枚以上撮影されるレントゲン写真を、治療前後の変化を追うデータとして効率的に活用できる基盤が整いました。このデータは、将来の矯正治療結果や成長を予測するAIの精度を高めることにつながるでしょう。
さらにDental Brain株式会社は、レントゲン写真だけでなく、パノラマX線、口腔内スキャナ、CT、口腔内写真、顔面写真など、様々な歯科の検査データをまとめて分析する「マルチモーダルAI」の開発も進めています。これにより、骨格、歯並び、軟組織、顔の形、気道の情報などを総合的に解析し、歯科矯正だけでなく、形成外科や美容医療、呼吸機能の評価など、幅広い分野で役立つ医療AIプラットフォームの構築を目指しています。
DIP Cephについて

「DIP Ceph」は、Dental Brain株式会社の代表である綿引淳一氏が考案した「デュアル・インサイザル・プランニング法(DIP法)」(特許出願中)を核とした、クラウド型のAIセファロ分析支援システムです。
今回発表された「DIP Magic Compare™」も、独自のAIアルゴリズムを基盤としており、現在特許出願中です。この画期的な自動重ね合わせ技術が加わることで、「DIP法™」、「DIP Magic Trace™」、そして「DIP Magic Compare™」の3つの機能が連携し、矯正歯科と補綴歯科(歯を修復する治療)を統合した包括的な分析を強力にサポートします。
これにより、一般の歯科医師も矯正治療の視点を取り入れた、質の高い治療計画を立てたり、患者さんに説明したりできるようになります。
グローバル展開に向けた取り組み
Dental Brain株式会社は、「AIの力で歯科・矯正歯科の革新に挑戦する」という目標を掲げ、AI技術を基盤に、国内外での知的財産戦略を進め、世界市場への展開を本格化させています。独自の「マルチモーダルAIアーキテクチャ」によって、複数の検査データを統合的に解析する革新的な歯科・矯正歯科臨床支援プラットフォームの開発を進め、歯科医療の「科学的見える化」を世界に広めることを目指しています。
Dental Brain株式会社について
Dental Brain株式会社は、「AIの力で歯科・矯正歯科の革新に挑戦する」をミッションに掲げる、東京を拠点とした医療AIテクノロジー企業です。代表取締役の綿引淳一氏(歯学博士、日本矯正歯科学会臨床指導医)の専門知識と、金融システム開発などで実績のある経験豊富なエンジニアチームの技術力を組み合わせ、歯科医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するソリューションを開発しています。
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会社概要
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会社名:Dental Brain株式会社
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設立:2023年7月14日
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所在地:東京都千代田区大手町1丁目6番1号 大手町ビル1F SPACES大手町
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代表取締役:綿引 淳一
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連絡先:contact@dentalbrain.co.jp
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事業内容:歯科関連AIシステムの研究開発
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開発者プロフィール
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代表取締役/開発統括 綿引 淳一(歯学博士)
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昭和医科大学卒業
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昭和医科大学大学院歯科矯正学専攻 修了(歯学博士)
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医療法人社団 Teeth Alignment 理事長
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日本矯正歯科学会 認定医・臨床指導医
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日本歯周病学会 認定医
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日本包括的矯正歯科学会(JIOS) 代表理事
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昭和医科大学歯学部歯科矯正学講座 兼任講師
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開発責任者(CTO) 内田 友幸(工学博士)
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東京大学工学部 卒業
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東京大学大学院 工学系研究科情報工学専攻 修了(工学博士)
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株式会社デジタルガレージ 元CTO
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創創株式会社 取締役
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株式会社Smart Trade 代表取締役
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開発パートナー:創創株式会社
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関連情報
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American Board of Orthodonticsの推奨基準について: Superimpositions, ABO公式ガイドライン
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DIP Ceph公式サイト: https://dipceph.com/
【ご注意】
この機能は、歯科医師の診断を補助するためのツールです。最終的な診断や評価は、必ず歯科医師が行う必要があります。また、最も良い分析結果を得るためには、決められた基準に沿ってレントゲン撮影を行うことを推奨します。

