八楽のAI翻訳技術が専門誌に掲載!より自然な「文書レベル翻訳」への新たな一歩

自然言語処理(NLP)

八楽株式会社の自然言語処理チームが、機械翻訳の専門誌「機械翻訳」(発行:アジア太平洋機械翻訳協会=AAMT)に研究論文が掲載されたことを発表しました。この論文は、より自然で読みやすい翻訳を実現するための新しい研究成果を示しています。

ヤラクのニュースリリース、論文掲載を伝える画像

文書全体をより自然にする「品質推定リランキング」とは?

今回掲載された論文のタイトルは「Quality Estimation Reranking for Document-level Translation(文書レベル翻訳のための品質推定リランキング)」です。

「品質推定リランキング」とは、AIが作った複数の翻訳候補の中から、「品質が良い」とAIが判断したものを自動で選び出す技術のことです。これにより、単に単語を置き換えるだけでなく、文章全体の流れや意味が自然で一貫した翻訳を目指します。

翻訳作業を効率化し、品質を向上させるためのソフトウェアは「CATツール」と呼ばれます。八楽が提供する「ヤラク翻訳」もこのCATツールの一つで、機械翻訳や翻訳メモリ、用語集などを活用し、人とAIの協働によって効率的かつ高品質な翻訳を実現します。

研究の新しいポイント

これまでの品質推定リランキングの研究では、一つの文(単文)ごとに翻訳の品質を評価することが一般的でした。しかし、この論文では、複数の文がつながった「文書全体」を対象に、翻訳の品質を評価し、最適な翻訳を選び直す手法を検証しました。

この研究の新しい点は、文脈を考慮した文書全体の自然さや一貫性を高めることに焦点を当てたことです。研究では、翻訳候補の数を増やすほど翻訳の品質が向上し、最大32個の候補まで継続的な改善が見られました。これは、このリランキング手法を翻訳システムに組み込むことで、性能をさらに高められる可能性を示しています。

QEリランキングシステムワークフロー図

品質の「良さ」を判断するために、以下のような複数の異なるAI評価方法が使われました。

  • 文脈理解を評価する「SLIDE」(Cometファミリーの文書レベル拡張モデル)

  • 自然さを判定する「Comet」(神経ネットワーク型評価モデル)

  • 大規模言語モデル(LLM)による評価手法「GEMBA-DA」

論文の抜粋、グラフ

八楽の翻訳技術への貢献とユーザーへの意義

この研究成果は、八楽の翻訳支援ツール「ヤラク翻訳」の性能に直接影響するものではありませんが、同社が進める技術開発の方向性を学術的に裏付けるものとなります。

具体的には、文書全体の自然さや一貫性を高めるアプローチや、複数の翻訳候補から最適な訳文を選ぶ仕組みの設計、そして「勘」や「感覚」ではなく客観的なデータに基づいて翻訳品質を向上させる取り組みの有効性が確認されました。

八楽は、安定した翻訳品質を生み出す機械翻訳(NMT)を基盤としつつ、GPTやClaudeといった大規模言語モデル(LLM)を補助的に活用することで、より自然で文脈に沿った翻訳の実現を目指しています。

「ヤラク翻訳」のユーザーにとっては、この論文の成果は以下のような意義があります。

  • 翻訳技術の方向性に学術的な裏付け:八楽が重視する「文書レベルの品質向上」という技術が、学術的な手法にも合致していることが確認されました。

  • 継続的なプロダクト改善を支える技術基盤:翻訳モデルが科学的な検証に基づいて開発されているため、今後の品質向上が期待できる技術的な基礎が示されました。

  • 企業文書で求められる一貫性の向上:契約書やマニュアル、IR資料など、複数の文にまたがる文脈の整合性が重要な文書において、翻訳品質向上の方向性が明確になりました。

  • データ駆動の開発姿勢の明確化:感覚に頼らず、客観的な評価指標と研究に基づいて品質改善を進める姿勢が示され、サービスの信頼性を判断する材料となります。

  • 長期的な利用に対する安心材料:翻訳技術への継続的な投資と研究体制が示され、長期的な利用を検討する際の安心材料となります。

論文概要

  • 論文名: Quality Estimation Reranking for Document-level Translation(文書レベル翻訳のための品質推定リランキング)

  • 掲載誌: 機械翻訳No. 83 2025年11月29日発行(発行人:アジア太平洋機械翻訳協会)

  • 論文の主な内容:

    • 文書レベルにおけるQEリランキングの検証

    • NMTモデルが生成した複数候補のQEによる再選択

    • SLIDE、Comet、GEMBA-DAなど複数手法の比較

    • 自動評価による品質向上の確認

    • 実務利用を想定した計算効率の検証

  • 著者: 八楽株式会社 NLP(Natural Language Processing)チーム

AAMT Journal 表紙

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会社概要

ヤラクのロゴ

八楽株式会社は、生成AIを活用した翻訳支援ツール「ヤラク翻訳」の開発・提供を行う企業です。

  • 所在地: 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-5リンクスクエア新宿16階

  • 代表取締役: 坂西 優

  • 事業内容: 生成AIを活用した翻訳支援ツール「ヤラク翻訳」の開発・提供

  • 公式サイト: https://www.yaraku.com

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