IR情報の日英同時開示が義務化される動きが進む中で、日本企業がどのような課題に直面し、それをどう乗り越えていくべきか、注目が集まっています。Straker Japan株式会社は2025年12月4日、この重要なテーマについて考えるセミナーを開催しました。

AIが投資判断を変える時代
セミナーの冒頭では、ストレイカーグループのCRO(最高収益責任者)であるデイビット・サワビー氏が登壇しました。サワビー氏は、世界の主要な投資会社の多くがAIを使って膨大なデータを分析し、投資判断に役立てている現状を紹介しました。これからのIR(投資家向け広報)では、企業が発信する情報が人間だけでなく、AIエージェントに正しく理解される形で届けることが、資金調達の成功に大きく影響すると強調しました。
日本企業が直面するIRの課題と意識改革
続いて、みずほ証券株式会社の清水大吾氏が「海外投資家との対話を通じた日本企業の企業価値向上」をテーマに講演を行いました。清水氏は、日本企業にとって「資本コストへの意識改革」が大きな課題であると指摘しました。米国市場のようにリターン重視で評価される環境では、投資家に対して「将来のキャッシュフローを確実に生み出せる」という信頼を示すことが不可欠だといいます。
IR部門は、単なる「コストセンター」ではなく、投資家との信頼関係を築き、企業価値を高める「プロフィットセンター」としての意識を持つことが重要だと清水氏は説きました。さらに、効率化できる業務はAIに任せ、人間は「投資家との本質的な対話」や「企業文化の変革」といった、より価値の高い業務に集中すべきだと述べました。

AIをビジネスの力に変えるための協働
対談セッションでは、日本アイ・ビー・エム株式会社の猿渡光司氏と井上忠信氏、そしてStraker Japan株式会社カントリー・マネージャーの三森暁江氏が「AIを業務の力に変えるには」というテーマで議論を交わしました。
猿渡氏は、AI導入にあたっては、従来の階層構造ではなく、「AIとAIが連携してプロセスを回す領域」「人とAIが協力して人の業務を高度化する領域」「人と人が協力して成り立つ領域」の3つの視点で業務を整理することが大切だと説明しました。
三森氏は、IR情報の開示には人間にもAIにも理解される高い精度が求められる中で、AIが人間をどのように支援し、役割分担すべきかを問いかけました。これに対し井上氏は、人間とAIの役割を厳密に線引きするよりも、「同じ目的に向かってどう協力すれば最大の成果を出せるか」という視点から業務プロセス全体を見直す必要があると答えました。
AIは「正確性」に優れているため、膨大なデータ処理や事実の整理を任せ、人間は文化的な背景やニュアンス、トーンといった「適切性」の判断を担う。このような「Human in the loop(人間が介在するループ)」を意識したプロセス設計が重要であると井上氏は述べました。

IR特化型AI翻訳プラットフォーム「SwiftBridge AI」
セミナーの後半では、Straker Japanの三森氏が、同社が提供するIR特化型の超高速翻訳プラットフォーム「SwiftBridge AI」について説明しました。
ストレイカーグループは、長年の言語分野の知識とノウハウを基に、独自の「Tiri(ティリ)モデル」を開発。2025年3月より日本市場で展開を開始したSwiftBridge AIは、日本企業の決算短信を英語で同時開示するために作られました。三森氏は、英語ネイティブ企業としての知見と、日本の開示文書の特性を理解している点が、日本企業の課題解決に貢献できる強みだと語りました。
SwiftBridge AIは、従来の人間のみによる翻訳作業に比べて、時間とコストを大幅に削減できます。例えば、決算短信の全編英訳はページ数に関わらず3営業日以内、英文のエグゼクティブ・サマリーは1日で生成可能です。また、適時開示情報も1万文字までなら1営業日で対応し、決算説明プレゼンテーション資料も、レイアウト修正不要の英語版パワーポイントを最短3日で納品できるとのことです。
このプラットフォームでは、複数のAIエージェントが高速で翻訳・推敲を行い、資料全体の一貫性やレイアウトの最適化までを担います。しかし、最終的なチェックは必ず人間の専門家が行う仕組みが組み込まれています。特に、「Tili-J」モデルは日本企業の財務開示データをもとに学習しているため、単に正確なだけでなく、グローバル投資家が読みやすく、意味を理解しやすい英語の文章を作り出すよう最適化されています。

ストレイカーグループは、自らも海外投資家に理解を求める努力を重ねてきた経験から、AIを活用したコンテンツの自動化・翻訳技術、そして高い情報セキュリティが日本企業のIRを支える上で大きな強みとなると考えています。三森氏は、「安全なAI、安全な環境、安全なクラウドプラットフォームを徹底し、信頼の置ける企業との共創活動を通じて、これからもSwiftBridge AIを広めていきたい」と述べ、セミナーを締めくくりました。
好評につき追加ウェビナー開催決定
今回のセミナーが好評だったため、追加のウェビナー開催が決定しました。参加を希望される方は、以下のURLから詳細をご確認の上、お申し込みください。
開催日は2025年12月17日(水)から2026年1月29日(木)までの火・水・木曜日です。年末年始の開催はありませんので、詳細はURLをご確認ください。
Straker Japan株式会社について
Strakerは1999年にニュージーランドで設立された、AIテクノロジーを活用した言語ソリューションを提供する企業です。20年以上にわたり、世界中の多国籍企業にAIテクノロジーと人間の専門性を組み合わせたサービスを提供しています。Straker Japan株式会社は、その日本法人として、日本企業向けにSwiftBridge AIなどの言語ソリューションを提供しています。

