AI(人工知能)の進化は目覚ましく、私たちの生活や仕事のさまざまな場面でその存在感が増しています。そんな中で、「AIエージェント」と呼ばれるAIたちが、実際にどのように使われているのかを明らかにする、世界最大級の研究が発表されました。
この研究は、AI検索エンジン「Perplexity」とハーバード大学の研究者たちが共同で行ったものです。数億件もの匿名化されたユーザーデータを分析した結果、AIエージェントが単なる便利なツールを超え、「思考のパートナー」として活用されている実態が見えてきました。

AIは「思考のパートナー」へ
AIエージェントと聞くと、ホテル予約や簡単な雑務を自動でこなす「デジタルコンシェルジュ」のようなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、この研究で明らかになったのは、AIエージェントの全利用のうち57%が、深く考える必要がある「認知タスク」に使われているという事実です。
認知タスクの内訳は以下の通りです。
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36%:生産性・ワークフローの向上
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21%:学習・リサーチの支援
これらは、人間の能力をさらに引き出すような種類の作業です。
例えば、ある企業の担当者が事例分析の下調べをAIに任せたり、学生が講義内容の理解を深めるために利用したり、金融担当者が株情報の整理や分析に活用したりといった具体的な使われ方が報告されています。AIエージェントは、必要な情報を集めて整理する作業を自律的に行い、ユーザーはそれらの情報をもとに最終的な判断を下し、AIにその判断を実行させる、という流れで活用されています。
このデータは、ユーザーが「難しいことに取り組む力」を広げたいと考えていることを示しており、AIが単に仕事を「避けるため」ではなく、「より良い仕事をするため」に使われていることが分かります。

利用行動は「娯楽から実用」へと進化
AIエージェントの利用は、時間とともに変化していくことも分かりました。新しいユーザーは、旅行の計画や雑学など、気軽に試せる質問から使い始める傾向があります。
しかし、一度コードのデバッグやビジネスレポートの要約といった高度なタスクにAIエージェントを活用すると、その後は生産性や学習の分野で使い続ける傾向が強いことが行動データから明らかになっています。これは、初期のパソコンが趣味の道具から仕事のインフラへと進化した過程とよく似ています。AIエージェントもまた、実用的なツールとして私たちの日常に定着しつつあると言えるでしょう。

誰がAIエージェントを使っているのか
この研究で特に注目すべきは、「AIエージェントを導入した人の数」だけでなく、「日常的に深く活用しているユーザー」に焦点を当てている点です。AIが単なる新しい機能から、日々の業務に欠かせないツールへと変わった職種が明らかになりました。
現在、以下の6つの主要職種が、AIエージェントの全利用の70%を占めています。
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マーケティング
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営業
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マネジメント
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起業家
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デジタルテクノロジー
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学生
これらの職種では、AIエージェントを導入した後の利用頻度が高く、日々のワークフローにAIを積極的に取り入れている傾向が見られます。また、業界ごとの特徴も明確で、金融職は生産性タスクに47%を使い、学生は学習・リサーチに43%を活用するなど、それぞれの文脈に合わせた使われ方が確認されました。
新しい知的労働の形は「問いを立てる仕事」
この研究は、AIエージェントが人間の「考える仕事」をサポートし、より高度な判断や創造的な作業を支える「ハイブリッド・インテリジェンス経済」への移行を示す、最初の具体的な証拠と言えるでしょう。AIが人間の仕事を「代替する」のではなく、人間の能力を「拡張する」役割にシフトしていることが示されています。
2025年の終わりが近づく今、「人々はAIエージェントを使うのか」という問いは、もはや過去のものかもしれません。人々はすでにAIエージェントを使っています。これからは、AIが常にそばにいることを前提として、どのように考え、学び、新しいものを生み出していくかという「新しい働き方」に、社会全体がどれだけ早く適応できるかが問われる時代になるでしょう。
この研究の詳しい内容については、以下の論文で確認できます。
- 完全版の研究論文: https://arxiv.org/abs/2512.07828
Perplexityについて
Perplexityは、リアルタイムで信頼できる情報源から回答を取得し、その出典を明記して返答する、会話型のAI検索エンジンです。2022年に創業され、現在では毎週2億件以上の質問に回答し、世界中のユーザーの「知りたい」をサポートしています。
Perplexityの公式サイトはこちらです。
- 公式サイト: https://www.perplexity.ai/

