グローバルに事業を展開する企業にとって、異なる言語を話す人々の間の「言葉の壁」と、特定の分野に詳しい「専門人材の不足」は、事業を進める上で大切な課題です。
特に、二つの言語を話せて、かつ専門的な知識を持つ人材を見つけるのは非常に難しいとされています。そのため、通訳を介したコミュニケーションは、時間や費用、さらには通訳の質によって負担が大きくなることがありました。
SaaS型のサプライチェーン(製品が消費者の手に届くまでの流れ)やロジスティクス(物流管理)の解決策を提供する米国Manhattan Associates社の日本法人、マンハッタン・アソシエイツ株式会社も、こうした課題を長く抱えていました。
同社は、この課題を解決するためにAI同時通訳サービス「CoeFont通訳」を導入しました。この導入によって、通訳を待つことによる業務の遅れがなくなり、残業代の削減、コミュニケーションの質の安定と向上、さらに顧客や海外のメンバーと直接やり取りできる関係を築くことができたと報告されています。

「バイリンガル×物流経験」人材確保の難しさ
マンハッタン・アソシエイツ株式会社の代表取締役である髙谷直秀氏とマーケティングマネージャーの澤田昌博氏へのインタビューによると、同社は米国で1990年に設立されて以来、サプライチェーンの解決策を提供してきました。日本法人では、国内の大企業を顧客にグローバルなサービスを展開しており、日本語と英語での意思疎通が不可欠でした。
しかし、日本で「二つの言語を話せる」と「物流の経験が豊富」という両方の条件を満たす人材を見つけることは非常に困難でした。英語が話せる人材を見つけても、英語のレベルが業務に十分でなかったり、海外での仕事や顧客対応には物流分野の専門的な経験が必要だったためです。
また、同社は世界中に拠点があり、グローバルで見れば物流の経験が豊富な人材はたくさんいます。しかし、これらの人材は日本語が話せないため、日本企業と直接コミュニケーションを取ることができませんでした。ネイティブレベルの英語と日本語でのコミュニケーション能力、そして物流経験を同時に持つ人材の確保が、長年の課題となっていたのです。
これまでの課題解決策と「CoeFont通訳」との出会い
これまでは、言葉の壁を乗り越えるために、一時的に通訳を雇ったり、通訳ができる社員に依頼したりしていました。一時的な通訳の依頼には追加費用がかかり、社員に頼む場合でも残業代が発生したり、通訳の質にばらつきが出たりするという問題がありました。さらに、通訳を待たなければ仕事が進まず、業務効率が低下することもありました。
通訳を頼むほどではない場合には、有料の翻訳ツール「DeepL」を利用していましたが、音声翻訳は提供されておらず、テキストを入力して翻訳するしかありませんでした。その翻訳結果も、定型的な文章は正確に訳せるものの、会話のような前後の文脈を理解する必要がある文章では、結局手直しが必要で、リアルタイムのコミュニケーションにはほとんど使えなかったといいます。
「CoeFont通訳」を知ったきっかけは、AI関連の技術展示会でした。そこでリアルタイム同時通訳機能を体験し、それまでに試したMicrosoft TeamsやGoogleの翻訳機能とは全く異なる性能に驚いたそうです。2025年9月には試験的に導入し、同年11月から正式に導入されました。導入の決め手となったのは、翻訳の速さと正確さ、特に日本語から英語への翻訳の正確さが非常に優れていた点でした。
導入後の変化と効果
「CoeFont通訳」の導入後、まず感じられた変化は、通訳が不要になったことです。通訳を待つ時間や、通訳を介して会話する時間がなくなり、会議の時間は大幅に短縮されました。米国本社との会議は時差の関係で夜間に行われることが多いのですが、深夜に通訳を呼び出す必要がなくなり、残業代も削減されました。
また、議論が白熱すると、通訳者が両者の間で板挟みになり、心理的な負担を感じることもありました。このような不公平感も「CoeFont通訳」によって解消されたといいます。

マーケティングマネージャーの澤田氏は、「コミュニケーションの質も向上しました」と述べています。通訳を介さずに顧客や海外メンバーと直接話せるようになったため、言葉の微妙なニュアンスや温度感も伝えられるようになりました。これまでは間接的な関係しか築けなかったのが、直接的な関係性を築けるようになったことは大きな変化です。通訳者による品質のばらつきや、表現の違いによる誤解もなくなり、常に一定の品質でコミュニケーションが取れるようになったことも大きなメリットです。日本の顧客が英語のネイティブスピーカーに遠慮なく意見を伝えられるようになり、結論に至るまでの時間も短縮されました。
髙谷氏は、「コストも手頃で、従来よりも大幅に下がりました。翻訳の品質が安定している通訳は、そんな費用ではとても頼めないでしょう。しかも24時間いつでも稼働してくれます」と話しています。
翻訳の品質については、日本語から英語、英語から日本語への翻訳は申し分ないレベルだそうです。単語の登録は一部行いましたが、標準状態でも問題なく利用できるレベルでした。中国人の社員が利用した際も、中国語の翻訳が非常に正確で、「このまま使えます」と高評価でした。中国人メンバーは日本語、中国語、英語が使えますが、やはり母国語である中国語で話した方が意図を正確に伝えられるため、「CoeFont通訳」を使って中国語から英語や日本語に翻訳するようになったとのことです。
今後の活用と展望

機能に関する要望としては、「人の呼び名」を正確に識別できるようになると、さらに便利になると考えられています。例えば、髙谷氏の名字は「たかたに」ですが、英語での愛称は「タック(Tak)」と呼ばれます。同じ会話で別の呼称が使われると、話者として正しく認識されないケースがあるため、この点が改善されれば、よりスムーズな会話が可能になるでしょう。
今後の「CoeFont通訳」の使い方としては、これまで言語の壁が原因で活用が難しかったグローバルな人材(リソース)の活用が挙げられます。海外のマンハッタンでは、一人のプロジェクトマネージャーが同時に3件ほどの案件を担当していますが、日本では2人で1案件というケースもよくありました。「CoeFont通訳」を使えば、間に立つ通訳なしで、グローバルな知識を持つ人材をすぐにアサイン(割り当てる)できるため、より効率的に案件を進められるようになると期待されています。
澤田氏はマーケティングの分野でもすぐに活用できると考えています。以前、外国人のスピーカーを招いたイベントで同時通訳や逐次通訳を利用した際に、費用がかかる、翻訳の質に限界がある、トーク時間が半分になるなどの悩みがありました。

髙谷氏は、海外の展示会に顧客を連れて同時通訳を3人依頼すると、旅費を含めて150万円ほどかかることを挙げています。以前、専門用語が多すぎて通訳が対応できないと言われ、途中で断られた経験もあったそうです。澤田氏も、専門用語が難しすぎて通訳に途中で「手に負えない」と帰られてしまい、困った経験があったと語っています。しかし、「CoeFont通訳」であれば、途中で投げ出すことなく、最後まで翻訳を続けてくれる点が評価されています。
「CoeFont通訳」を使えば、これらの悩みも一気に解決できると澤田氏は考えており、年に2回開催される重要な海外イベントでの活用を検討しています。「英語ができないから」と参加を諦めていた顧客に対しても「AIで翻訳します」と伝えられれば、参加意欲を高められるでしょう。今後、大規模なセミナーを開催する際にも積極的に利用していきたいとのことです。
「CoeFont通訳」は、特に以下のような企業におすすめです。
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社内に通訳者を抱えられない中小規模の企業で、その都度通訳を外部に依頼している企業。
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言語の壁のために、通訳の役割しかできない人材が多い企業。外資系企業全般、特に自社で顧客と直接コミュニケーションを取る企業には、必ずニーズがあると考えられます。
多言語リアルタイム翻訳サービス「CoeFont通訳」概要
「CoeFont通訳」は、AIを使ってリアルタイムで多言語翻訳を行うサービスです。
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iOSダウンロードURL: https://apps.apple.com/app/6749563379
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サービスURL: https://coefont.cloud/cir
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提供プラン: 無料 ※有料プランに登録することで利用時間を追加できます。
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対応言語一覧(2025年12月現在): 日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ベトナム語
AI音声プラットフォーム「CoeFont」とは
CoeFontは、声と表現の可能性を広げる革新的なAI音声プラットフォームです。最新のAI技術を活用し、文字を豊かな表現で自然な音声に変換する「Text-To-Speech(TTS)」や、話者の声質を自由に変える「Voice Changer」、そしてリアルタイムで多言語コミュニケーションを可能にする「CoeFont通訳」など、さまざまなニーズに応える解決策を提供しています。
「CoeFont通訳」は、プレゼンテーションや国際会議など、言葉の壁を越えたスムーズなコミュニケーションをサポートします。また、CoeFontの「Voice Hub」には10,000種類以上のAI音声が揃っており、用途や場面に合わせて最適な音声を選ぶことができます。車内アナウンス、トレーニング動画、オーディオブック、ライブ配信、家族への音声メッセージなど、あらゆる音声表現のニーズに対応しています。
CoeFontは、誰もがどんな言語でも、自分らしく自由に「声」で表現できる未来を支えています。
詳細は、https://CoeFont.cloudをご覧ください。
株式会社CoeFontは、2020年に設立された東京科学大学認定ベンチャーとして、AIを活用したサービスの開発と提供を行っています。同社は現在、AIを基盤とした音声合成技術に力を入れており、倫理的で誰もが利用しやすいAI音声プラットフォームの開発に取り組んでいます。

