AIが次世代SiCウエハ開発を加速!6インチp型SiCウエハが国内初公開へ

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次世代を担うSiCウエハ、AIで開発が加速

電気自動車や鉄道、再生可能エネルギーのシステムに欠かせない、次世代のパワー半導体材料として注目されているのが「SiC(シリコンカーバイド)」です。このSiCを使った半導体は、電力の損失を減らし、環境に優しい社会の実現に貢献すると期待されています。

しかし、本格的に普及させるためには、半導体の土台となる「ウエハ」を大きくすること(大口径化)と、材料の中にある不具合(結晶欠陥)を減らして品質を良くすることが大きな課題でした。

こうした課題に挑むため、株式会社オキサイドパワークリスタルをはじめとする開発グループは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトの一環として、SiC単結晶とウエハの研究開発を進めてきました。

溶液成長法とデジタルツインで実現した高品質化

開発グループは、名古屋大学で長年培われてきた「溶液成長法」という特別な技術を基盤に、さらにAI技術である「デジタルツイン」を組み合わせることで、6インチサイズのp型SiCウエハの試作に成功しました。

溶液成長法とは?

溶液成長法は、例えるなら、水に砂糖を溶かしてゆっくり結晶を育てるように、溶媒に溶けている材料を種となる結晶の上に少しずつ積み重ねていく方法です。SiCの場合、シリコン(Si)を溶かし、そこに炭素(C)を溶け込ませてSiCの材料を作り、SiCの種結晶の上で大きく育てます。この方法の大きな特徴は、従来のやり方に比べて、原理的に材料の欠陥が少なく、とてもきれいな結晶を作りやすい点にあります。

デジタルツインとは?

デジタルツインは、現実の世界で行われる実験や製造の工程を、コンピューターの中にそっくりそのまま再現する(仮想空間に「双子」を作る)技術です。この仮想空間で様々な条件を試したり、最適な方法を見つけ出したりすることで、実際に実験する回数を大幅に減らし、開発にかかる期間を短くすることができます。温度や材料の濃度、流れといったたくさんの要素をまとめて計算し、一番良い条件を効率的に見つけ出すことができるのです。

国際会議での注目と国内初公開

開発された6インチp型SiCウエハは、2025年9月に韓国・釜山で開催されたSiCに関する国際会議「ICSCRM2025」において、日本企業として初めて展示され、大きな注目を集めました。特に、直流送電や大規模データセンターの電源システムなど、これからの社会インフラを支える超高耐圧パワーデバイスに不可欠な材料として、国内外から高い関心が寄せられました。

そして今回、このICSCRM2025で反響を呼んだp型SiCウエハが、日本国内で初めて公開されます。2025年12月17日から19日まで東京ビッグサイトで開催される半導体製造技術の展示会「SEMICON Japan 2025」にて、その姿を見ることができます。

会場では、6インチp型SiCウエハに加え、6インチおよび8インチのn型SiCウエハも展示され、溶液成長法によって作られた大口径で欠陥の少ないSiC結晶の最新の成果が紹介される予定です。

SiCウェハー

展示内容

  • 展示品:6インチp型SiCウエハ(青色)、6インチ・8インチn型SiCウエハ(薄緑色)

  • 展示場所:マイポックス株式会社ブース(小間番号:W3855)

今後の展望

オキサイドパワークリスタルは、大学で生まれた最先端技術である溶液成長法と、自社やパートナー企業が持つAIデジタルツイン技術、そして結晶を育てる技術を組み合わせることで、これまで難しかった「大型化」と「結晶品質の向上」という二つの課題を同時に解決することを目指しています。今後もNEDOグリーンイノベーション基金事業と協力しながら、この技術を社会で実際に使われるようにするためのステップを着実に進め、電力損失の少ない、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献していくとのことです。

開発グループ

今回の開発は、以下の企業・研究機関・大学が協力して進めてきました。

  • 株式会社オキサイドパワークリスタル

  • マイポックス株式会社

  • 株式会社UJ-Crystal

  • アイクリスタル株式会社

  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター

  • 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 未来材料・システム研究所

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