東急不動産とスクラムスタジオが渋谷サクラステージ内で運営する「SAKURA DEEPTECH SHIBUYA(SDS)」が、2025年1月23日の開業から1周年を迎えました。
SDSは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授陣をはじめとする世界トップクラスのパートナーとともに、ディープテック分野のスタートアップを支援するグローバルなコミュニティ拠点として活動しています。2025年6月から半年間実施された事業支援プログラム「Sakura Deeptech Shibuya Accelerator」の成果発表と、SDSの1周年を祝うデモデイが12月4日(木)に開催されました。

このプログラムでは、採択された10社のスタートアップが日本市場への理解を深め、日本企業との実証実験や商品開発、事業化に向けた協業を進めました。デモデイでは、その成果が発表され、スタートアップに関心を持つ日本企業との交流が活発に行われました。
プログラムの主な成果
1. Verobotics(ベロボティクス)と東急不動産株式会社
イスラエル発のスタートアップであるVeroboticsは、全自動外壁清掃ロボットを開発しており、清掃と同時に外壁のデータ収集・管理も行っています。デモデイに先立つ12月3日には、渋谷サクラステージのセントラルビルで、このロボットによる窓清掃の実証実験が実施されました。

東急不動産は、このロボットのビルへの本格導入を検討するため、現場担当者が機器の運用方法などを検証しました。今後、東急不動産はVeroboticsの日本市場での展開を継続的に支援し、連携を進める予定です。
2. Loliware(ロリウェア)と東急不動産株式会社
アメリカのスタートアップLoliwareは、プラスチックの代替となる海藻由来の新素材を開発しています。9月20日に東急不動産の施設「東急リゾートタウン勝浦」で開催された環境関連イベントで、Loliwareの海藻由来ストローがドリンク提供時に試験的に導入されました。今後は、他のプロジェクトでの展開も検討されています。

3. Foundation Alloy(ファウンデーションアロイ)と貝印株式会社
Foundation Alloyは、世界初の完全固体金属技術を用いた超高性能金属を開発するアメリカのスタートアップです。貝印株式会社との協業検討が始まり、2026年中には、Foundation Alloyの金属加工技術を用いた包丁製造の実証実験が予定されています。

従来の包丁製造工程では避けられなかった資材ロスが課題でしたが、Foundation Alloyの技術を用いることで、型取り工程が不要になり、製造プロセスの短縮や廃棄物削減、さらには製造コストの低減が期待されています。両社は金属成形プロセスの詳細や作業方法を検証し、今後の製品化を視野に入れた連携を進める予定です。
活気あふれるセッションや展示に200名超が参加
デモデイ当日は、事業会社、ベンチャーキャピタル、大学・研究機関、行政機関、国内外のスタートアップなど、200名以上が参加しました。
パネルセッションでは、イギリス発祥で日本でも急成長を遂げる電力会社、オクトパスエナジージャパンのCPOであるMichael Cottrell氏が登壇し、海外スタートアップが日本企業と事業共創を進める際のコミュニケーションや文化的な違いについて講演しました。
また、プログラムに採択された10社のスタートアップによるブース展示では、最新の取り組みや実際の技術デモが紹介され、参加者との新たな交流が生まれました。

採択スタートアップ一覧
今回のプログラムに採択されたスタートアップは以下の通りです。
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Edgenesis (シンガポール): IoTの相互運用性問題を解決するオープンソースKubernetesネイティブIoTゲートウェイを開発。 https://edgenesis.ai/
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Novathena (アメリカ): ミッションクリティカルなサービス業務の手続きミスによる運用損失を排除するSpatial Transformer AI技術。 http://www.novathena.ai/
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Code Metal (アメリカ): エッジコンピューティングコーディングと将来のソフトウェア機能開発のギャップを埋めるエージェントワークフロー。 https://www.codemetal.ai/
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Verobotics (イスラエル): 完全自動化された洗浄および検査サービスを提供するロボティクスプラットフォーム。 https://verobotics.com/
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Impossible Metals (アメリカ): 海洋環境に配慮した水中金属採掘AIロボット。 https://impossiblemetals.com/
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EX-Fusion (日本): 商用レーザー融合技術を利用したクリーンエネルギーの開発。 https://en.ex-fusion.com/
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LOLIWARE INC. (アメリカ): 海藻ベースのプラスチック代替マテリアル。 https://www.loliware.com/
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Foundation Alloy (アメリカ): 世界初の完全固体金属技術を用いた超高性能金属。 http://www.foundationalloy.com/
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Aikido Technologies (アメリカ): 浮体式洋上風力発電の開発と建設。 https://www.aikidotechnologies.com/
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Thermulon (イギリス): 超断熱シリカエアロゲルの開発。 https://www.thermulon.com/
各スタートアップの技術や取り組みをより深く理解してもらうため、コンセプトムービーも制作されました。それぞれの技術がどのような社会課題を解決し、未来をどのように変えていくのかを、視覚的かつ情緒的に伝える内容となっています。

コンセプトムービーはこちらからご覧いただけます: https://youtu.be/lYIIjX9p0kI
SDSのコミュニティ活動の拡大
SDSは開業から1周年を迎え、多くのパートナー企業・大学・団体の参画により、コミュニティ形成のための活動が大きく拡大し、活性化しています。多様な分野の人々が集まり、交流や協業を通じて新たな価値創造が進むなど、イノベーションハブとしての機能がさらに強化されています。今後も、より多くのステークホルダーと連携し、社会課題解決に貢献するディープテックエコシステムの形成に貢献していく方針です。

2026年度アクセラレータープログラムへの参加スタートアップを募集
東急不動産とスクラムスタジオは、2026年度のアクセラレータープログラムに参加する、グローバルな展開を目指す国内外のディープテック・スタートアップを募集します。
渋谷は、メディア、ゲーム、音楽、ファッション、食、アートなど、あらゆる文化が交差し、世界へ発信されるユニークな街です。SAKURA DEEPTECH SHIBUYAは、渋谷が持つコンテンツや知的財産(IP)に最先端技術を掛け合わせ、渋谷から新しい体験と価値を創造し、世界へ発信する機会を提供していきます。この挑戦では、「技術とカルチャーを組み合わせ、コンテンツにイノベーションを起こすこと」を目標としています。次期のアクセラレータープログラムでは、「渋谷のカルチャーをエンパワーするディープテック・スタートアップ」が募集の対象となります。
【コンセプト】
コンテンツにイノベーションを起こす 〜世界一ユニークなまち・渋谷から発信へ〜
【募集内容】
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主な対象:アーリー・グロースステージのスタートアップ
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対象地域:グローバル(国内・海外)
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対象領域:上記のコンセプトに準ずるディープテック(サステナビリティテック、AI・ロボティクス、その他のテクノロジーを含む)
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募集開始:2026年1月末頃
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応募詳細:こちらのページにて1月末頃に発表されます。 https://www.sakuradeeptechshibuya.com/accelerator/
施設概要
- 名称: SAKURA DEEPTECH SHIBUYA -Global Innovation Hub-
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場所: 渋谷サクラステージ セントラルビル 12 階(東京都渋谷区桜丘町 1-2)
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開業: 2025年1月23日

会社概要
東急不動産株式会社
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所在地: 東京都渋谷区道玄坂 1-21-1 渋谷ソラスタ
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代表者: 代表取締役社長 星野 浩明
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設立: 1953年
東急不動産は、渋谷エリアのまちづくりにおいて、スタートアップとの共創による新しい産業や最先端の事業創出を通じて、エリアの価値向上と賑わいづくりを進めています。スタートアップの成長を支える場所の提供、継続的な出資サポート、産官学の様々なプレイヤーとの連携機会創出など、幅広い取り組みを行っています。
スクラムスタジオ株式会社
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所在地: 東京都港区西新橋 1-1-1
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代表者: 代表取締役社長 髙橋 正己
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設立: 2020年
スクラムスタジオ株式会社は、日本企業とグローバルスタートアップの新しい事業創出を支援しています。オープンイノベーションの手法を活用し、『Hokkaido F Village X』や『Sakura Deeptech Shibuya Accelerator』などのプログラムの企画運営を行う「事業共創事業」と、海外スタートアップの日本進出を支援する「インキュベーション事業」を展開しています。日本企業と世界中のスタートアップとの新たな事業や価値創造を推進しています。

