コクヨとTIGEREYEが「OFFICE AGENTIC AI」を共同開発、オフィスが自律的に進化する未来へ

ビジネス活用

オフィスが自律的に思考し、働く人を支援するAI「OFFICE AGENTIC AI」が登場

コクヨ株式会社と株式会社TIGEREYEは、オフィスでの働き方をより良くするためのAI「OFFICE AGENTIC AI(オフィス エージェンティック エーアイ)」を共同で開発しました。この新しいAIは、働く人々の行動を変え、仕事の効率や創造性を高めることを目指しています。現在、この技術は共同で特許を出願中です。

KOKUYO x TIGEREYE 行動変容を促す「OFFICE AGENTIC AI」

「OFFICE AGENTIC AI」とは?

「OFFICE AGENTIC AI」は、オフィス自体がまるで生きているかのように考え、働く人の創造力を引き出す手助けをするAIです。社員の行動パターンや会議のデータ、コミュニケーションの履歴などを個人が特定できないように匿名で分析し、その結果をもとに、最も効果的な座席の配置、会議の時間、チームの組み合わせなどを提案できるようになります。

このAIの大きな特徴は、AI自身が自律的に判断し提案できる点です。複数のAIがお互いに話し合い、評価し、最適な答えを導き出す仕組みを持っています。これにより、人の指示がなくてもAIが自ら考えて行動できるようになります。

コクヨはこれまで、オフィス家具や空間デザインといった「ハード面」で働き方を支援してきました。今回の「OFFICE AGENTIC AI」によって、「ソフト面」からも働く人をサポートする新たな挑戦を始めます。この技術は将来的に製品化を目指しており、2026年春にはコクヨの新しい本社で実際に使ってみる実証実験が計画されています。

AIがオフィスを「エージェント」に変える技術

「OFFICE AGENTIC AI」は、AIが一人ひとりの行動データを学習し、対話や評価、最適化を繰り返しながら、人とオフィス空間の関係をより良いものに変えていく「エージェント的(Agentic)」なAI技術を基盤としています。これは、TIGEREYEが開発した様々な種類のデータを扱うAIフレームワークと、コクヨが考える「自律協働社会」というオフィスの考え方が合わさって生まれた成果です。

この技術の核となるのは、AI同士や人間とのやり取りを「MCP(Model Context Protocol)」という仕組みで管理し、会話の内容や目的、状況などの情報を「親和性ベクトル」として学習し続ける点です。これにより、AIは「どのように」「誰と」「どんな目的で」協力すべきかを自分で判断し、オフィスの環境や個人の働き方に合わせて最適な支援を提供できるようになります。

また、TIGEREYEが提案する「Talk層・Judge層・Match層」という三つの層からなる構造も採用されています。これにより、オフィス内のAIが自ら学び、空間や人の行動をリアルタイムで最適な状態に調整します。

  • Talk層: ユーザーや他のAIとの会話を生み出す役割

  • Judge層: 会話の内容を評価し、スコアを付ける役割

  • Match層: 最適なAIや人材を選ぶ役割

この仕組みは、あらかじめ決められたルールに従って動くことが多い従来のAIアシスタントとは異なり、「オフィスそのものが考え、提案する存在」へと進化させる技術基盤と言えます。

自己改善を核としたシステムアーキテクチャ

このほかにも、以下のような重要な技術が使われています。

  • MCP(Model Context Protocol)による、多岐にわたるメタ情報のやり取り

  • スコアリングベクトルによる、AIの応答を多角的に評価する仕組み

  • 親和性ベクトルによる、最適なAIや人材のマッチング

  • グラフデータベース(GraphDB)による、履歴や成果、行動の動的な学習

  • Talk/Judge/Matchの三層構造による、自律的な制御の仕組み

両社の展望

コクヨは「働く空間を、単なる『場所』ではなく『行動を変えるエージェント』へと進化させたい」と考えています。TIGEREYEとの協力は、AIを通じてオフィスが自ら学び、人の創造性を引き出す未来の職場を作る第一歩です。

TIGEREYEは「AIがただ応答するだけでなく、自律的に考え、評価し、行動を導く『Agentic AI』こそが次世代の知的基盤」と述べています。コクヨの空間デザインの考え方とTIGEREYEのAI制御技術が融合することで、オフィスが「進化する知的生態系」になることを目指しています。

今後、両社はこの技術をさらに発展させ、「OFFICE OS」や「OFFICE AGENT」として具体的なシステムに落とし込んでいく予定です。会議室の予約、勤怠管理、情報の共有、社員の健康状態の計測など、様々な業務領域で製品化を見据えた実証実験を始める計画です。最終的には、AIが社員一人ひとりの行動や感情、目的を深く理解し、働き方そのものを進化させるプラットフォームの実現を目指しています。

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