医療AIソリューションの開発を手がけるDEEPNOIDは、FuriosaAIのNPU(神経網処理装置)を導入し、AI医療サービスの運用コスト最適化と機能強化を進めることを発表しました。

DEEPNOIDの担当者は、FuriosaAIのNPU採用について、第1世代半導体Warboyの量産実績による高い信頼性と、第2世代半導体Renegade(RNGD)の大規模言語モデル(LLM)処理能力への期待を挙げています。将来的には、RNGDをLLMだけでなく、ビジョン認識AI機能にも応用し、コスト削減と市場競争力の両立を図る計画です。
DEEPNOIDの主要AI医療ソリューション
DEEPNOIDは2008年にソフトウェア企業として創業し、2015年からディープラーニング技術開発に注力してきました。同社の主要ソリューションには、胸部X線データをAI解析し読影所見書のドラフトを自動生成する「M4CXR」があります。

M4CXRは、生成AIを用いて読影所見書ドラフトを作成する技術が特徴です。2023年から胸部X線向け生成AI技術に関する研究を進め、現在は臨床試験を終え、食品医薬品安全処のデジタル医療機器認可手続きを進めています。
その他にも、脳MRA向けの「DEEP:NEURO」、肺疾患対応の「DEEP:LUNG」などの医療AIサービスを展開しており、DEEP:NEUROは革新医療機器に指定され、非保険診療でも診療報酬が認められています。産業用X線向けのソリューションも手がけています。

GPUからNPUへの移行と期待される効果
DEEPNOIDは現在、AI演算にNVIDIAのA100 GPUを使用していますが、情報通信産業振興院(NIPA)が推進する「AI半導体応用実証支援事業」の支援を受け、FuriosaAIのNPUへの置き換えを進めています。

NPUは市場の初期段階にあるものの、LLMなどの処理においてGPUに比べて高い性能と電力効率を発揮することが期待されています。専門試験機関による実証では、FuriosaAIのNPUを使用した場合、NVIDIA H100 GPUと比較して電力効率が高く、総所有コスト(TCO)が2倍以上削減されることが確認されました。

国内外での実証と市場拡大
DEEPNOIDは、梨花女子大学ソウル病院、ソウル市立ボラメ病院、仁荷大学病院を実証病院として、M4CXRの実運用実証を進めています。将来的には、フィリピン、ベトナム、中東など海外地域への導入も視野に入れています。
2025年6月17日には、欧州胸部画像医学会が主催するESTI 2025において、M4CXRによる生成AIベースの胸部X線読影所見書ドラフト生成性能を評価した研究が「最優秀口演発表賞」に選ばれました。この研究では、85%の有意な診断精度と、平均3.4秒という読影所見書ドラフト作成速度が記録されています。
DEEPNOIDは、2026年2月にドバイで開催される「World Health Expo(WHX 2026)」や、4月に日本で開催される「国際医用画像総合展(ITEM 2026)」にM4CXRを出展し、国産NPUによるLLM処理で読影所見書が生成される点を積極的にアピールする予定です。

FuriosaAIの国際的な認知度向上も、DEEPNOIDの事業拡大を後押しすると考えられています。FuriosaAIは、2025年に『KBスターターズ・シンガポール』に選定され、現地でのネットワーク構築や投資連携、グローバル・オープンイノベーションプログラムに参加しています。また、APEC首脳会合や世界最大規模の放射線医学会『RSNA 2025』でもRNGDが紹介されています。
AIエコシステムへの影響
DEEPNOIDのNPU導入は、単なるコスト削減に留まらず、国内のAIエコシステム全体に一石を投じるものです。AI業界ではGPUが主流ですが、NPUへの転換には開発コストと労力が伴います。しかし、RNGDはGPUに代替し得る性能を示しており、積極的に試す価値があるとの見方があります。
GPUの価格高騰が続く中で、国産・外産問わずNPUの量産が拡大することが、健全な市場形成には不可欠であると、DEEPNOIDの担当者は語っています。同社はFuriosaAIにその可能性を見出し、その役割を十分に果たせると考えています。

