ドイツの制御機器メーカーであるベッコフオートメーション株式会社は、AIエージェントが機械の運用と保守を支援する新しいモジュール「TwinCAT CoAgent for Operations」に関する最新情報を公開しました。

TwinCAT CoAgentとは?
TwinCAT CoAgentは、生成AI(文章や画像を自動で作るAI)を活用したチャット形式の対話型AIツールです。これまで「TwinCAT CoAgent for Engineering(TE1700)」として、PLC(産業機械を動かすコンピューター)のプログラムコードの提案や最適化、必要な資料の検索、レポート作成など、エンジニアリング(開発)作業の支援に特化していました。
今回発表された「TwinCAT CoAgent for Operations(TF1700)」は、このAIのサポート範囲を、実際に機械が動いているときの操作やメンテナンス業務にまで広げます。
TwinCAT CoAgent for Operationsでできること
この新しいモジュールは、機械の動きを示す値(プロセス値)、記録されたデータ(ログファイル)、重要な目標達成度合い(KPI)などを常に監視します。そして、いつもと違う動きや異常の兆候を見つけると、サービス担当者とチャットで対話しながら、問題解決をサポートします。
ただ警報を出すだけでなく、AIが「もしかしたらこれが原因では?」という仮説を立てたり、その根拠を示して診断したり、具体的な対策の手順を提案したりと、問題解決の最初から最後までを支援します。これにより、誤った警報が減り、本当に重要な故障を優先的に対応できるようになるため、トラブル対応にかかる時間を短縮し、サービス品質を一定に保つことが期待されます。
また、このモジュールには自動でレポートを作る機能も備わっています。故障の本当の原因や、影響があった範囲、どのような対策をしたかを含むサービスレポートに加え、KPIやトレンドをまとめた運転ごとのレポートも自動で作ってくれます。これにより、機械の運用状況がよりわかりやすくなり、定期的な保守や改善を続ける手助けとなります。
タスク特化型AIとの連携
さらに、TwinCAT CoAgentは「TwinCAT Machine Learning Creator」と組み合わせることで、特定の作業に特化したAIと、対話を通じてサポートするエージェント型AIをうまく連携させて活用できます。Machine Learning Creatorは、センサーの信号や時間ごとのデータ、画像データなどを使ってAIモデルを自動で作り出し、PLC上でリアルタイムに動かすことができるAIです。
一方、エージェント型AIのCoAgentは、プロジェクトの内容や運用データの状況を理解し、人と機械の間で賢いサービス担当者のように機能します。
柔軟な拡張性を持つオープンな仕組み
TwinCAT CoAgentは「Model Context Protocol(MCP)」というオープンな設計(誰もが使える共通のルール)を採用しています。これにより、さまざまなAIモデルが、お客様それぞれが持つ特別な知識(ナレッジベース)に柔軟にアクセスできるようになります。ベッコフは、開発から運用、保守サービスまで、機械のライフサイクル全体をAIでサポートすることで、複雑になっている製造現場の課題を解決し、生産性の向上に貢献していくとのことです。

ベッコフオートメーション日本法人の代表取締役社長である川野俊充氏は、TwinCAT CoAgent for Operationsの発表に際し、次のようにコメントしています。
「TwinCAT CoAgent for Operationsは、装置の中で動くAIとして、警報やログ、運転データを継続的に分析し、異常への対応だけでなく、故障の予兆を見つけたり、故障を未然に防いだりすることにも活用できます。GPU(画像処理に特化した計算機)を搭載した産業用PCを選ぶことで、データを外部に出さずに、リアルタイムに(すぐに)運用することが可能です。クラウド(インターネット上のサービス)の利用も含め、現場の運用方針に合わせて選べるAIの基盤をベッコフでは提供していきます。」
TwinCAT 3のAI関連製品の概要
エージェント型AI
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TwinCAT CoAgent for Engineering(TE1700): 制御エンジニア向けのAIアシスタントです。プログラムコードの提案や最適化、I/O(入出力)設定の支援、HMI(操作画面)の開発、資料の検索などを、自然な言葉(チャット形式)でサポートします。既存のプロジェクトの内容を理解し、開発業務の効率を上げる手助けをします。
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TwinCAT CoAgent for Operations(TF1700): 今回発表された、機械の運用フェーズ向けのAIです。プロセス値やログ、KPIを監視し、異常を検出した際には、診断や対策の検討を対話形式で支援します。仮説を立てるところから、根拠に基づいた分析、具体的な対応手順の提示まで、サービス担当者と一緒に問題を構造的に解決するプロセスをサポートします。
タスク特化型AI
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TwinCAT Machine Learning Creator – Computer Vision(TE3851): 外観検査、位置決め、物の分類など、画像処理に特化したAIモデルを自動で作り出します。データサイエンスの専門知識がなくても利用でき、作られたモデルはPLCのプログラムコードの一部としてリアルタイムに実行可能です。
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TwinCAT Machine Learning Creator – Signals and Time Series(TE3852): 電流、温度、振動、圧力といった時間とともに変化するデータ(時系列データ)を使ったAIモデルを自動で作成します。異常の検知、故障の予知保全、プロセスの最適化、エネルギー効率の向上といった用途を想定しており、制御システム内にある機械データの活用を支援します。
※ご紹介したすべての製品は、現時点ではベータ版として提供されています。提供先や利用条件は製品によって異なり、正式な発売時期はまだ決まっていません。最新情報や正式なリリース時期については、ベッコフオートメーションのWebサイトでご確認ください。
このプレスリリースは、2025年11月にドイツ・ニュルンベルクで開催された国際展示会「SPS – Smart Production Solutions 2025」で公開された情報と、ベッコフの機関誌「PC Control」に掲載された内容をもとに作成されています。製品の仕様は変更される可能性があります。
▶︎ 参考動画:TwinCAT CoAgent for Operationと産業用ロボットモジュールATROによる配列デモ。
https://www.beckhoff.com/ja-jp/

