
株式会社ZOZO NEXTの研究開発組織「ZOZO研究所」が、人工知能(AI)分野で最も権威ある国際会議の一つ「AAAI-26」のOral Talksに、同所の研究員が執筆した論文が採択されたことを発表しました。この論文は、高性能なAIモデルの「賢さ」と「効率」という、これまで両立が難しかった二つの課題を解決する新技術「Co-Sparsify」を提案しています。
AIの「つながり」を理解するGNNとは?
GNN(Graph Neural Network:グラフニューラルネットワーク)は、人々の関係性や分子の構造、インターネットのネットワークなど、「つながり」を持つデータを分析するAI技術です。このGNNは、様々な分野で活用が進んでいます。
しかし、一般的なGNNでは、複雑な「つながり」のパターンを完全に理解するのが難しいという課題がありました。そこで、より複雑な構造を捉えられる「高次GNN」という、さらに賢いGNNが研究されてきました。特に「2-FWL GNNs」と呼ばれる高性能な高次GNNは非常に賢いのですが、計算にかかる手間が非常に大きく、たくさんのデータに適用することが難しいという問題があったのです。
「Co-Sparsify」が賢さと効率を両立
ZOZO研究所は、この「賢さ」と「計算効率」を同時に高める新しい仕組み「Co-Sparsify」を提案しました。この技術のポイントは、グラフ構造の中で「本当に必要な部分だけ」に計算を集中させるという考え方です。
これまでの高性能なGNNでは、3つのノード(つながりの点)の関係をグラフ全体のあらゆる場所で計算していました。しかし、今回の研究で、これらの関係が特に重要になるのは、ノード同士が密接につながり合っている「二重連結成分」と呼ばれる領域に限られることが数学的に解き明かされました。
そこで「Co-Sparsify」は、2つのノードの関係を同じ「つながり」のグループ内に、3つのノードの関係を同じ「二重連結成分」内に限定することで、無駄な計算を大幅に削減します。これにより、必要な計算の量を最小限に抑えることが可能になりました。
驚きの効果
この新しい方法によって、従来のモデルに比べて計算量が大幅に減りました。例えば、分子のデータを解析する実験では、AIの賢さ(精度)を保ちながら、処理にかかる時間が最大60%も短縮され、コンピューターのメモリ使用量も最大52%削減されることが確認されています。さらに、この技術は、AIの賢さを落とすことなく、むしろ精度が向上するケースも確認されたとのことです。
AIの未来を切り拓く可能性
今回の研究で示された「必要な部分に集中して計算する」というアプローチは、現在のGNNモデルの性能を根本的に向上させる可能性を秘めています。特に、AIが情報をたくさん詰め込みすぎて、大事な情報が埋もれてしまう「オーバー・スクワッシング」という問題の解決にも役立つと期待されています。
今後、さらに高次の複雑なモデルにもこの技術が応用されれば、これまで扱えなかったような大規模で複雑なデータに対しても、高性能なAIを適用できるようになるかもしれません。これにより、AIの理解力と計算効率が同時に高まり、新しいAIの設計が実現する可能性を秘めています。
論文情報
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タイトル: Connectivity-Guided Sparsification of 2-FWL GNNs: Preserving Full Expressivity with Improved Efficiency(邦題:2-FWL GNNsにおける接続性誘導型スパース化:完全な表現力保持と計算効率向上)
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著者: マカオ大学/Rongqin Chen、ZOZO研究所/Fan Mo、マカオ大学/Pak Lon Ip、マカオ大学/Shenghui Zhang、中国科学院 深圳先進技術研究院/Dan Wu、中国科学院 深圳先進技術研究院/Ye Li、マカオ大学/Leong Hou U
ZOZO研究所について
ZOZO研究所は、「ファッションを数値化する」ことを目標に掲げるZOZOグループの研究機関です。ZOZOグループが持つファッションに関する膨大なデータを基に、ファッションを科学的に解明するための研究開発を行っています。
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所名: ZOZO研究所(ZOZO Research)
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設立: 2018年1月31日

