台湾発の3D医療画像技術「MonoStereo」が日本の手術室に革新をもたらす可能性

ビジネス活用

医療の現場では、体の内部を見るための画像技術が日々進化しています。特に、手術のときに映像に「奥行き」があるかどうかは、医師の操作の正確さや、患者さんの治療の進み具合に大きく影響する大切な要素です。

2D映像を3Dに!手術の精度を高めるMDTKの「MonoStereo」

台湾中部にある医療機器のスタートアップ、承鋆生醫(MDTK)は、これまでの平らな(2D)内視鏡の映像を、まるで本物のように立体的に見える(3D)映像に変える画期的なシステムを開発しました。

このシステム「MonoStereo」を使うと、体への負担が少ない手術(低侵襲手術)の際に、医師が見やすくなり、より正確な操作ができるようになります。これにより、患者さんにとって、さらに安全で精密な手術が受けられる環境が期待されています。

台湾発の医療画像技術「MDTK」が日本の手術室の高度化に貢献することをテーマにした画像

既存の設備を活かして導入できる手軽さ

MDTKの「MonoStereo」は、今使っている2Dの内視鏡設備をそのまま利用できる「モジュール型」というタイプのシステムです。特別な処理装置とソフトウェアを追加するだけで、3Dの映像を見られるようになります。

この方法なら、新しい設備をすべて買い替える必要がなく、病院の費用負担や、医師が新しい機械の使い方を学ぶ時間も大幅に減らせます。医師はこれまでの手術の方法を大きく変えることなく、より正確に体の内部を把握できるようになるのです。

がんの早期発見にも貢献

この3D画像システムは、すでに台湾の医療現場で使われており、ヨーロッパ、日本、インドなどの地域でもその価値が評価され始めています。

多くの病院での比較試験の結果、大腸のポリープ(大腸腺腫)の発見率が1.8倍に、特に見つけにくい平らなポリープの発見率が1.96倍に向上したと報告されています。また、台湾大学病院の研究でも、初期の病変を見つけるのに役立つ可能性が示されており、がんの早期発見や重症化を防ぐための新しい希望として注目されています。

日本は世界でも高齢化が進んでおり、消化器系の病気や大腸がんになる人が増えています。特に見つけにくい平らな病変は、見落としの原因の一つとされています。「MonoStereo」のような3D画像システムが普及すれば、こうした難しい病変も早期に見つけられるようになり、大腸がんになるリスクを減らすことにつながるでしょう。

グローバル展開を支えるBE Healthの力

MDTKが世界中で技術を展開できている背景には、各国の医療の文化や現場の違いをしっかり理解していることがあります。例えば、MDTKのセールスマネージャーであるNick Chen氏は、ヨーロッパでは教育的な価値や安全性が重視され、日本では診療の進め方や信頼性が大切にされると説明しています。

MDTKは、ただ技術をアピールするだけでなく、それぞれの地域のニーズに合わせて、製品のデザインや使い方、さらには研修資料まで細かく調整してきました。

この国際展開を強力にサポートしているのが、台湾最大級のメドテックアクセラレーター兼ベンチャーキャピタルであるBE Health(本社:台北市)です。BE Healthは、MDTKに資金を提供するだけでなく、臨床試験の計画作り、医師へのインタビュー、専門家のネットワーク作り、さらには海外市場のニーズ調査まで、幅広い支援を行っています。

日本オフィス開設で、さらなる医療イノベーションを

BE Healthは、この度「BE Health Japan」として日本拠点を正式に立ち上げました。MDTKのグローバル展開は、BE Healthがアジア発の医療技術を支援してきた成果の一つです。台湾の医療画像技術が日本の医療現場に広がることは、BE Healthが目指す医療分野の新しい仕組み作りの象徴と言えます。

この日本オフィスの開設は、台湾のスタートアップが日本市場でしっかり事業を展開するための拠点となるだけでなく、日本のスタートアップが海外へ進出するための新しいチャンスと推進力を与える場にもなります。

BE Health創業者のArthur Chen氏は、「MDTKのように、医療現場の課題から生まれた優れたスタートアップが、アジアから世界へと挑戦していく機会を、これからも作り続けていきたい」と語っています。

「BE HEALTH VENTURES」という社名と、緑と青の翼のような抽象的なデザインのロゴが描かれた画像

BE Healthとは

BE Healthは、医療技術(メドテック)分野の新しい技術やサービスを推進している会社です。「BE Accelerator」と「BE Health Ventures」という2つの事業を通じて、メドテックのスタートアップが新しい技術を開発し、市場で広がるまでを総合的に支援しています。

「BE Accelerator」は台湾で最大のメドテックスタートアップ支援組織で、2018年の設立以来、台湾の3つの大手医療機関と協力し、150社以上のスタートアップを指導してきました。これまでに、合計で200億ドル以上もの資金調達を支援しています。「BE Health Ventures」は、スタートアップに投資することで、その持続的な成長を支えています。

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