ライフサイエンスの未来を加速するAI:NVIDIA BioNeMoが創薬を変革

ビジネス活用

NVIDIAは、AI(人工知能)を使って薬を作る研究(創薬)を加速させるためのプラットフォーム「NVIDIA BioNeMo」を大きく進化させたと発表しました。

近年、ライフサイエンスの分野では膨大な量の科学データが生まれています。BioNeMoは、これらのデータを効率的に扱い、AIモデルを開発・利用するための土台を提供します。これにより、研究開発にかかる費用(年間約3,000億ドルと推定されています)を減らしつつ、新しい薬が見つかる可能性を最大限に高めることを目指しています。

BioNeMoの要素

BioNeMoの新たな進化

BioNeMoには、いくつかの新しい機能が追加されました。これらは、AIを使った創薬をさらに簡単で効率的にするためのものです。

  • 新しいAIモデルの公開: RNAという生体分子の形を予測するAIモデル「RNAPro」と、AIが設計した薬が実際に作れるかを確かめるためのモデル「ReaSyn v2」が、オープンな形で利用できるようになりました。

  • BioNeMo Recipes: 生体分子のAIモデルを訓練したり、自分好みに調整したり、実際に使えるようにしたりする作業を、より速く、効率的に行えるようにするツールです。

  • BioNeMoデータ処理ライブラリ: 分子を扱うための化学情報学ツール「nvMolKit」など、データを処理するための便利な機能が加わりました。

NVIDIAのヘルスケア担当バイスプレジデントであるキンバリー・パウエル氏は、「BioNeMoは、実験で得られたデータをAIが学習できる知恵に変え、全ての実験が次の発見につながるような継続的な学習サイクルを生み出します。これにより、研究者が生物学の難しい課題に取り組むための最先端のモデルを構築できるよう支援します」と述べています。

大手企業との連携で創薬を加速

NVIDIAは、BioNeMoを実際の研究や科学の現場に組み込むために、主要なライフサイエンス機関と協力しています。

Lillyとの共同イノベーションラボ

製薬大手LillyとNVIDIAは、創薬における長年の課題を解決するための「共同イノベーションラボ」を立ち上げることを発表しました。このラボでは、NVIDIAの高度な計算技術やAI、ロボットに関する知識と、Lillyの創薬の専門知識を組み合わせます。これにより、Lillyの化学者や生物学者が、BioNeMoプラットフォームとLillyの自律型ラボを活用し、創薬に革新をもたらす可能性のある課題に取り組むことを支援します。両社はまた、Lillyの事業全体でAIと高速計算技術を活用する機会も探る予定です。

Thermo Fisherとの自律型ラボ構築

Thermo Fisherは、NVIDIAと協力し、科学研究ラボを自動化されたデータ工場に変革することを目指しています。NVIDIAのAI計算技術とThermo Fisherの計測機器を組み合わせることで、以下の取り組みを進めます。

  • 統合されたAI計算: NVIDIA DGX Spark™といったデスクトップスーパーコンピューターを活用し、ラボの機器からクラウドまで、データ処理をスムーズに行うシステムを構築します。

  • ラボ自動化のためのAIシステム: NVIDIA NeMo™ソフトウェアを使って、人間が介入しなくても実験の手順を考え、実行し、品質を管理できるAIシステムを開発します。

  • 自律的なデータ分析: BioNeMoツールを使い、機器から得られるデータをAIがリアルタイムで分析し、すぐに役立つ科学的な洞察を導き出します。

Thermo Fisher Scientificのエグゼクティブ バイス プレジデントであるGianluca Pettitti氏は、「AIと実験室の自動化を組み合わせることで、科学研究の進め方が大きく変わります。これにより、顧客の作業スピードと精度が向上し、最終的には人類に大きな影響を与える発見が加速されるでしょう」と語っています。

広がるAI創薬エコシステム

世界中の多くの企業が、BioNeMoプラットフォームを活用して、創薬におけるAIの未来を築いています。これにより、開発者は生物学を深く理解し、新しい薬を設計するためのAI駆動型のアプローチを大規模に採用できるようになります。

BioNeMoを活用しているバイオテクノロジー企業や創薬分野の企業には、以下のような例があります。

  • Basecamp Research

  • Boltz PBC

  • Chai Discovery

  • Natera

他にも、Apheris、Dyno Therapeutics、OpenFold、Terray Therapeuticsといった企業が、BioNeMoプラットフォームで開発されたモデルを公開しています。

AIを活用した未来のデジタルラボを構築

科学データを集め、分析し、仮説を立て、実験を計画するためのAIによる自動化された仕組み(エージェント型ワークフロー)を構築することは、科学的な発見を加速させるために非常に重要です。

NVIDIAのオープンモデルやNVIDIA NeMoフレームワークを活用して、特定の分野に特化したAIを開発している企業も増えています。

  • Edison Scientificは、6ヶ月かかっていた作業を一晩でこなせる自律的な発見AI科学者「Kosmos」を発表しました。

  • Tetrascienceは、Thermo Fisher Scientificと協力し、AIによる科学データの活用を推進しています。

  • Owkinは、患者データを学習した最先端の生物学モデル「OwkinZero」を発表しました。

さらに、Benchling、CytoReason、HelixAI (Sapio Sciencesの子会社)、Potatoなどの企業も、AI科学のためにNVIDIA NeMoやNVIDIA NIM™マイクロサービスを活用しています。

これらのデジタルAIシステムを実際のラボと連携させることで、コンピュータ上での実験(インシリコ)と実世界での検証を繰り返すサイクルが生まれます。

NVIDIAは、ロボット技術やラボの自動化を行う企業とも協力し、シミュレーションや物理的なAI技術の導入を支援しています。

  • Multiply Labsは、NVIDIA Isaac Sim™フレームワークを使ってロボットの「デジタルツイン」(仮想空間上のそっくりさん)を作り、実際の製造に使う前にロボットのテストや検証を行っています。

  • Lila Sciencesは、自動化されたラボを活用してデータを生み出し、AIシステムが設計した実験を検証することで、「科学的超知能」の構築を目指しています。

  • HighRes Biosolutionsは、NVIDIA Isaac Simをラボ自動化の設計に活用し、NVIDIA Cosmos-Reason1モデルを使ってロボットがリアルタイムで連携して実験を調整できるようにしています。

  • Opentrons Labworksは、Isaac Simを活用して、ロボットが様々な環境で動作できるようにし、デジタルAIが物理的なラボ操作を支援する仕組みをサポートしています。

他にも、Amgen、Automata、Roche、Transcripta Bioといった企業が、NVIDIA Omniverse™ライブラリとIsaac Simを活用したデジタルツインを構築し、ラボや製造施設にAI技術を導入しています。

NVIDIA BioNeMoプラットフォームがどのようにAI駆動型の生物学および創薬を支援するかについて、さらに詳しい情報は以下のリンクからご覧いただけます。
NVIDIA BioNeMo プラットフォーム

まとめ

NVIDIA BioNeMoプラットフォームの拡張と、LillyやThermo Fisherをはじめとする多くの企業との連携は、AIが創薬のプロセスを根本から変え、新しい薬の開発を劇的に加速させる可能性を示しています。AI初心者の方にも、この技術が私たちの未来の健康にどれほど大きな影響を与えるかを感じていただけたら幸いです。

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