人生100年時代を健やかに過ごすために、「噛むこと」が全身の健康維持に重要な役割を果たすことが注目されています。
株式会社ロッテが参画する「噛むこと健康研究会」は、2026年1月19日から3月20日までの期間限定で、第7回年会の講演およびトークセッションの動画を公式ホームページにて公開しました。この動画では、咀嚼機能が栄養状態、全身機能、認知機能、介護費用にどのような影響を与えるのか、さまざまな視点からの研究成果が報告されています。
動画は「噛むこと健康研究会」のウェブサイトで視聴できます。
https://www.kamukotokenko.jp/
第7回年会概要
第7回年会は2025年11月14日にヒルトン東京お台場で開催されました。主な内容は以下の通りです。
開会の辞
一般財団法人住友病院 名誉院長である松澤佑次氏が登壇しました。

松澤氏は、「噛むこと」が全身の健康に与える影響を科学的に解明するため、医学、歯学、栄養学など多分野の専門家が結集して研究会が発足した経緯を説明しました。口腔機能の衰えを示す「オーラルフレイル」という言葉が広く認知されるようになったと実感しており、高齢者医療を取り巻く厳しい状況において、「噛むこと」によるオーラルフレイルの予防が、メタボ対策に続く「第2の医療変革」になり得ると確信していると述べました。本研究会の活動が国民の健康寿命延伸と医療課題解決に向けた大きな動きとなることに期待が寄せられています。
基調講演「オーラルフレイル:人生100年時代の『口づくり』の視点」
東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科部長・研究所研究部長の平野浩彦氏が講演を行いました。

平野氏は、日本における平均寿命と健康寿命の約10年の乖離に触れ、要介護の原因として「フレイル(虚弱)」が重要視されていることを指摘しました。フレイルは早期介入で改善可能であり、これからは生活機能を維持し健康寿命を延ばすアプローチが不可欠だと強調しました。また、歯の本数だけでは機能が保てない現状を述べ、「オーラルフレイル」という滑舌低下やむせなどの些細な衰えが、放置すると低栄養や筋肉減少を招き、要介護へと進行する「ドミノ倒し」の連鎖を断つため、早期発見と適切な管理による「口づくり」が欠かせないと説明しました。
講演1「咀嚼の健康への影響 ~栄養状態や認知機能を中心に~」
東京科学大学 医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 准教授の駒ヶ嶺友梨子氏が登壇しました。

駒ヶ嶺氏は、残存歯数の減少に加え、「臼歯部の咬合支持」の喪失が認知症の重大なリスク因子であることを示しました。咬合支持を喪失した群ではアルツハイマー型認知症リスクが有意に上昇し、その背景には脳血流減少や栄養の偏り、社会的孤立などの多面的なメカニズムが介在していると考えられています。歯の喪失が認知機能に及ぼす影響には性差があり、男性では社会的要因、女性では栄養学的要因が主な媒介因子となると分析しました。歯科医療は「噛むこと」の回復を通じ、栄養摂取、社会性の維持、脳への刺激という多角的アプローチで健康寿命の延伸に貢献できると述べました。
講演2「咀嚼計測と制御に向けた挑戦 ~フード3Dプリンタによる食感創成とビッグデータによる食感分析の応用~」
東京電機大学 理工学部 生物物理化学研究室 教授の武政誠氏が講演を行いました。

武政氏は、食感が食品のおいしさを決定づける重要な要素であると述べ、従来の食感分析の課題を指摘しました。ロボットアームを用いた自動計測システムを構築し、数万回の圧縮データをディープラーニングで解析することで、高精度な食感分析システムを確立したと紹介しました。また、iPhoneのTrueDepthカメラで顔の立体形状変化を追跡するアプリを開発し、顔の動きだけで噛み癖や食品の種類、さらには主観的な食感まで予測可能になったことを示しました。
さらに、食感の「制御」に向けたフード3Dプリンタを用いた研究にも言及しました。食感は材料だけでなく「構造」に大きく依存するため、内部構造を設計・積層することで従来の調理法では不可能な食感を創出できると説明しました。ビッグデータとAIによる「咀嚼の可視化」と、3Dプリンタによる「食感のデザイン」の融合は、個人の咀嚼機能に合わせた食の提供を可能にし、健康長寿社会における新たな食のソリューションとなることが期待されています。
トークセッション「大規模高齢者研究による成果と今後の展望」
東京大学、東京都健康長寿医療センター研究所、順天堂大学、株式会社ロッテから計4名のパネリストが登壇し、大規模高齢者調査研究の紹介や意見交換が行われました。

大規模コホート研究である「柏スタディ」では、オーラルフレイルの人は将来のフレイルや要介護、死亡のリスクが2倍以上になることが明らかになりました。「お達者健診」では、フレイル予防には食品摂取の多様性が大切であり、その維持には「咀嚼機能」が深く関わっていることが示されました。「文京ヘルススタディ」では、MRIで測定した「咬筋」の量が少ないとサルコペニアのリスクが高まることや、噛む力が強いほど認知機能が維持されやすいという結果が出ており、口の機能を保つことが体や脳の健康を守る鍵であることが示されました。
愛知県豊田市で行われた「ガムを使用した口腔健康プログラム」の実証実験では、オーラルフレイルおよびフレイル改善効果が確認され、全国の高齢者全員が参加したと仮定すると、約1.2兆円の介護費抑制効果があると試算されました。社会実装に向けて、このような社会的「インパクト」を可視化することの重要性が語られました。
閉会の辞
株式会社ロッテ 代表取締役 社長執行役員の中島英樹氏が閉会の辞を述べました。

中島氏は、噛むことの大切さが確実に広がりを見せていると実感しており、自治体・歯科医師会との連携協定が23件に達したことを紹介しました。これらの協定は口腔改善だけでなく、スポーツ、介護、災害対策などを含む「包括連携協定」が増加していると述べました。今後ロッテでは、事業構成比の約2割を占める海外展開をさらに拡大させ、本研究会の研究成果を活動の骨子としつつ、「KAMUKOTO」をグローバルの共通語にし、ガムをはじめとするチューイング商品の普及を通じて、ロッテのパーパスである「独創的なアイデアとこころ動かす体験で人と人をつなぎ、しあわせな未来をつくる」を果たしていく所存であると語りました。
研究会の様子と参加者



詳細情報と動画視聴について
「噛むこと健康研究会」は、医学、歯学、栄養学、スポーツ科学など多分野の研究者が集まり、「噛むこと」を通じて健康寿命の延伸および生活の質の改善に貢献するため、2018年に発足しました。エビデンスに基づいた情報発信を通じて、「噛むこと」の健康効果を社会に広く伝えることを目的として活動しています。
本研究会の活動や、今回の年会の講演動画は、以下のウェブサイトで詳細を確認できます。
https://www.kamukotokenko.jp/
株式会社ロッテの企業情報はこちらです。
https://www.lotte.co.jp/
公開された動画をぜひご覧いただき、日々の健やかな生活に「噛むこと」を取り入れるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

