一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構は2026年1月29日、『宇宙ビジネス総覧白書2026年版』の発刊とその概要を発表しました。この白書は、現在の宇宙ビジネスが「重要な過渡期」にあると指摘し、次の3年から5年間の戦略を読み解くための羅針盤として位置づけられています。
2024年には世界の宇宙経済規模が約6,130億ドルに達し、商業セクターがその78%を占める中、市場は成熟化と再編の局面を迎えています。この白書は、単なる市場規模の拡大にとどまらず、宇宙産業の根本的な「構造転換」のシナリオを描き出しています。

3つの歴史的転換点
現在、宇宙ビジネスでは以下の3つの歴史的な転換点が同時に進行していると分析されています。
1. ハードウェア中心からデータ・サービス中心へ
これまで衛星メーカーや打ち上げ企業が中心だった産業構造が、地球観測データ解析、軌道上サービス、AIを活用したソリューションへと急速に変化しています。特に、軌道上サービス、GeoAI、SSA/STM(宇宙状況認識・宇宙交通管理)技術といった「データとサービス」の領域は、年平均成長率(CAGR)11.7%を超える高い成長が見込まれています。
2. 米国単極体制から多極化・ブロック化へ
かつて北米が主導していた宇宙産業に、アジア太平洋地域(中国、インド、韓国など)が急速に台頭しています。中国はメガコンステレーションや商業打ち上げで存在感を高め、インドは民間参入を促進。日本は宇宙戦略基金を通じて軌道上サービス企業を育成しています。2030年には、「規範連合型」(アルテミス合意など)と「実務主義型」(多国間STM枠組み重視など)の二つのガバナンス体制が並存する世界が加速する可能性が高いとされています。
3. 規制遅延からガバナンス競争へ
宇宙デブリ、スペーストラフィックマネジメント(STM)、データ共有、軌道資源管理といった課題は、もはや単なる制約ではなく、新たなビジネス機会を生み出す競争領域へと変化しています。規制への先行的な対応が、企業の競争力を大きく左右する時代が到来しています。
この白書では、これらの3つの転換点を、287項目の詳細分析と2,600ページに及ぶボリュームで具体的に解説し、2030年代に向けたシナリオを包括的に提示しています。

戦略的な洞察
白書が提供する最大の価値は、単なる市場規模データだけでなく、「なぜこのような市場構造になっているのか」「今後どう変わるのか」という因果関係を体系的に示唆する点にあります。
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市場規模の背景にある推進要因: 技術コストの劇的な低減、民間企業による革新、衛星需要の多様化が、商業セグメントの成長を支えていると説明されています。
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地政学・安全保障要因: 米国の「宇宙軍拡」や中国の「軍民融合」戦略が、宇宙産業の技術開発や競争構造に与える影響が明確にされています。
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規制・ガバナンス進化がもたらす新ビジネス機会: デブリ削減ガイドラインがデブリ除去サービス市場を、STM国際枠組みがSSA企業・STMサービス企業の成長を促進するなど、規制が新たなビジネスチャンスを生み出すメカニズムが展開されています。
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2030年に向けた複数シナリオ: 1.8兆ドル市場への緩やかな成長(ベースラインシナリオ)、軌道上インフラの急速な普及による高成長シナリオ、デブリ問題の悪化や地政学的対立によるリスクシナリオが提示されています。

各ステークホルダーへの提言
白書では、投資家、起業家、既存企業、政策立案者といった各ステークホルダーに対し、具体的な提言を行っています。
投資家・ファンドマネージャーへの提言
「バックボーン市場」(衛星通信、地球観測・データ解析など)と「フロンティア市場」(軌道上サービス、GeoAI、SSA・STM技術など)の二層投資戦略が推奨されています。また、アジア太平洋地域への地理的ポートフォリオシフトや、政策・規制リスクの動的な評価が重要とされています。
起業家・スタートアップへの提言
メガコンステレーション競争を避け、付加価値の高い「ニッチセグメント」を狙うこと、公的ファンドや政府需要を事業設計の源泉とすること、そして国際展開と複数国の規制対応を早期に構築することが成功の鍵だと提言されています。
既存企業(衛星メーカー・通信事業者等)への提言
事業モデルを「ハードウェア販売」から「データ・サービス・サブスクリプション」へと抜本的に転換すること、M&Aや提携による能力補強、軌道上サービス・SSA技術への早期参入が求められています。
政策立案者・規制当局への提言
「成長加速」と「持続可能性」の両立を目指し、規制遵守が新規ビジネス機会を生むような構造設計の重要性が強調されています。また、公的ファンドの戦略的配分や、国際ルール形成への主導的な参加が提言されています。
利用シーン
本白書は、以下のような多様なシーンでの意思決定を支援すると考えられます。
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戦略的投資判断の支援: ベンチャー・キャピタルやプライベートエクイティが「次のホットセグメント」を発見し、投資機会を評価する。
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事業戦略の再構築: 既存衛星メーカーや通信企業が、下流アプリケーション・データソリューション事業への軸足転換の道筋を明確にする。
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政策・規制対応の高度化: 政策立案者や規制当局が、各国の宇宙政策を比較分析し、国際的なガバナンス検討に活用する。
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長期市場展望・シナリオプランニング: 経営企画部門やリサーチチームが、2030年代の市場規模予測に基づき、長期的なポートフォリオ再編計画を立案する。
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技術開発・R&D優先順位の決定: 宇宙機関や大学研究室が、民間ニーズとの接点が高い研究領域への予算配分を戦略的に決定する。
『宇宙ビジネス総覧白書2026年版』は、宇宙ビジネスの「次の3年~5年」を戦略的に読み解くための、必読の羅針盤となるでしょう。
関連リンク
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宇宙ビジネス総覧白書2026年版 製本版
https://www.x-sophia.com/?pid=190324952 -
宇宙ビジネス総覧白書2026年版 PDF版
https://www.x-sophia.com/?pid=190324998
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