元ヘッジファンドマネージャーが和歌山のみかん産業をAIで救う!数億円の設備投資を削減し、廃業危機を乗り越える「頭脳更新モデル」とは?

ビジネス活用

和歌山県は全国有数のみかん産地ですが、その裏側では深刻な課題に直面しています。多くのみかん選果場では、約20〜30年前に導入された設備が老朽化し、限界を迎えています。これらの設備を最新のものに入れ替えるには数億円もの巨額な投資が必要となり、後継者不足や資材高騰に悩む地方の農業現場にとって、これは事実上の「廃業宣告」に等しい状況でした。

みかん畑で笑顔の男性

廃業か、数億円の投資か?「設備の20年問題」への新たな回答

この課題に立ち向かったのが、株式会社TechnologyDockの代表である神山裕介氏です。外資系投資銀行やヘッジファンドで活躍した後、故郷である和歌山に戻った神山氏は、この構造的な問題に直面しました。そこで彼が注目したのは、工場などで機械を自動化する技術(FA:ファクトリーオートメーション)とAI(人工知能)の組み合わせでした。

選果場のコンベアやみかんを運ぶ機械といった「物理的な身体」は、きちんと手入れすればまだ使えるものがほとんどです。問題は、時代遅れになった「頭脳」にあたる制御システムやセンサーでした。

「身体」はそのままで「頭脳」だけを最先端に

TechnologyDockが開発した「頭脳更新モデル」は、既存の機械をそのまま使いながら、頭脳部分だけを最新のAI画像処理技術と手頃な価格のコンピューターに置き換える画期的な方法です。これにより、これまでの大手メーカー製の高価な専用機に頼らず、市販のWebカメラやパソコンを使ってシステムを自社で作り上げることで、設備を新しくする費用を大幅に削減することに成功しました。これにより、資金が少ない中小規模の組合や農家でも、みかんを選び分ける精度を上げながら、事業を続けていくことができるようになりました。

このプロジェクトの大きな特徴は、ただ費用を安くするだけではありません。最新のAIを導入することで、長年の経験を持つ熟練農家の方々の目利きを超えるレベルで、みかんを選び分けることを目指しています。これまでは難しかった小さな傷や病気なども、AIが画像を分析する技術(ディープラーニング)を使って、高い精度で見つけ出すことが可能になります。さらに、集まったデータを分析することで、みかんを収穫する最適な時期を見つけたり、品質管理をさらに良くしたりするなど、データに基づいた農業経営への転換も支援します。

AIは「対話相手」から「システムの一部品」へ

最近のAIの使われ方は、私たちと会話するAIだけでなく、仕事の道具や機械の中に組み込まれて「システムの一部品」として働くAIへと急速に変化しています。この変化を象徴する動きとして、2025年12月には、AIエージェントを外部システムとつなぐための国際的なルール「MCP(Model Context Protocol)」が、オープンソースの活動を支えるLinux Foundationに寄贈されました。これは、AIを「AIのUSB-C」とも呼ばれ、様々なAIを他のシステムと簡単につなげられるようにするものです。2026年には、AIを「対話相手」としてではなく、「システムの一部品」として組み込むような設計が本格化すると見られています。

TechnologyDockが取り組むみかん選果場のプロジェクトは、まさにこの新しいAI活用の流れを先取りしたものです。2025年末から2026年初めにかけて、みかんが出荷された後の実際のデータを集め終わり、AIを選果の仕組みに組み込んだシステムのテスト段階に入っています。

SAJ40周年特集記事で紹介される地方創生への挑戦

この度、一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ)が40周年を記念して企画した特集記事で、株式会社TechnologyDockの取り組みが詳しく紹介されました。記事では、神山氏がなぜ金融業界の最前線から故郷の課題解決へと転身したのか、そしてこの「頭脳更新モデル」がどのように地域経済の自立に貢献するのかについて、深く語られています。

この取り組みは、単に新しい技術を導入するだけでなく、地域に根付く産業を守り、次の世代へとつなぐ「事業承継」の視点や、グローバルな視点を持つ人材が地方で果たすべき役割にも触れています。TechnologyDockは、この事業を通じて和歌山のみかん産業を守るだけでなく、同じような課題を抱える全国の地方産業に対する解決策のモデルとなることを目指しています。

既存のやり方にとらわれない発想で、地方の課題を技術で解決しようとする株式会社TechnologyDockの挑戦に、これからもぜひご期待ください。

この取り組みに関する詳細はこちらで確認できます。

SAJ40周年特集記事および関連リンクはこちらです。

タイトルとURLをコピーしました