半導体を作る上で欠かせない「レチクル」という部品があります。これは、半導体の回路パターンを基板に転写するための「原版」のようなものです。このレチクルにわずかな傷や汚れ、パターンのズレがあると、最終的な半導体の性能に大きく影響してしまいます。そのため、レチクルが正確に作られているかを厳しくチェックする「検査」と「計測」が非常に重要になります。
LP Informationの最新市場レポート「世界レチクル検査・計測装置市場の成長予測2026~2032」によると、このレチクル検査・計測装置の市場は今後大きく成長すると見られています。

レチクル検査・計測装置とは
半導体の品質管理装置は、大きく分けて「検査装置(インスペクション)」と「計測装置(メトロロジー)」に分類されます。
検査は、半導体製造のあらゆる工程で行われ、ウェーハ表面の傷、異物の付着、パターンのエラーなど、異常がないかを検出します。これには、光を使った光学検査、電子線検査、X線計測など、さまざまな技術があります。現在、主流となっているのは光学検査で、パターンがあるもの、ないもの、そしてレチクル検査が含まれます。
レチクルは、フォトマスクやマスクとも呼ばれ、パターン情報を基板に転写するために使われる原版です。特に、最先端の半導体プロセスで使われる「EUV(極端紫外線)リソグラフィ」用のEUVレチクルは、7nm、5nm、3nm、さらには2nmといった微細な回路を作る上で非常に重要です。レチクル検査・計測装置は、こうした先進的な半導体プロセスの品質を保証するための、まさに「要」となるツールと言えるでしょう。
究極の精度と技術融合が進む産業
レチクル検査・計測装置の産業は、非常に高い精度と高速な処理能力が求められるのが特徴です。1ナノメートルよりも小さな欠陥を見つけ出し、それを瞬時に分析するためには、光学技術、機械技術、そしてAIを使った画像解析やデータ分析といった、さまざまな技術が密接に組み合わされています。
特に、EUVリソグラフィが広まるにつれて、これまでの方法では見つけにくかった欠陥に対応するため、新しい光学設計や高感度のセンサーの開発競争が激しくなっています。また、レチクル自体のコストが高くなっていることや、複雑なパターン露光が増えていることから、検査の効率を高めたり、自動化を進めたりすることも重要な課題です。
この産業は、「超高精度」と「データに基づいた判断」が融合した新しい形へと進化しており、単に装置を売るだけでなく、AIによる分析やクラウドを使った連携など、スマートなものづくりの中心的な役割を担いつつあります。

2031年には44.34億米ドル規模へ成長予測
LP Informationの最新報告によれば、世界のレチクル検査・計測装置市場は、2025年から2031年にかけて年平均成長率(CAGR)10.9%で成長し、2031年には市場規模が44.34億米ドルに達すると予測されています。

この大きな成長の背景には、半導体がますます小さく、高性能になっていることと、EUVリソグラフィに対応する装置への需要が急増していることがあります。特に、5nm以下の最先端プロセスを採用する半導体メーカーでは、レチクルの品質が製品の出来栄えに直接影響するため、検査・計測への投資意欲が高い傾向にあります。
市場の成長を牽引しているのは、北米とアジア太平洋地域です。北米は装置の開発や技術供給の中心であり、アジア太平洋地域では量産拠点での導入が進んでいます。世界中で供給ネットワークが作られ、技術の標準化が進むことで、市場の拡大を支えています。
市場をリードする主要企業
レチクル検査・計測装置の分野は、少数の企業が市場の多くを占める「寡占」の状態にあります。LP Informationの調査データによると、2024年時点でLasertec、KLA、Carl Zeiss AGの3社が、世界の売上シェアの約81.0%を占めています。

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Lasertec:EUVレチクル検査装置の分野で世界的に独占的な地位を確立しています。
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KLA:長年にわたり、光学検査と計測のアルゴリズムにおいて高い技術力を持っています。
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Carl Zeiss AG:光学系の設計や高精度レンズの供給で、他の装置メーカーの開発にも深く関わっています。
これら3社が、実質的に業界全体の技術標準をリードしていると言えるでしょう。新しい企業が参入するのは難しい状況ですが、AI分析モジュールやクラウド連携型の計測プラットフォームといった周辺技術での協力の機会は増えており、今後は装置メーカー間の戦略的な提携も進むと予想されます。
EUV時代とインテリジェント検査の進化
これからのレチクル検査・計測装置市場は、EUV露光技術の本格的な量産拡大とともに、新たな発展期を迎えるでしょう。
EUV対応レチクルの欠陥を見つける精度や光の透過率を測る技術がさらに高度化することが求められる一方で、装置の「賢さ」も進化しています。AIによる自動的な欠陥の分類、リアルタイムでのデータ分析、そしてクラウドを使った品質の監視など、装置は「検査する機械」から「判断するシステム」へと変化しつつあります。
また、環境への負荷を減らしたり、コストを効率化したりすることも業界共通の課題です。省エネ設計や部品の再利用など、持続可能性を意識した技術革新も進むでしょう。半導体製造の最前線を支えるこの装置産業は、ナノメートルレベルの光学技術とAIの知能が組み合わさることで、今後10年間でさらに高い精度と価値を生み出す原動力となるに違いありません。
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