AI(人工知能)の進化は目覚ましく、私たちの生活にさまざまな変化をもたらしています。そんな中、合同会社Nyagsic(ニャグシック)は、まるで人間のように「完璧すぎない」AIキャラクターを生み出すための技術「iMATE Engine(アイメイト・エンジン)」の詳細を発表しました。

この技術は、AIキャラクターが24時間自動で配信できるだけでなく、視聴者がまるで本物の仲間のように感じられるような、愛着のわく体験を目指しています。さらに、このシステムを契約した企業向けに、VTuber(バーチャルユーチューバー)としても使えるLive2Dモデルが無償で提供されるとのことです。
iMATE Engineの公式サイトはこちらです。
https://aituber.nyagsic.com/
「完璧」よりも「人間らしさ」を追求する理由
最近、AIを使ったバーチャルキャラクター、いわゆるAITuberが注目を集めています。しかし、これまでのAIキャラクターは、質問に「正確に」「効率よく」答えることを目指して作られていることがほとんどでした。そのため、長時間にわたって視聴者がキャラクターに親しみを感じ続けるのは難しいという課題がありました。
Nyagsicは、「人間らしさとは、完璧さとは違うところにある」という考え方を持っています。そこで、AIをあえて完璧にしないことで、人が「一緒にいる」と感じられるようなAIキャラクターの基盤「iMATE Engine」を開発しました。
「iMATE」という名前は、「AI(人工知能)」と「Mate(仲間)」を組み合わせた造語です。これは、AIをただ便利な道具として使うだけでなく、まるで友達やパートナーのように一緒に時間を過ごせる存在として捉えたい、という開発の思いが込められています。
iMATE Engineの主な特徴
iMATE Engineには、AIをより人間らしく感じさせるための、さまざまな工夫が凝らされています。
1. 8つの「人間らしさシステム」
iMATE Engineの中心には、AIをあえて完璧にしないための8つのシステムが組み込まれています。

-
言い淀み(Hesitation):「えっと…」「なんだっけ…」といった、人間が話すときに自然に出てくる言葉を再現し、考えながら話しているようなリアルさを演出します。
-
気分変動(Mood Fluctuation):時間帯や楽しい出来事に応じて、AIの気分が変化します。例えば、朝は少しテンションが低く、楽しい話題が続くと機嫌が良くなる、といった具合です。
-
沈黙許容(Silence Tolerance):すべてのコメントに必ず反応するのではなく、興味のない話題はあえて触れなかったり、何も言わない時間を持ったりします。これにより、より自然な会話が生まれます。
-
不完全記憶(Imperfect Memory):記憶が完璧ではなく、過去の出来事を少し間違えたり、時系列があいまいになったりします。この不完全さが、「本当に覚えてくれようとしているんだな」という親近感につながります。
-
話題脱線(Topic Drift):話している途中で、関連する別の話題にふと切り替えることがあります。これにより、会話に生き生きとした感じが加わります。
-
強い好き嫌い(Strong Preferences):好きなものには熱心に話し、嫌いなものには態度が変わるなど、はっきりとした個性を持っています。
-
感情応答変化(Emotion Response Modifier):同じ質問でも、そのときの感情によって答え方が変わります。
-
自発的発言(Spontaneous Utterance):誰かに話しかけられていなくても、ふと思ったことを口にする、能動的な発言も行います。
これらの8つのシステムが一緒に動くことで、iMATEは単なる「プログラムされたキャラクター」ではなく、まるで「そこに本当にいる存在」のように感じられるようになります。
2. 多層感情システム
多くのAIキャラクターが感情を「見せるための演出」として扱うのに対し、iMATE Engineでは感情をAIの「内側の状態」として設計しています。この感情は、以下のようにいくつかの段階に分かれています。
-
瞬間感情:コメントにすぐ反応する喜び、怒り、悲しみ、楽しさなど。
-
残留感情:感情が少しずつ薄れていく中で、その後の発言にも余韻が残ること。
-
長期ムード:一日を通しての気分の傾向で、これまでの体験が影響します。
-
感情履歴:過去の感情の変化を記録し、キャラクターの「経験」として積み重ねていきます。

この感情は、AIキャラクターの表情(Live2DやVRMモデルの動き)、声のトーン(話す速さ、声の高さ、抑揚)、言葉の選び方、そして行動のすべてに一貫して影響を与えます。
3. さまざまなAIや配信サービスに対応
iMATE Engineは、特定のAIサービスだけに縛られないように作られています。そのため、用途に合わせて柔軟にAIの構成を変えることができます。
-
LLM(大規模言語モデル):OpenAIのGPTシリーズ(GPT-4o, GPT-5など)、Claude 3.5 Sonnet、Gemini Proなど、14種類のAIモデルに対応しています。
-
TTS(テキスト読み上げ):VOICEVOX、Azure Speech、BertVits2、ElevenLabsの4種類の音声合成サービスに対応しており、これらすべてが感情に合わせて声の表現を変えることができます。
-
配信プラットフォーム:YouTube Live、Twitch、TikTok Liveの3つの主要な配信サービスに対応し、同時に複数のプラットフォームで配信することも可能です。
4. 24時間365日、人がいなくても動く
iMATE Engineは、人が操作しなくても長時間ずっと動き続けることを前提に設計されています。
-
自動復旧システム:インターネットの接続が切れたり、AIサービスに問題が起きたりしても、自動でそれを検知して元に戻します。
-
配信フェーズ管理:時間帯によって、キャラクターの元気度や話し方が自動的に変わります。例えば、朝は少し眠そうな話し方、昼は活発に、夜は落ち着いた雰囲気、そして深夜には自動でお休みモードに入る、といった具合です。
5. 視聴者のことを覚えている「永続的会話メモリ」
視聴者一人ひとりの会話の履歴を最大200件までずっと覚えておくことができます。そのため、前回の会話の内容を覚えていたり、親しくなった視聴者をニックネームで呼んだりするなど、まるで本当に親しい関係のように自然な会話ができます。
6. 見たものに反応する「マルチモーダル認識」
Vision APIという技術を使って、カメラに映る映像やゲーム画面などをリアルタイムでAIが認識できます。これにより、画面に映るものを見て会話をしたり、ゲーム実況中にゲームの内容に合わせて反応したりするなど、視覚情報に基づいた会話や行動が自動で生まれます。
7. 心の中が見える「思考吹き出しシステム」
画面上に、iMATEが心の中で考えていることが吹き出しで表示されるシステムです。口に出す言葉と心の中の言葉が違うこともあるため、キャラクターにさらに深みと面白さが加わります。
8. 配信の「台本」を自由にデザインできる「Adaptive Script Engine」
配信の構成を、まるでブロックを組み合わせるように事前にデザインできます。この台本はあくまで「骨格」のようなもので、視聴者の反応に合わせてiMATEが自由に振る舞います。配信全体の盛り上がりや落ち着きを自動で調整する機能も搭載されています。
9. 安心して使える「セキュリティ・コンプライアンス」
企業が安心して利用できるよう、さまざまなセキュリティ機能が標準で備わっています。例えば、誰が使っているかを確認する仕組み、企業ごとに情報が分かれている環境、不適切な言葉をブロックする機能、AIへの指示(プロンプト)が外部に漏れないようにする対策、インターネット経由で遠隔から管理できる機能などがあります。
他のAIツールとの違い
世の中には無料で使えるAIツール(OSS)もありますが、iMATE Engineは特に「ずっと安定して動き続けること」に力を入れています。24時間配信では、AIサービスの問題やメモリの使いすぎなど、さまざまなトラブルが起こりがちです。iMATE Engineには、そうした異常を自動で検知して元に戻す仕組みがあり、人の手を借りずに配信を続けられるよう設計されています。


VTuberにも使えるLive2Dモデルを無料で提供
iMATE Engine for Businessを契約した企業には、VTuberとしても利用できるLive2Dモデルの制作が無償で提供されます。
このモデル制作には、Nyagsicが独自に開発した「Live2D Splitter AI」という技術が使われています。このAIは、プロのモデラーが手作業でパーツ分けした800体以上のLive2Dモデルを学習しており、1枚のイラストから髪、目、口、アクセサリーなど40種類以上のパーツを自動で認識し、数分で分割できます。これまでの手作業では10〜20時間かかっていた作業が、劇的に短縮されます。

制作されるLive2Dモデルは、VTube Studioやnizima LIVE、FaceRigといった主要なVTuber配信ソフトでそのまま利用可能です。もちろん、iMATE Engineでの配信にも活用できます。
その他のサービスと今後の展望
Nyagsicは、iMATE Engineの24時間配信に最適なMac miniのレンタルサービスも提供しており、専用PCの準備が難しい企業でもすぐに配信を始められるようサポートしています。
また、iMATE Engineを一緒に広めていく販売パートナー、Live2Dモデルやイラストを制作するパートナー、配信環境の構築やカスタマイズを行う技術パートナー、AIキャラクターを使った企画やプロモーションを行うコンテンツパートナーを募集しています。

料金プランは、Standard、Pro、Enterpriseの3種類が用意されています。プランによって利用できるデバイス数やAIモデル、サポート内容が異なります。

iMATE Engineはこれからも進化を続け、今後は「嬉しいけど少し寂しい」といった複雑な感情の表現、キャラクターと視聴者の関係性が初対面から親友へと段階的に成長する機能、特定のキーワードや感情に合わせた自動ジェスチャー機能などが予定されています。さらに、iMATEたちが住む仮想経済都市「LIVRA」というAIキャラクターワールドも開発中とのことです。

「完璧すぎない」からこそ、人の心に深く響くAIキャラクターの登場は、これからのバーチャル空間でのコミュニケーションに新たな可能性を広げてくれることでしょう。
最新情報はX(Twitter)でも発信されています。
https://twitter.com/kukoinari
