NTTドコモとNTTは、遠くにあるAIの計算に使う特別な装置(GPUリソース)と5Gネットワークを組み合わせた「In-Network Computing(INC)」という新しい技術を使って、AIによる映像解析をとても速く(低遅延で)行う実証実験に成功しました。
これは、これから来る「6G」という次の世代の通信技術の時代に、AIを搭載したロボットがその能力を最大限に発揮できるネットワークの実現に向けて、大きな一歩となります。
今回の発表のポイント
今回の実証実験では、次のような重要な成果が得られました。
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ネットワークの中に「INCエッジ」と呼ばれる特別な機能を配置し、分散して置かれたGPUリソースと5Gネットワークを「IOWN APN」という高速な光ネットワークでつなげました。これにより、通信をコントロールするだけでなく、AIの計算処理もネットワーク側で制御する技術を確立しました。
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この技術を使った実証実験を行い、遠くにあるGPUリソースをINCで活用することで、6G時代に遠隔でロボットを操作するのに十分な「低遅延」(処理の遅れが少ないこと)を実現できる見通しが得られました。
In-Network Computing(INC)とは?
6G時代には、まるでその場にいるかのような体験ができるXR(仮想現実や拡張現実の技術)や、AIやロボットを使った新しいサービスが広がると言われています。これらのサービスでは、たくさんのデータを速く送ったり、膨大なデータを処理したりすることが求められます。
例えば、ロボットが自分で動く場合、周りの映像やセンサーの情報をAIで分析し、「ここに障害物があるから、この道に進もう」といった判断をすぐにロボットに伝えなければなりません。特に、小型のロボットやシンプルなウェアラブル端末でAIを使いたい場合、端末だけでは処理しきれないため、ネットワーク側で高速にデータを処理する能力が必要になります。
これまでのネットワークは、主にデータの「転送」を担当し、AIの計算処理などはアプリケーションやサーバー側で行われるのが一般的でした。そのため、AIの計算に使うGPUリソースをどこに置くかや、データの通信にかかる時間が、サービスの品質に大きく影響していました。
「In-Network Computing(INC)」は、このような課題を解決するためにNTTドコモとNTTが研究開発を進めている技術です。INCでは、ネットワークの中にGPUなどのさまざまな計算リソースが分散して置かれ、通信だけでなく、AIなどのサービスに必要な計算処理もネットワークがコントロールします。これにより、高性能なサービスを安定して提供することを目指しています。
実証実験の概要
今回の実証実験では、ネットワーク内に分散して置かれた遠隔のGPUリソースと5Gネットワークを、INCエッジとIOWN APNを使ってつなぎ、5Gネットワークに接続された端末から送られてきた映像データをAIが解析するテストを行いました。

図1. 実証実験のシステム構成
通常、AIの計算処理を複数のリソースに分けて行う場合、GPUリソース間の通信の遅れが全体の処理時間に大きく影響するため、同じ場所や近い場所にあるGPUリソースを使うことが前提でした。しかし、今回の実証実験では、INCエッジとIOWN APNを活用し、通信だけでなくAIの計算処理もネットワーク側からコントロールすることで、地理的に離れた遠隔のGPUリソースを使った場合でも、高い計算性能を維持できることを確認しました。
具体的には、INCエッジにIOWN APNとモバイルネットワークをつなぐ機能に加え、AIの計算処理を前段階の処理と実際の計算部分に分け、前段階の処理が終わったデータを遠隔のGPUリソースへ速く送る仕組みをネットワーク機能として組み込みました。また、映像データの転送には、クラウド上に作った5Gコアネットワークの「優先制御機能」を使い、INCエッジと組み合わせることで、5GネットワークとIOWN APNを活かした高速で遅れの少ないAI映像解析を実現しました。
この実験の結果、通信とAI映像解析を合わせた全体の処理の遅れは、人間とロボットが一緒に動く場合に求められる遅れの範囲内であることを確認し、6G時代における遠隔ロボット制御に十分な低遅延を実現できる見通しが得られました。
各社の役割
今回の実証実験では、NTTドコモとNTTがそれぞれ以下の役割を担いました。
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NTTドコモ
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実証実験全体の計画を立て、管理しました。
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5Gの商用環境(コアネットワークや無線基地局など)と、その運用に関する知識を提供しました。
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IOWN APNの設計を検討し、構築しました。
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実現するための方法やネットワークの構成を設計しました。
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NTT
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INCの基盤となる技術を提供しました。
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5GコアネットワークとINCをIOWN APNでつなぎ、分散してAIの計算を行うためのエッジ機能「INCエッジ」を提供しました。
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実現するための方法やネットワークの構成を設計しました。
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今後の展開
今回の実証実験で得られた成果は、6G時代のAIやロボットが使うデータの転送や処理にも応用できると期待されています。
NTTドコモとNTTはこれからも、6Gネットワークの重要な技術として、端末の機能をシンプルにしながらも、通信とデータ処理をまとめて提供するINC技術の研究開発と実証、そして国際的な標準化を進めていきます。これにより、6G時代にAIやロボットがその価値を最大限に発揮できるネットワークの実現を目指していきます。
関連情報
今回の発表に関連する過去の報道発表は以下の通りです。
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2025年3月3日「6G時代の高機能サービスの利用に向け、ネットワークとサービスの連携によるコンピューティングサービスのオンデマンド一括制御の実証に成功 -In-Network Computingによる6G時代のAI活用に向けて前進-」
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2026年3月2日「国内で初めてAWS上に構築した5Gコアの商用サービス展開を開始するとともに、世界で初めてのAIを用いたコアネットワークの自動構築に成功」
なお、今回の成果は、2026年3月2日から5日にスペイン・バルセロナで開催されるGSMA主催「Mobile World Congress Barcelona 2026」のNTTグループブースにて展示される予定です。

