中小企業のDX推進を阻む壁
近年、日本の多くの中小企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要視されています。しかし、ERP(統合基幹業務システム)の導入には高額な費用や専門的なIT人材が必要となるため、導入が進みにくいという現状があります。
また、B2C(企業から消費者へ)の分野ではEC(電子商取引)の進化により、取引データの標準化や自動化が進み、業務効率が大きく向上しています。一方で、B2B(企業から企業へ)の分野、特に中小企業では、受発注や在庫、需給管理といった業務がバラバラに行われ、企業間の取引が十分にデジタル化されていないという課題がありました。
年間6,000万出荷の実績から生まれた「伊藤モデル」
こうした課題を解決するため、株式会社コマースロボティクスは、EC理論とSCM(サプライチェーンマネジメント:商品の供給から消費までの一連の流れを最適化する考え方)理論を統合した新しいB2B取引基盤モデルに関する研究論文「EC・SCM理論に基づく中小企業向けERP低コスト構築モデルに関する研究 ― ERP中心思考からEC統合基盤への構造転換 ―(全52ページ)」を発表しました。
この研究で提案されているのが「伊藤モデル」です。このモデルは、実際に年間約6,000万件もの出荷を処理するEC物流現場のシステムを基盤としているため、理論だけでなく、実際の運用実績に基づいている点が大きな特徴です。

「伊藤モデル」の具体的な仕組み
「伊藤モデル」は、企業間取引のデジタル化とサプライチェーンの最適化を同時に実現するために、以下の3つのシステム構造を設計しています。
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ECベースSCM基盤
OMS(受注管理システム)からWMS(倉庫管理システム)、そしてEOS(電子発注システム)へと連携し、在庫全体を最適化します。
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コンパクト設計EOS
毎日、需要を予測し、在庫日数を計算。さまざまな発注方法に基づいて、適切な発注量を算出します。
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電子見積連動型のB2Bカート(考案)
取引先と合意した電子見積書の単価を参照して、発注できるB2Bカートシステムです。カートからの発注後には、注文書PDFと発注データが送信されます。
これらの三層構造により、「受発注データ」「在庫データ」「需給予測データ」を一元的に管理できるようになります。さらに、AIエージェント(複数の業務を自律的に処理する仕組み)を統合することで、対話形式で業務を支援したり、意思決定をサポートしたりする、次世代のDXモデルも提示されています。
研究の主なポイント
この研究では、以下の3つの重要なポイントが挙げられています。
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ERP中心DXの構造的限界を指摘: 従来のERPは企業内の資源管理が中心で、中小企業のDXの進み具合とは合わない点があることを示しています。
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EC×SCM統合による新しいB2B基盤モデル: EC理論で取引を標準化し、SCM理論で需給を最適化する新しい企業システムモデル「伊藤モデル」を提案しています。
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AIエージェントによる次世代DX: AIを単なる操作支援ではなく、業務を実際に進める主体として位置づけ、対話形式で使える新しい基幹システムモデルを提示しています。
今後の展望
「伊藤モデル」は、これまでのERPのように企業内の資源管理に重点を置くのではなく、企業間の取引をスタート地点としたデジタル基盤として設計されています。今後は、「B2B取引の電子化」「サプライチェーンの最適化」「AIを使ったデータ駆動型経営」を実現する企業システムとして、さらなる研究と実証が進められていくことでしょう。
本研究の詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。
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論文PDFダウンロードページ: https://eerp.jp
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コマースロボサービスサイト: https://www.commerce-robo.com
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Note: https://note.com/eerp

