傷ついても自分で治る「スマートマテリアル」とは?
もし、道路や建物のひび割れが自然に治ったり、車のタイヤがパンクしても勝手に修復されたりしたら、私たちの生活は大きく変わるでしょう。このような夢のような技術を可能にするのが、「自己修復材料(Self-Healing Materials)」、別名「スマートマテリアル」です。
一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構(INGS)は、2026年3月16日に、この自己修復材料に関する包括的なレポート『自己修復マテリアル・エコシステム総覧白書2026年版』を発刊し、その概要を発表しました。

自己修復材料が拓く未来の市場
この白書は、自己修復材料の技術が、建設・インフラ、自動車・モビリティ、医療・バイオ、航空宇宙・防衛、エレクトロニクス、エネルギー、そしてELM(エンジニアド・リビング・マテリアル)という7つの主要な産業分野でどのように発展しているかを詳しく分析しています。
世界市場規模は、2025年時点で約27.6億米ドル(日本円で約4,000億円以上)と推定されており、2030年には最大59.9億米ドル(約9,000億円以上)にまで拡大すると予測されています。年平均成長率は16.78%と、非常に高い成長が見込まれる分野です。

どのような分野で活用される?
白書では、自己修復材料が具体的にどのような場面で役立つかを紹介しています。
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建設・インフラ・土木分野:ひび割れを自分で治すコンクリート(マイクロカプセル型やバイオベース型)や、微生物の力を借りてセメントを作る技術(MICP・ELM)などが注目されています。これにより、道路や橋、建物などのメンテナンスコストを大幅に削減できると期待されます。
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自動車・モビリティ・インフラメンテナンス分野:パンクしても自動で塞がるタイヤや、誘導加熱でひび割れを修復するアスファルト、自己修復機能を持つFRP(強化プラスチック)などが開発されています。これらはEV(電気自動車)の軽量化や自動運転車の安全性向上にも貢献すると考えられます。
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医療・バイオテクノロジー分野:体内で薬を必要な場所に届けるDDS(薬物デリバリーシステム)や、人工臓器、バイオプリンティング技術に、自己修復性を持つハイドロゲルやポリマーが応用されています。生体適合性の高い材料は、より安全な医療デバイスの開発につながります。
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エレクトロニクス・ウェアラブル分野:電子皮膚(E-skin)や曲がる電子機器、スマートテキスタイル(賢い布)に自己修復材料が使われています。例えば、傷ついても自分で治る電子回路やディスプレイなどが実現すれば、製品の寿命が延び、より柔軟なデザインが可能になります。
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デジタル・AI・スマートシステム融合分野:AI(人工知能)を使った材料設計(AIマテリアルズインフォマティクス)や、現実世界のインフラをデジタル空間で再現する「デジタルツイン」と自己修復材料を組み合わせることで、故障を予測し、自動で修復するシステム(Self-Healing Digital Twin: SHDT)の実現も期待されています。

今後のアクションプランと展望
白書では、自己修復材料の技術を社会に広めるための具体的な戦略も提案しています。
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ELM・バイオセメント分野への早期投資:特にELM(エンジニアド・リビング・マテリアル)分野は高い成長が見込まれており、スタートアップ企業への投資や政府の研究プログラムへの参加が推奨されています。
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自己修復コンクリート・建材の標準化:製造コストの削減と、量産化に向けた技術ロードマップの確立が重要です。
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デジタルツインと自己修復材料の統合:IoTセンサーやAIを組み合わせた、自動で修復するインフラシステムの構築を目指します。
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サーキュラーエコノミー指向ビトリマー材料の商用化:リサイクル可能で自己修復性も持つ熱硬化性樹脂「ビトリマー」は、環境規制やESG投資の観点からも重要です。AIによる材料設計で開発を加速させることが期待されます。
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自己修復E-skin・柔軟エレクトロニクスの展開:医療用ウェアラブルや義肢、産業用ウェアラブルなど、様々な分野での応用が見込まれています。高い強度を持つ自己修復ポリマーや、短時間で修復するE-skinなどの先端技術を取り入れ、製品化を進めることが提言されています。
誰が読むべき白書か?
この白書は、化学・高分子・複合材料メーカーの研究開発担当者、建設・インフラ企業の技術企画担当者、自動車・タイヤメーカーのイノベーション担当者、医療機器・製薬企業の研究開発リーダー、エレクトロニクス・ウェアラブルメーカーの製品開発担当者、そして投資家や政策立案者など、自己修復材料の未来に関心を持つ幅広い人々にとって価値ある情報を提供するものです。
関連情報
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