ユニバーサルロボットとScale AI、AIロボットが人の動きを学ぶシステム「UR AI Trainer」を発表

機械学習・深層学習

AIロボットが人の動きを学ぶ新時代へ:ユニバーサルロボットとScale AIが「UR AI Trainer」を発表

協働ロボットのパイオニアであるユニバーサルロボットは、AIデータプラットフォームを提供するScale AIと共同で、新たなAIトレーニングシステム「UR AI Trainer」を発表しました。このシステムは、ロボットが人の動きを模倣して学習する「模倣学習」を加速させ、AIモデルの学習から工場での実運用までの道のりを大きく短縮することを目指しています。

展示会で協働ロボットアームを操作する男性

「ラボから工場へ」の壁を乗り越える

これまで、AIロボットの学習では、研究用のロボットで集められたデータが生産現場には合わなかったり、視覚情報だけに頼りがちで、繊細な作業や物を触る作業が難しかったりといった課題がありました。

ユニバーサルロボットのAIロボティクス製品担当バイスプレジデントであるAnders Beck氏は、この課題に対し「UR AI Trainer」が直接応えると述べています。このシステムは、ユニバーサルロボット独自の「ダイレクトトルク制御」と「力覚フィードバック」という技術を活用します。これにより、ロボットが物とどのように触れ合うかを細かく制御できるようになり、高品質なデータを集めてAIモデルを学習させることができます。すでに10万台以上導入されているユニバーサルロボットのハードウェアをそのままAI学習に使えるのは大きな強みです。

人の動きをロボットが学ぶ「リーダー・フォロワー構成」

「UR AI Trainer」では、「リーダー・フォロワー構成」という方法でロボットに作業を教えます。作業者が“リーダー”となるロボットを動かすと、もう一台の“フォロワー”ロボットがその動きをリアルタイムで真似て動きます。このとき、ロボットの動き、力のかかり方、そしてカメラで捉えた映像といった様々な種類のデータが同時に記録されます。これらのデータは、AIが言葉と映像、動作を結びつけて学習する「Vision-Language-Action(VLA)モデル」を作るために役立ちます。

このシステムは、ユニバーサルロボットの「UR AI Accelerator」プラットフォーム上で動き、Scale AIのソフトウェアと連携しています。これにより、工場で動いているロボットからたくさんのデータを継続的に集め、AIモデルをどんどん良くしていく仕組みが作られます。

Scale AIのPhysical AI部門ゼネラルマネージャーであるBen Levin氏は、ユニバーサルロボットの産業用ロボットが世界中で使われていることが、データ収集とAIの導入に理想的な基盤だと強調しています。この協力によって、AIモデルの学習、導入、改善を素早く行えるデータ基盤ができたとのことです。

さらに、両社は年内に、ユニバーサルロボットで集められた産業用の大規模なデータセットを公開する予定です。

GTCでの実演と未来への展望

カリフォルニア州サンノゼで開催されたGTC 2026では、「UR AI Trainer」の実演が行われました。来場者は、2台のUR3eロボットを「リーダー」として操作し、触覚のフィードバックを受けながら、2台のUR7eロボットを「フォロワー」として動かす体験をしました。スマートフォンのパッケージング作業を通じて、模倣学習やVLA学習のためのデータがどのように取得されるかを実際に体験できます。取得されたデータはScale AIのプラットフォームにリアルタイムで記録され、すぐに再生することも可能でした。

また、AIモデルのトレーニングデータ取得プロセスは、仮想空間でも紹介されました。NVIDIAの「Omniverse」と「Isaac Sim」上に作られた環境では、2台のHaply Inverse3デバイスを使って、まるで本物のように物理的な動きを再現するシミュレーションを体験できました。

男性がモニターに表示されたロボットアームの3Dシミュレーションを操作している様子

ユニバーサルロボットは、NVIDIAの「Physical AI Data Factory Blueprint」の活用も検討しており、AIが学習するためのデータを自動でたくさん作り出すことを目指しています。

NVIDIAのロボティクスおよびエッジAIエコシステム責任者であるAmit Goel氏は、AIが認識し、判断し、学習できるロボットへの転換が不可欠だと述べています。ユニバーサルロボットはNVIDIA Isaacのシミュレーション基盤を使って、高品質なデータを取得・生成する仕組みを構築しているとのことです。

Generalist AIによる実環境での実証

GTCでは、データ取得のデモに加え、Generalist AIによるロボット基盤モデルの実演も行われました。2台のUR7eロボットがスマートフォンのパッケージング作業を自分たちで実行し、高い器用さや協調した動き、物を触る能力を実際に披露しました。

複数のロボットアームがスマートフォンとパッケージを扱う展示会の様子

このデモは、たくさんの高品質な学習データと最新のAIモデルを組み合わせることで、研究室の中だけでなく、実際の現場でも使えるPhysical AIが実現できることを示しています。

Generalist AIの共同創業者兼CEOであるPete Florence氏は、ユニバーサルロボットの信頼性の高い産業用プラットフォーム上でのデモが、物理世界での常識的な判断を実際の作業能力に変えられることを示していると述べています。これにより、様々な産業でのAIロボットの導入が進むことが期待されます。

ユニバーサルロボットのAnders Beck氏は、AIモデル学習やデータ取得の先進的な企業に自社の技術が採用されていることが、ユニバーサルロボットがPhysical AI分野で選ばれる理由だと語っています。

ユニバーサルロボットのAnders Beck氏は、GTCの「Beyond the Workcell: Scaling Robotics Workflows Across the Factory Floor」というパネルセッションにも登壇しました。

ユニバーサルロボットについて

ユニバーサルロボット(UR)は、協働ロボットの分野で世界をリードする企業です。2008年に世界で初めて商用協働ロボットを発表して以来、使いやすいソフトウェアや様々な製品を通じて、協働ロボットの可能性を広げてきました。また、周辺機器を揃えたUR+エコシステムや、販売代理店、システムインテグレータ、OEMパートナーといったグローバルなネットワークを通じて、自動化導入の課題解決を支援し、誰もが簡単に自動化を実現できる環境を提供しています。

ユニバーサルロボットは現在、米Teradyne Inc.傘下の企業としてデンマークに本社を置き、日本を含む世界20カ国に拠点を展開しています。これまでに世界50カ国以上で10万台を超える協働ロボットを販売しています。詳細についてはwww.universal-robots.com/ja/をご覧ください。

Scale AIについて

Scale AIは、重要な意思決定を支える信頼性の高いAIの実現をミッションとしています。AIモデルを支える高品質なデータを提供し、企業や政府がAIアプリケーションを構築、導入、運用するのを支援しています。2016年に設立され、本社はサンフランシスコにあります。詳細についてはwww.scale.comをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました