生成AIイラスト、どう使われてる?500人調査で見えた意外な活用術と課題

生成AI(Generative AI)

近年、私たちの身の回りで「生成AI」という言葉を耳にする機会が増えました。特に、画像やイラストを自動で作ってくれる「生成AIイラスト」は、SNSの投稿から広告まで、さまざまな場所で目にするようになっています。

しかし、実際にどれくらいの人が、どのような目的で生成AIイラストを使っているのでしょうか?また、使ってみて「良かったこと」や「困ったこと」はあるのでしょうか?

オンラインイラスト教室を運営するアタムアカデミーが、生成AIイラストを作ったことがある500人を対象にアンケート調査を実施しました。この調査から見えてきた、生成AIイラストのリアルな活用状況と課題を、AI初心者にも分かりやすくご紹介します。

調査の概要

今回の調査は、生成AIイラストを作成した経験のある500人を対象に、インターネットを通じて行われました。調査期間は2025年12月1日から5日までです。

回答者の内訳は女性311人、男性189人。年代は10代が3.0%、20代が22.4%、30代が33.0%、40代が22.4%、50代以上が19.2%となっています。

この調査では、主に以下の点が明らかになりました。

  • 生成AIイラストの活用方法は「アイコン画像の作成」が最も多い

  • 生成AIイラストの使用頻度は「数回程度」が最多

  • 生成AIイラストを使ってみて良かったことの1位は「作業効率が上がった」

  • 生成AIイラストを使ってみて困ったことの1位は「思い通りのイラストが出ない」

生成AIイラストの活用方法ランキング

「生成AIイラストを何に使っていますか?」という質問に対し、最も多かった回答は「アイコン画像の作成(36.8%)」でした。続いて「イラストのアイデア出し(15.6%)」、「仲間内で楽しむ(13.2%)」、「サムネイル画像の作成(10.4%)」という結果になっています。

生成AIイラストの活用方法

1位:アイコン画像の作成

SNSのプロフィール写真やマッチングアプリのアイコンとして生成AIイラストを利用している人が多く見られました。自分の顔写真を公開することに抵抗があるけれど、自分らしい個性は出したい、という時にAIが生成したイラストが役立っているようです。

2位:イラストのアイデア出し

趣味でイラストを描く人や、Web画像の素材を探す人が、自分では思いつかないような構図やモチーフのアイデアをAIから得ていることが分かりました。生成された画像をそのまま使うのではなく、あくまで「たたき台」として活用し、発想の幅を広げています。

3位:仲間内で楽しむ

スキルがなくても手軽にイラストが作れるため、友達と流行のドット風の絵を作って共有したり、好きなアーティストをイラスト化して楽しんだりする声が聞かれました。生成AIが、人と人とのつながりを深めるエンターテインメントツールとしても使われていることが分かります。

4位:サムネイル画像の作成

YouTube動画のサムネイルやブログ記事のサムネイルに生成AIイラストを活用する人も多くいます。目を引くサムネイルを自作するには時間とデザイン力が必要ですが、生成AIを使えば短時間で見栄えの良いビジュアルが手軽に作成できるため、フォロワーやアクセス数の増加にもつながるケースがあるようです。

5位:資料内の挿絵作成

プレゼン資料や企画書に、内容を分かりやすくするための挿絵として生成AIイラストが使われています。文字だけでは伝わりにくい情報を、AIが生成したイメージ画像で補うことで、相手への理解を深める効果が期待できます。

6位:イメージ案のアイデア出し

ファッションのコーディネートやキャラクター設計で迷った際に、ぼんやりとしたイメージをAIに具現化してもらい、参考にしているケースもあります。また、デザインを外部に依頼する際に「こんなイメージで」と具体的に伝えるための参考資料として、生成AIイラストが活用されることもあります。

7位:SNS投稿用画像の作成

SNSでの情報発信において、投稿を目立たせたり分かりやすくしたりするために画像を添付する機会は多いでしょう。毎回凝った画像を用意するのは大変ですが、生成AIを使えば投稿のテーマに合ったイラストを短時間で作成できます。

8位:LINEスタンプの作成

オリジナルのLINEスタンプを作成する際にも生成AIが活用されています。AIの助けを借りることで、LINEスタンプ作りがより手軽になったという声が聞かれました。

生成AIイラストの使用頻度

生成AIイラストを使う頻度については、「数回程度(25.0%)」と答えた人が最も多くなりました。日常的に使っている人ばかりではなく、「必要に応じて(4.0%)」や「月1回未満(4.0%)」といった、たまに使う人も多いようです。

生成AIイラストを使う頻度

一方で、週に1回以上定期的に使っている人は全体の41.8%を占めています。高頻度で活用している人の多くは、SNS投稿、サムネイル作成といった情報発信、資料の挿絵などの仕事関係、そしてアイデア出しなどのイラスト作成に利用していることが分かりました。

生成AIイラストを使ってみて良かったこと

生成AIイラストを使ってみて「良かったこと」の1位は「作業効率が上がった(40.6%)」でした。2位には「思い通りのイラストが作れた(27.8%)」が続いています。

生成AIイラストを使ってみて良かったこと

「自分ではできないことができるようになった」や「新しいアイデアを得られる」といった回答も多く、生成AIが創作活動の幅を広げたり、足りないスキルを補ってくれたりする役割も果たしていることが伺えます。

1位:作業効率が上がった

「イラストのセンスに自信がないけれど、AIなら短時間で高品質な画像を仕上げてくれるので助かる」という声のように、生成AIを使うことで、イラストを探す手間やデザインを考える時間が大幅に減り、全体の作業がスムーズになったと感じる人が多いようです。

2位:思い通りのイラストが作れた

イラスト作成では、頭の中のイメージと完成品にズレが生じやすいものですが、生成AIに細かな指示や修正を重ねることで、満足のいくイラストができたと感じる人も少なくありません。

3位:自分ではできないことができる

「イラストを描く才能がない自分でも、AIを使えば画像が生成できる」というように、イラストスキルがない人でも、イメージしたイラストを手軽に入手できるようになりました。また、イラストスキルがある人でも、苦手な背景や特定のテイストをAIに補ってもらうことで、仕事の幅が広がったという体験談もあります。

4位:新しいアイデアを得られる

人間が考えるアイデアは、どうしても自分の経験や知識に偏りがちです。しかし、生成AIは膨大なデータをもとに、個人では思いつかないような多様なパターンやバリエーションの案を提案してくれます。これにより、新しい構図や彩色、組み合わせを発見し、創作の参考にする人が多くなっています。

5位:単純に楽しい

生成AIイラストは、実用的なツールとしてだけでなく、純粋に「遊び道具」としても楽しまれています。「好きなキャラクターの服を好きな色やデザインに変えて楽しんだ」「想像通りの絵にするのが意外と難しくて、過程が楽しい」といった声から、多くの人が気軽に創作を楽しんでいる様子が伺えます。

生成AIイラストを使ってみて困ったこと

良い点がある一方で、生成AIイラストには課題も存在します。最も困ったことの1位は「思い通りのイラストが出ない(54.8%)」でした。次いで「修正指示が伝わりにくい(18.0%)」、「権利関係に不安がある(13.2%)」という回答が多く見られます。

生成AIイラストを使ってみて困ったこと

1位:思い通りのイラストが出ない

生成AIは、入力された言葉を元に絵を作るため、人間ならすぐに理解できるような微妙なニュアンスが伝わりにくいことがあります。「望んだシチュエーションの絵が出せない」といった声や、AIが英語で学習していることが多いため、日本語での指示が正確に伝わらない可能性も指摘されています。また、AIは文字のイラスト化が苦手なため、「文字化けしたようになる」と困っている人もいました。

2位:修正指示が伝わりにくい

現在の生成AIは、イラストの一部だけを修正するのが得意ではありません。人間のように「ここだけ直す」という作業ができず、イラスト全体を作り直す仕組みになっていることが多いため、意図しない部分まで変わってしまうことがあります。これが「イライラする」原因になるようです。

3位:権利関係に不安がある

AIが生成した画像については、著作権や肖像権、似たような作品があるかどうかの問題など、まだルールや法律の整備が進んでいません。そのため、「SNSに投稿しても大丈夫か」「商用利用できるのか」といった判断が難しく、不安を感じている人が多くいます。AIが学習に使ったデータが不透明なサービスもあるため、知らないうちに誰かの権利を侵害してしまうのではないかと心配する声も聞かれました。

4位:不自然な画像になりやすい

生成AIは、まだ物理法則や人間の体の構造を完全に理解しているわけではありません。そのため、人間の指が多かったり少なかったり、姿勢がおかしかったりするなど、人間が見ればすぐに不自然だと気づくようなミスが発生することがあります。

5位:生成に時間がかかる

無料版の生成AIでは、画像の生成に時間がかかることがあります。画像生成はテキスト生成よりも複雑な処理が必要なため、時間がかかりやすいという特徴があります。また、クラウド型のサービスではサーバーが混雑するとさらに時間がかかったり、無料版だと優先順位が低くなったりすることもあるようです。

まとめ

今回の調査から、生成AIイラストはSNSのアイコン作成のような身近な用途から、ビジネス資料の挿絵、イラストのアイデア出しといった専門的な場面まで、幅広く活用されていることが分かりました。

単に「便利だから」というだけでなく、「創作の楽しさ」や「表現の幅を広げる」ことを求めて使われている側面も明らかになっています。

一方で、著作権や肖像権に対する不安は根強く、「参考としてだけ使い、公にはしない」という慎重な姿勢の人も複数見受けられました。生成AIが持つ可能性を最大限に引き出し、多くの人が安心して使える環境の整備が今後ますます求められるでしょう。

専門家による考察

メディアスケッチ株式会社 代表取締役の伊本貴士氏は、今回のアンケート結果について次のように考察しています。

伊本氏は、生成AIの進化は目覚ましいものの、人間の感性とは異なり、感情を揺さぶる作品作りにおいてはまだ人間には及ばないと考えています。アンケート結果が示すように、アイコンやサムネイル、挿絵といった「質よりも効率が重視される用途」で利用する人が多いのはそのためでしょう。今後は、高いクオリティは人間が、高い効率はAIが担う世界へと向かうと予測しています。

また、イラストのアイデア出しが活用方法の2位になった点に注目し、AIが人間の補助ツールとして使われる場面が増えていることを指摘しています。イラストを描くスキルを持つ人が、AIをアイデア出しや下書き、色塗りの補助に使うことで、効率的かつ高品質な作品を生み出す可能性も示唆されました。

監修者紹介

伊本貴士氏

伊本 貴士
メディアスケッチ株式会社 代表取締役、サイバー大学 客員准教授

NECソフト株式会社(現 NECソリューションイノベータ株式会社)、フューチャーアーキテクト株式会社を経て、メディアスケッチ株式会社を設立。企業のDX支援を主軸として、IoTデバイスやAI開発に関する戦略策定、研究開発支援、人材育成支援などを展開。地方自治体への支援にも積極的に取り組み、地方版IoT推進ラボメンターやふくい産業支援センターDX戦略アドバイザーなどを歴任。デジタル技術の伝道師として、フジテレビの『ホンマでっか!?TV』など、テレビやラジオなどの番組にも出演。全国各地でDX、AI、サイバーセキュリティに関する講演活動を行っています。

著書

Webサイト

アタムアカデミーについて

アタムアカデミーは、「イラスト教育により子供の可能性を最大化する」をビジョンに掲げ、オンラインイラスト教室を運営しています。2020年5月にサービスを開始して以来、小中学生を中心に日本全国から生徒が通う、日本最大級のイラスト教室へと成長しました。

サービスサイト:https://atam-academy.com/online/

株式会社アタム コーポレートサイト:https://atam-academy.com/

データの引用・転載について

本リリースの調査結果や画像をご利用いただく際は、必ず「アタムアカデミー」のURL(https://atam-academy.com/)へのリンク設置をお願いいたします。

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