AIで観光をより豊かに!DNPが長野県で進める地域のDXと新しい働き方

ビジネス活用

大日本印刷株式会社(DNP)は、地域の人々が自治体や企業と協力して、地域のデジタル化(DX)を進める「ワークシェア」という新しい働き方の事業化に取り組んでいます。今回、2026年1月19日から23日にかけて、長野県(長野市・上田市・白馬村)で、訪日観光客向けの多言語観光案内を実現する実証実験が行われます。

この実証実験では、生成AI(人工知能)と多言語自動翻訳の技術を使い、観光サービスの質を高めながら、地域のDXを支える人材を育てることを目指しています。

地域DXを推進するワークシェア・プラットフォームの概念図。企業や自治体が業務を委託し、地域住民がテレワークで柔軟に働くことで、デジタル人材不足の解消と多様な働き方の両立を支援する。

地域の観光課題をAIで解決

観光地では、海外からの観光客が増えるにつれて、様々な言語での案内が不足したり、専門の人材が足りなかったりする課題があります。また、地域に伝わる歴史や文化に関する資料が多言語に対応できていないことも少なくありません。

一般的な翻訳アプリやAIチャットでは、その地域ならではの歴史や文化の背景を考慮した表現が難しく、誤訳や不自然な表現が地域の魅力を十分に伝えられないこともあります。

これらの課題を解決するため、今回の実証実験では、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT:エヌアイシーティー)が進める多言語自動翻訳技術を社会で役立てる取り組みの一環として行われます。DNPが独自に開発した「DNPドキュメント構造化AIサービス(AI-Ready Data)」、NICTの多言語自動翻訳技術、そして株式会社Preferred Networksの生成AI技術「PLaMo(プラモ)」を組み合わせることで、汎用的なAIでは難しい、地域ごとの文脈を理解した自然な多言語案内を実現しようとしています。

地域住民と共にDX人材を育成するワークシェアモデル

DNPは、これまでも地域住民が自治体や企業と業務を分担する「地域のDXを推進するワークシェアモデル」の実績を積んできました。今回の実証実験では、DNPがデータの構造化に関するノウハウや作業ガイドライン、運用支援といった、地域でDXを進めるために必要な基本的なサービスを提供します。これにより、住民が地域のデジタル化に参加できる仕組みを作り、自治体や企業がDXを地域内で継続的に実行できる環境を整えます。

この取り組みを通じて、地域での新しい仕事の機会を作り出し、DXを進める人材を育てることが両立できるかどうかも検証されます。

実証実験の主な内容

1. 歴史・文化に強い観光向けLLMの構築と検証

実証地域にある観光ガイド、文化施設の解説文、そして約4,000ページにも及ぶ歴史資料の情報を集めて整理し、構造化されたデータを基に、観光スポットをおすすめする機能(AI観光レコメンド)や歴史・文化を案内する機能(AI観光ガイド)を備えた、観光に特化した大規模言語モデル(観光LLM)を構築します。対応言語は日本語、英語、中国語(繁体字が中心)で、今後さらに増やす予定です。

2. 観光地での体験価値の評価

長野駅周辺、白馬村、上田市の観光案内所やホテル、文化施設などで「AI観光レコメンド」と「AI観光ガイド」を提供します。利用者の行動を観察し、訪れるスポットの数が増えたか、滞在時間が変化したかなど、観光行動に関する指標を測定します。

  • AI観光レコメンド:訪日観光客の現在地、好み、滞在時間に合わせて、周辺の情報や体験を提案します。

  • AI観光ガイド:神社仏閣や城跡、街並みの背景にある物語や人物像を、観光客の母国語でわかりやすく伝えることで、より深く理解し、記憶に残る観光体験を提供することを目指します。

3. 住民共創型デジタルワークシェアによるDXと人材育成

歴史・文化・観光資料をデジタルデータにするには、その地域ならではの専門知識が不可欠です。今回の実証実験のためのデータ整備には、一般社団法人 立科町振興公社や一般社団法人キャリアステージいといがわなどと連携し、36名の地域住民が合計で約1,200時間も参加しました。DNPはDX推進の基本的なサービスを提供することで、地域に新たな仕事の機会を創出し、地域のDXを担う人材を育成することを目指します。

参加企業・団体とその役割

企業・団体名 役割
大日本印刷株式会社 ・全体企画
国立研究開発法人情報通信研究機構 ・多言語翻訳技術の提供
株式会社DNP出版プロダクツ ・データ構造化 ・住民テレワーカーディレクション
一般財団法人 全国地域情報化推進協会 ・参加自治体協力依頼 ・住民テレワーカー支援
株式会社JTBコミュニケーションデザイン ・実証事業実施
株式会社JTBパブリッシング ・翻訳
株式会社Preferred Networks ・観光LLM基盤の用意
有限会社AS Real(アズリアル) ・RAGデータDB構築設計
一般社団法人 立科町振興公社 ・データクリーニング
一般社団法人キャリアステージいといがわ ・紙文書のスキャン・データ化

今後の展望

DNPは今回の実証実験で得られた経験を基に、観光向けLLMの作り方やデータ整備の方法を標準化し、2027年度以降には日本国内の10地域規模で展開することを目指します。今回の実証で得られる知見は、訪日観光客が様々な場所を訪れる機会を増やしたり、滞在を延ばしたり、地域の文化をデジタルで保存したりすることなどに活用され、地域全体の価値向上に貢献していくことでしょう。

また、地域のDXを進めるワークシェアモデル事業として、観光だけでなく、教育、文化、行政、防災といった様々な分野への展開も進めていきます。今後も、官公庁、自治体、企業、地域住民と協力し、生成AIと地域の人々が共に作り出す新しい価値の創出に取り組んでいきます。住民が地域のデジタル化を担い、新しい仕事の機会が生まれることで、人口減少や人手不足といった社会の課題解決にも貢献していくことが期待されます。

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