1on1ミーティングの課題を「因果AI」で解決!エンゲージメント向上の秘密
近年、多くの企業で「人的資本経営」の重要性が高まり、従業員エンゲージメントの向上を目指して「1on1ミーティング」が導入されています。しかし、「1on1疲れ」を感じたり、期待した効果が得られなかったりするケースも少なくありません。
このような課題に対し、株式会社hootfolio、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)、明治大学商学部加藤拓巳准教授の3者は共同で、1on1ミーティングの質を高め、従業員エンゲージメントを向上させる科学的な方法を研究しました。この研究では、「因果AI」という特別なAI技術が使われ、その効果が実際に確かめられました。
「1on1疲れ」の原因をAIで科学的に解明
研究では、まずCTCの一つの事業部門で、因果AI「causal analysis®」を使って従業員エンゲージメントに影響を与える要因を探しました。その結果、エンゲージメントに最も大きく影響するのは「1on1ミーティングの質」であることが明らかになりました。
次に、「どのような1on1が従業員の満足度を高めるのか」をさらに詳しく分析しました。この分析から、以下の点が満足度を高めるために重要であることが分かりました。
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マネージャーによる傾聴・共感(部下の話に耳を傾け、気持ちを理解しようとすること)
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相談内容への実行力ある対応(相談されたことに対して、具体的に行動すること)
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会話のトピックとして「仕事内容」「キャリア開発」「雑談」を取り入れること
一方で、「プライベートな話題」は、1on1の満足度を下げる傾向があることも示されました。

科学的知見に基づいた「1on1トークスクリプト」で効果を実証
この分析結果をもとに、マネージャーが自然に、かつ効果的に対話できるよう支援する「1on1トークスクリプト」が開発されました。これは、営業の現場などで成果を上げてきた対話の構造化手法を1on1に応用したものです。
さらに、このスクリプトの効果を確かめるために「ABテスト」という比較実験が行われました。スクリプトを使ったマネージャーと使わないマネージャーのグループで1on1を行い、その満足度を比較したところ、スクリプトを使ったグループの部下の方が、1on1に対する満足度が統計的に見て明らかに向上していることが実証されました。
この取り組みは、これまで個人の経験や勘に頼りがちだった1on1を、データに基づいた再現性のある改善サイクルへと変える、人的資本経営の新しい形を示しています。
本研究成果は、学術誌『Strategic HR Review』に掲載されています。
Kato, T., Akashika, A., Yun, S., Kasahara, T., Ikeda, R., Yamada, E. (2025). Effect of a script for managers in charge of 1-on-1 meetings on employee satisfaction. Strategic HR Review, 1-7.
因果AI「causal analysis®️」とは
今回の研究で活用された「因果AI causal analysis®️」は、日本電気株式会社(NEC)の研究所で開発された独自のAI技術です。このAIは、通常のデータ分析では見つけにくい「原因と結果」の関係性をデータの中から探し出し、分かりやすく見せてくれます。
統計の専門知識がなくても、直感的に操作できる画面を通じて、「何が成果を生み出すのか」という問いに科学的な根拠を持って答えることができ、ビジネスでの次の行動を導き出すことが可能です。従業員エンゲージメントを高める要因の分析など、人事の分野でもその活用が広がっています。

hootfolioについて
株式会社hootfolioは、2025年1月にNECから生まれたスタートアップ企業です。「科学的な意思決定をあらゆる人に」をミッションに掲げ、因果AIを活用したSaaS型分析サービス「causal analysis®」を提供しています。NECで培われた技術力を基盤に、企業や行政、研究機関と協力しながら、科学的な意思決定を社会に広めることを目指しています。

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