ALSのダンサーが脳波で表現を拡張!NTTとDentsu Labが挑む「Waves of Will」

クリエイティブ活用

ALS(筋萎縮性側索硬化症)と共に生きるダンサー、ブレアナ・オルソンさんが、NTTの脳波技術とDentsu Labのクリエイティビティを融合させたライブパフォーマンス「Waves of Will」をオランダ・アムステルダムで披露しました。この挑戦は、人間の可能性を広げ、テクノロジーの力で新しい表現を生み出すことを目指しています。

脳波で「意思」を伝える新しいダンス

Dentsu Labは、テクノロジーを使って社会の課題を解決したり、新しい表現を生み出すクリエイティブな研究開発チームです。彼らのプロジェクト「ALL PLAYERS WELCOME」の第3弾として、ALSと共に生きるダンサーのブレアナ・オルソンさんとのコラボレーションが実現しました。

ブレアナさんは、幼い頃からダンスを通じて感情を表現してきました。2023年10月にALSと診断された後も、ダンスへの情熱を失わず、人々を勇気づける活動を続けています。このプロジェクトは、そんなブレアナさんの活動と「ALL PLAYERS WELCOME」の「誰もがプレイヤーになれる」という考えが合わさって生まれました。

最先端の脳波技術が表現をサポート

「Waves of Will」では、NTTが開発した最先端の脳波技術が使われています。ブレアナさんはヘッドセット型の脳波計を装着し、脳波を測定しました。この技術は、ブレアナさんが「左手を握る」「右手を握る」といった動きを頭の中でイメージした際の脳波のパターンを、AI(人工知能)が学習して認識します。

これにより、ブレアナさんの頭の中のイメージが、デジタル上のアバターの動きとしてリアルタイムに表現されます。さらに、NTT独自の技術によって、ブレアナさんの集中度や体の状態によって変化する脳波の特徴を細かく捉え、より正確に動きのイメージを検知できるようになりました。

脳波測定用のヘッドセットを装着し、笑顔を見せる女性のポートレート。

また、自然言語処理というAI技術を使って、日常の動作やバレエで表現したいことを脳波で選べるシステムも開発されました。これにより、たとえ身体的に意思を伝えることが難しくなっても、ブレアナさんが脳波で言葉を選び、振り付けの指示を出すことが可能になりました。

感情を表す単語がグリッド状に配置され、中央に赤い点がある心理状態を示す図です。

ライブパフォーマンスでは、事前にアバターのダンスを選ぶための画面も用意されました。会場の盛り上がりに合わせて、ブレアナさんがリアルタイムでダンスの動きを選ぶことで、アバターがブレアナさんの「意思」を表現し、身体的な制約を超えた新しい表現の可能性を示しました。

拍手喝采を浴びたライブパフォーマンス「Waves of Will」

2025年12月10日、オランダ・アムステルダムのOBA Theaterで「Waves of Will」が披露されました。

ブレアナさんの意思が「風」となるステージ

パフォーマンスのテーマは「風」です。風が花や動物に命を吹き込むように、ブレアナさんの存在が周りの人々を勇気づけ、変化の波を生み出すことを表現しています。パフォーマンスは「創造」「回復力」「変容」「共生」という4つの大切な要素で構成され、ブレアナさんの力強い意思と想像力を映し出しました。

暗い舞台の中央で車椅子に座る人物と、その上部に青い光で「Are you ready to dance?」というメッセージが映し出されている様子。

マックス・リヒターの音楽が流れる中、車椅子に乗ったブレアナさんが登場し、パフォーマンスが始まりました。第1幕では、脳波の波が作り出す美しい映像の後、ブレアナさんの「意思の選択」を表すマークが映し出されます。ブレアナさんが脳波で表現したい動きを選ぶと、ブレアナさんを表現したアバターがダンスを披露。ブレアナさんは、音や映像に合わせてその場でアバターの動きを選ぶことで、まさにその瞬間にしか生まれない唯一無二の作品を創造しました。

暗い舞台上で、車椅子のパフォーマーを含む4人がパフォーマンスを披露しています。

第2幕、第3幕では、幼い頃から共にダンスをしてきた兄のケイシーさんらと共に、ブレアナさんがまだ動かせる身体の機能を使って、実際のダンスを披露しました。ブレアナさんが生み出した動きは、まるで風となり、雲や霧を晴らし、蝶や鳥などの生き物を引き寄せ、色鮮やかで美しいエネルギーが波のように広がる世界を会場に作り出しました。パフォーマンスが終わると、会場の観客は立ち上がり、大きな拍手と歓声に包まれました。

暗い舞台で4人のダンサーがパフォーマンスを披露している様子。

薄暗い会場で、多くの観客が拍手をしている様子が写っています。

登壇者によるトークセッション

パフォーマンス後には、ブレアナさんの兄のケイシー・ハードさん、Stichting ALSのリモア・ノアクさん、振付家のピーター・リョンさん、NTTの中村真理子さん、Dentsu Labの田中直基さんが登壇し、トークセッションが行われました。

舞台上で6名の登壇者が座り、背景のスクリーンには名前と役職が映し出されています。

ブレアナ・オルソンさんは、「身体が動かなくなっても、心は止まりませんでした。以前のようには動けなくても、私はまだ踊ることができます。まだつながることができます。このプロジェクトは再び自分の情熱とつながれる大切な機会でした。」と語り、この挑戦が希望や優しさを思い出すきっかけとなり、技術と人間の可能性が寄り添う未来を感じてもらえたら嬉しいとコメントしました。

NTTの中村真理子さんは、「ブレアナさんとの本プロジェクトを通じ、身体に制約があっても“人の可能性には限界がない”ことを世界に示したいと考えました。技術を適切に活用することで、表現することも、社会に参加することも、誰にとっても開かれたものになります。」と述べ、今後も脳波を活用した技術開発を進めていく意向を示しました。

Dentsu Labチーフクリエイティブオフィサーの田中直基さんは、「ブレアナさんの強さと人間性に触れ、このプロジェクトは始まりました。彼女は世界中の人々に新しい視点と勇気をもたらす存在になると信じています。」と語り、脳波技術とデザインが融合することで、テクノロジーが人間性に極めて近づくことができると強調しました。

誰もが活躍できる社会を目指す「ALL PLAYERS WELCOME」

「ALL PLAYERS WELCOME」プロジェクトは、身体に障がいを持つ方々の視点やクリエイティビティの力を借りて、誰もが表現できるツールや環境を作ることを目指しています。テクノロジーを活用して人間の可能性を広げ、誰もが社会で活躍し、コミュニティとつながり、充実した日常生活を送れる世界の創造を目指しています。

Dentsu Lab Tokyoは、研究・企画・開発が一体となったクリエイティブな研究開発組織です。デジタルテクノロジーとアイデアを組み合わせ、「PLAYFUL SOLUTION」「おもいもよらない」を哲学に、人々の心を動かす表現や社会の課題解決に取り組んでいます。

電通ラボ東京のロゴマーク。

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