
2026年2月3日、名古屋商工会議所は特別講座「名商プレミアム講座」の一環として、スノーフレイク・コンサルティング合同会社の中島正博氏を講師に招き、「AI活用の新視点!指示力と相談力入門講座」を開催しました。この講座は、事後アンケートで10点満点中平均8.9点という高い満足度を記録し、「AI活用へのイメージが劇的に変わった」という声が多数寄せられるなど、生成AI教育の新しい形を示しました。
AI活用の現場定着を阻む壁
生成AIが普及してから数年が経ち、多くの企業がAIツールを導入しています。しかし、「現場での利用率が伸びない」「AIをうまく使いこなせない」といった課題に直面し、「AI定着の壁」にぶつかっています。この講座では、従来のAI機能の操作方法や「プロンプトエンジニアリング」といった技術的なアプローチとは異なる、新しい視点を提供しています。
AIを「パートナー」にする3つのスキル
本講座では、AIを単なるツールとしてではなく、「人格を持ったパートナー」としてとらえ、まるで人間と接するようにコミュニケーションをとるための「対AI社会性スキル」に特化しています。講師の中島氏は、AIを「部下・上司・外注先」という3つの役割に見立てて接する以下のメソッドを提唱しました。

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指示力(AIを部下と見立てる)
AIを「新人アシスタント」のように考え、あいまいな指示ではなく、背景、目的、そして「役割」「文字数」「形式」といった具体的な条件を明確に伝えます。例えば、議事録からの要約作成や会議のたたき台作成など、決まった業務を効率化する際に役立ちます。 -
相談力(AIを上司・壁打ち相手と見立てる)
自分のアイデアに対して、AIにリスクがないか洗い出してもらったり、別の視点からのアドバイスを求めたりします。企画案への「厳しい意見」や「代わりの案」を出してもらうことで、考えの抜け漏れを防ぎ、思考の質を高めることができます。 -
おねだり力(AIを専門家・外注先と見立てる)
プログラミング、デザイン、高度なデータ分析など、自分にスキルがない専門分野の作業をAIに「丸投げ」して、成果物を出してもらいます。複雑なExcelフォーマットの作成や、Webページ・動画の作成などが具体的な例です。
座学で終わらない実践型プログラム
この講座は、知識を学ぶ「インプット」と、実際に手を動かす「アウトプット」の二部構成で実施されました。単にAIの機能を紹介するだけでなく、すぐに仕事に活かせるような実践的な内容が盛り込まれていました。
第1部:AIを「ツール」から「パートナー」へ
午前の部では、AIを単なる操作対象ではなく、現在のAIの進化(GPT-5など)を踏まえた「AIとの正しい付き合い方」と、仕事に応用するための「考え方の枠組み」を講義形式で学びました。
セキュリティと行動ルール

情報漏洩の主なリスクとして、「学習データへの流用」だけでなく、フリーWi-Fiの利用、パスワード管理、共有リンク機能など、見落としがちな点も解説されました。また、各AIツール(ChatGPT、Microsoft Copilotなど)での「学習させない」設定方法や、AI生成物は「そのまま使う」のではなく「素材」として扱い、最終的な責任は人間にあるという原則を確認しました。
生成AIの進化と「AIエージェント」の到来

テキスト生成から始まったAIが、画像や音声も扱える「マルチモーダル化」を経て、自分で考えて仕事を進める「AIエージェント(デジタル社員)」へと進化している現状が説明されました。AIが得意なこと(要約、翻訳、アイデア出し)と苦手なこと(正確な計算、事実確認、空気を読むこと)を理解し、AIに適切な仕事を割り振る方法を学びました。
回答精度を高める「プロンプト」の極意

プロンプト(AIへの指示文)を単に覚えるのではなく、「人間(部下)に仕事を依頼するのと同じような配慮」が必要であることが強調されました。「役割」「背景」「指示」「形式」「制約」「例」の6つの要素を含めることで、AIの回答精度が大きく向上する型を学びました。また、音声入力やファイルを活用して、テキスト以外の情報もAIに伝える方法や、AIの「通常モード」と「長考モード」の使い分けについても解説がありました。
業務での関わり方を決める「3つの力」

この講座独自の考え方として、AIの役割を以下の3つに定義し、それぞれに応じた関わり方を学びました。
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指示力(対 部下):ゴールが明確な定型業務(議事録要約、データ整理など)で、背景や目的、出力形式を伝えて「たたき台」を作らせる力。
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相談力(対 上司):自分のアイデアに対し、抜け漏れがないか、リスクはないか、別の視点はないかなどをAIに尋ね、思考の質を高める力。
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おねだり力(対 専門家):自分にスキルがない分野(デザイン、プログラミング、高度分析など)について、理想のイメージを伝えて成果物をAIに「丸投げ」し、フィードバックでさらに良くする力。
最新AI活用事例のデモンストレーション
午前の部の最後には、「AI=文章作成」という固定観念を打ち破るため、最新ツールを使った様々な業務改善の事例が実演されました。
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顧客対応と危機管理
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Googleマップの辛辣な口コミに対し、Google Geminiを使って「誠実で、他の人にも良い印象を与える返信文」を素早く作成するデモが行われました。

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引っ越し業者の顧客向け案内を例に、文章だけの注意点を「一目でわかるイラスト付き解説」に変換するプロセスが示されました。
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非言語領域への拡張
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社長の静止画から「流暢な英語で自社をプレゼンする動画」を生成するデモ。
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創業50周年記念の社歌を、「若い社員も歌いやすい流行りの雰囲気」という指示だけで、その場で作曲・歌唱させるデモ。
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音声認識AIを活用し、会議の発言録と要約をリアルタイムで自動生成するデモ。
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高度な分析と開発
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「パン業界の次なるトレンド」など、ウェブ上の膨大な情報を調べて、根拠に基づいた市場予測レポートを作成するデモ。
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「清掃歴40年のベテラン節子さん」というAIの人格を設定し、若手社員が気軽に現場のノウハウを相談できるチャットボットを構築するデモ。

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プログラミング知識がなくても、「現場報告用のアプリを作って」とAIに指示するだけで、写真アップロード機能付きのWebアプリをその場で生成するデモ。

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第2部:実践演習で実務課題を解決
午後の部では、講義で学んだ知識をすぐに使えるようにするため、参加者が「今抱えている自社の実際の業務課題」をその場でAIを使って解決するワークショップが行われました。

参加者は昼休み中にワークシートに課題を記入し、講師が個別にサポートしながら、AIへの指示(プロンプト)の修正や適切なツールの選び方を支援しました。その結果、講座の終わりには、参加者の約8割が「設定したテーマをAIとともにやり遂げられた」と回答。わずか数時間の演習で、多くの成果物が生まれました。
当日取り組まれたテーマの例としては、以下のようなものがあります。
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指示力:メモ書きからの議事録清書、資料を読み込ませた上司への報告書要約、会社説明資料の構成案作成など。
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相談力:相見積もりの比較・整理、社内での支払遅延防止策の洗い出し、設備新設に伴うコンサルティング提案書の骨子作成など。
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おねだり力:自動シフト作成Excelマクロやアプリの生成、社内規程を学習させた専用チャットボット(GPTs)の作成、高卒採用ページのバナーデザイン案生成など。
受講者の声:意識変革が定着への鍵

開催後のアンケートでは、AIの機能習得だけでなく、AIに対する「マインドセット(意識)」の変化が大きく起きたことが明らかになりました。具体的なコメントをいくつかご紹介します。
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AIへの接し方が変わった
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「『指示力、相談力、おねだり力』という言葉が新鮮でした。ただ使うのではなく、それぞれの役割を意識しながらAIを活用するという視点は目からウロコでした。」
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「これまでとは異なる視点からAI活用のヒントを得ることができました。AI活用のイメージが一気に広がりました。」
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現場業務への具体的な適用が見えた
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「生成AIをどんな作業に活かせるのかという具体的なイメージがわきました。」
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「講師の方の見識が高く、さまざまな角度からの利用方法を教えていただけました。」
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「基本的な使い方は間違っていなかったが、『どう仕事をしてもらうか(任せるか)』という視点が足りていないことに気づけました。」
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心理的ハードルの低下
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「他で受講したときはいまいち使い方がわからないまま終わりましたが、今回はよくわかりました。」
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「説明がわかりやすく、ワーク時間を取っていて良かった。とにかく触ってみることが大事だと再認識しました。」
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「丁寧で分かりやすく、かつ分からないことも聞きやすい雰囲気でした。」
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講師コメント:実践が持続的な学習意欲を高める

講師の中島氏は、午前に知識習得、午後に徹底的なハンズオン(実際に手を動かして学ぶ形式)を行った結果、約8割の受講者が「自分の業務をAIとともにやり遂げる感覚」を味わえたとコメントしています。この「やり遂げる感覚」こそが、AIを継続的に学び、業務に定着させるための重要な鍵になると考えられています。本講座の成功を受け、スノーフレイク・コンサルティング合同会社は、AIツール導入支援だけでなく、「AIと協力して働ける人材」の育成に力を入れていくとのことです。
本講座の詳細は、名古屋商工会議所のウェブサイトでも確認できます。
AI活用の新視点!指示力と相談力入門講座

