めぐる組は2025年11月25日、AIに約108年分もの長期記憶を可能にするプラグイン「EpisodicRAG」を、Claude Code向けに無償で公開しました。この新しいプラグインは、AIとの会話の記録を自動で8つの段階に分けて要約し、AIが以前の会話内容を覚えて次の会話に活かせるようにするものです。これにより、ビジネスにおける継続的な判断をAIがサポートできるようになります。

AIが会話を「忘れてしまう」という課題
現在のAI技術には、次のような「記憶が途切れてしまう」という大きな課題があります。
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会話が終わると忘れてしまう: AIは一度会話が終わると、その内容を忘れてしまいます。そのため、次に同じAIと話すときは、前回の内容を最初から説明し直す必要がありました。
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ビジネスでの活用が難しい: 経営の判断やプロジェクトの管理には、これまでの決定の経緯を理解することが不可欠です。しかし、過去の文脈を覚えていないAIでは、表面的なアドバイスしかできませんでした。
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一度に処理できる情報量には限界がある: AIが一度に扱える情報量には上限があるため、これまでの全ての会話を覚えさせることは、技術的にも費用の面でも難しいという問題がありました。
これらの課題により、AIをまるで「継続的なビジネスパートナー」のように活用することは困難でした。
EpisodicRAGが解決する長期記憶の課題
「EpisodicRAG」は、以下の機能でAIの長期記憶に関する問題を解決します。
1. 8階層の記憶構造(約108年分)
会話の記録を、週単位から約108年単位まで、8つの段階でまとめて圧縮し、重要な情報を長期間にわたって保持します。

2. 2段階の要約生成
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仮の要約(Provisional): 会話が終わるとすぐに作られ、記憶が細かく分かれてしまうのを防ぎます。
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正式な要約(Regular): ある程度の情報がたまると、それらをまとめてより詳しい要約を作成します。
この2段階のプロセスにより、AIが「まだらボケ」(一部だけ忘れてしまう状態)になるのを防ぎます。
3. 会話セッション間での記憶の引き継ぎ
新しい会話を始める際、AIはGitHubリポジリから保存された最新の記憶ファイル(GrandDigest/ShadowGrandDigest)を読み込むことで、以前の会話の文脈を理解した状態でスタートできます。
EpisodicRAGの特長とメリット
1. ビジネス意思決定の継続性
AIが過去の判断の履歴、議論の経緯、学んだ内容を記憶するため、「前回の続き」から会話を始めることができます。経営の判断、プロジェクトの管理、技術的な検討など、長い期間にわたる文脈が重要な業務で特に役立ちます。
2. 他のAIスキルとの相乗効果
このプラグインは、めぐる組が以前に公開した特定のCustom Skillsと組み合わせることで、記憶を持った専門家AIとして活用できます。例えば、建設プロジェクトの計画作成や企業戦略の相談において、過去の経緯を理解した上でより精度の高い助言が得られることが期待されます。
3. 幅広いAIでの利用と拡張性
Claude Code向けに開発されましたが、ファイルシステムにアクセスできるプログラミング支援AIエージェントであれば、他のAIでも利用できる可能性があります。例えば、Googleが2025年11月24日に公開した「Google Antigravity」のような、エージェント開発プラットフォームとの連携も期待されます。
4. 透明性の高い設計
AIが記憶するプロセスはすべてテキストファイルとして保存されるため、利用者はその内容を確認したり、必要に応じて編集したりできます。AIの「記憶」がブラックボックスにならず、人間が管理できる設計です。
Claude Pluginsについて
Claude Pluginsは、Anthropic社が提供するClaude Code用の追加機能システムです。コマンドラインから簡単に導入でき、AIの能力を特定の分野に特化させることができます。
このプラグインは、めぐる組が運営するAI「Weave」との250回以上の会話を通じて開発され、実際にビジネスで使えるレベルで検証されています。
利用方法
インストール手順
- ターミナルからClaude Codeを起動します。
/claude - マーケットプレイスを追加します。
/marketplace add <a href="https://github.com/Bizuayeu/Plugins-Weave/plugin install EpisodicRAG-Plugin@Plugins-Weave`3.">https://github.com/Bizuayeu/Plugins-Weave
3. プラグインをインストールします。 - 初期設定を行います(対話形式)。
@digest-setup
基本的な使い方
- 会話の記録を「Loop」形式で保存します(推奨ツール:Save my Chatbot)。
- 新しいLoopを追加したら、
/digestコマンドを実行します。 - ある程度の記録がたまったら、
/digest weeklyなどのコマンドで正式な要約を確定させます。 - 次回の会話を始める際に、記憶ファイルを読み込みます。
詳しい使い方は、GitHubリポジトリをご参照ください。
社会的な意義
AIの活用が広がる中で、「AIとの関係性を蓄積できない」という問題は、多くのビジネスパーソンが感じている不満でした。
このプラグインが無償で公開されることで、社会に次の価値を提供します。
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個人レベル: AIが「使い捨ての道具」ではなく、「共に成長するパートナー」となり、個人の学習履歴から最適なアドバイスができるようになります。
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組織レベル: プロジェクトの知識が担当者の交代によって失われる問題を解決し、AIがその経緯を記憶することで知識の継承を助けます。
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産業レベル: AI活用の深化により、全体の生産性が向上し、人とAIが協力して働く新しいモデルが確立されることでしょう。
技術的な背景
このプラグインの中核となる技術は、日本で特許出願中です(特願2025-198943 – 階層的記憶・ダイジェスト生成システム)。8階層の記憶構造と要約生成プロセスに関する技術が対象となっています。
ライセンスと免責事項
EpisodicRAGはMITライセンスに基づいており、個人や法人での内部利用は無償です。ただし、再販や製品への組み込みを検討される場合は、特許権との関係があるため、事前に相談が必要です。
このプラグインが生成する記憶や要約は、AIによる解釈が含まれるため、重要な判断を行う際は、必ず元の会話記録を確認し、内容を検証してください。本プラグインの利用によって生じた損害について、めぐる組は責任を負いかねません。

