一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構は、2026年3月16日に『圧電×MEMS×IoTが実現する「バッテリーレス社会・見えないセンサー網」白書2026年版』を発刊しました。この白書は、電池を使わずに動く「バッテリーレス・自己給電センサー社会」という、これからの新しい産業の形を、材料の科学、デバイスの技術、市場の分析、そして産業での使い方という4つの視点から深く掘り下げて紹介しています。

電池が不要な社会とは?
「電池を不要にする素材」は、私たちが普段使っている社会の仕組みを大きく変える可能性を秘めています。この白書(全470ページ)では、圧電材料、MEMS(微小電気機械システム)、そしてIoT(モノのインターネット)という3つの技術が合わさることで生まれる「バッテリーレス・自己給電センサー社会」について、専門的な視点から詳しく解説されています。
圧電デバイスの市場は、2030年から2033年には数百億ドル規模にまで成長すると、複数の機関から予測されています。また、エナジーハーベスティング(環境中のわずかなエネルギーを集めて電力に変える技術)は、毎年二桁の成長が見込まれています。
どんな技術が紹介されているの?
白書では、PZTやPVDFといった圧電材料、無鉛系のKNNやAlScN、単結晶のPMN-PTやLiNbO₃など、15種類以上の材料が詳しく説明されています。これらが圧電MEMS、フレキシブル膜、圧電コーティングといった様々なデバイスにどのように応用されるか、75ものテーマにわたって網羅されています。

医療、社会インフラ、自動車、身につけるデバイス(ウェアラブル)、航空宇宙、ロボット、スマートシティなど、多くの産業での具体的な活用方法や、Bosch、STMicroelectronics、Vesper Technologiesといった主要な企業の戦略も収録されています。
白書はどんな場面で役立つ?
この白書は、以下のような実務的な課題を解決するのに役立ちます。
1. 技術戦略や研究開発の計画を立てる
PZT薄膜やAlN薄膜など、15種類以上の材料について、それぞれの特徴、作り方、使い道、設計のポイントなどが章ごとに整理されています。AIを使った材料設計(GNNやマルチフィデリティ学習など)の最先端技術も詳しく解説されており、自社の研究開発の計画を立てるのに直接活用できるでしょう。
2. バッテリーレスIoTやインダストリー4.0に対応する
MITが開発したPZT薄膜デバイスによる振動エネルギーハーベスティングや、磁歪-圧電複合ハーベスター(従来の約385%の出力向上)など、配線や電池交換が不要なセンサーを実現するための技術的な証拠が豊富に紹介されています。これにより、工場の予知保全や建物の構造ヘルスモニタリングにかかる総コストを最適化することが期待されます。
3. 医療・ヘルスケア分野の技術を評価する
超音波イメージング用のPMUT、圧電ナノ材料を使ったがん治療(ピエゾダイナミック、ケモダイナミック、フォトサーマル統合)、神経刺激インターフェース、超音波で薬を届ける技術、骨や筋肉の再生医療用スキャフォールドなど、医療分野での圧電技術の最先端が体系的にまとめられています。
4. 投資や競合分析、M&Aの評価を行う
Bosch Sensortec、STMicro、Vesper Technologies、CEA-Leti、Tyndall研究所といった世界の主要な企業や研究機関の動向、そして技術的な知的財産(IP)の動向が詳細に分析されています。投資家やM&A担当者が、競合他社の位置づけを把握するためのマスターマップとして活用できるでしょう。
5. 製造や量産化、技術経済性評価を行う
R2R印刷×PVDFフィルム、電紡×テキスタイル、焼結×機械加工(セラミックス)、半導体前工程×MEMS/アレイといった4つの量産化パターンそれぞれについて、設備投資(CAPEX)や運営費用(OPEX)、歩留まり、そしてセンシングやアクチュエーション、ハーベスティングの均等化コスト(LCOx)といった実務的な評価の枠組みが体系化されています。
未来へのアクションプラン
白書の知見は、以下の3段階の行動計画で活用できると提言されています。
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近未来(〜2028年): 既存市場でのMEMSセンサーやハーベスタの導入を進めます。例えば、産業設備への圧電MEMSセンサー導入による予知保全、PVDFフレキシブルフィルムを使ったウェアラブルヘルスモニタリングデバイスの試験導入、自動車のエアバッグやTPMS向け圧電センサーの高性能化などが有効です。バッテリーレスセンサーによる配線・電池交換コストの削減効果は、製品のライフサイクル全体で早期に費用回収が可能とされています。
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中期(2028〜2035年): 有害物質規制(RoHS・REACH)に対応するため、無鉛圧電材料(KNN・AlScN・BNT-BT系)への移行を進めます。200mmウェハに対応するプロセスの量産適用を見据えた製造パートナーの選定が重要になります。橋やトンネル、建物への埋め込み型圧電SHM(構造ヘルスモニタリング)システムの規格整備や、超音波PMUTアレイを用いたウェアラブル医療診断デバイスの薬事承認取得が主要な目標となるでしょう。
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長期(2035年以降): エネルギーハーベスタと圧電MEMSセンサー、そしてエッジAIが一体となった、配線も電池も不要な「インテリジェントセンサーノード」が、スマートシティ、工場、医療インフラに広く配置される社会が実現すると予測されています。圧電ナノ材料による非侵襲的な神経刺激、スマートドラッグデリバリー、組織再生が次世代医療の中心となり、圧電ロボットスキンが協働ロボットの標準的なインターフェースになると見られています。

白書の詳細はこちら
この白書は、製造・プロセスエンジニア、投資家、政策立案者、市場アナリストなど、幅広い読者におすすめされています。
内容の詳細は、以下のリンクから参照できます。
発行は一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構で、2026年3月に発刊されました。ページ数は470ページです。

