AIの進化を支える「頭脳」:FuriosaAIのRNGDが世界から注目
2025年12月5日、韓国で「2025 Korea Tech Festival(コリア・テック・フェスティバル)」が閉幕しました。このイベントは、産業通商資源部の主催により、韓国の先端産業における政府の研究開発成果や計画、そして公共研究機関、大学、大企業、スタートアップが持つ革新的な技術や研究成果を広く紹介することを目的として開催されました。
2025 Korea Tech Festivalの賑わい
会場にはサムスン電子や現代自動車といった韓国を代表する企業が出展し、元プロ囲碁棋士の李世乭氏やノーベル物理学賞受賞者の中村修二氏による基調講演も行われ、未来のAI技術や技術の事業化について深く掘り下げられました。

特に注目を集めたのは、韓国の主要AIディープテック企業が集結した「AI半導体特別館」や、グローバル企業との連携を探る「グローバルオープンイノベーションMeet-up Program」でした。これらのプログラムには、日本のNTTドコモやソフトバンクをはじめ、ドイツのドイツテレコムなど、世界各国の通信社やAIプラットフォーム企業が参加しました。

AI推論に特化したNPU「RNGD」とは
このフェスティバルで最も関心を集めた企業の一つがFuriosaAIです。同社は、AIの「推論(Inference)」、つまりAIが学習した結果を使って判断を下す作業に特化した半導体「RNGD(Renegade)」を披露しました。
AI半導体は大きく分けて、AIに知識を教え込む「学習」と、その知識を使って実際に答えを出す「推論」の二つの用途があります。NVIDIAのGPU(Graphics Processing Unit)は両方の作業を得意としますが、その分コストや消費電力が高いという課題があります。そこで、推論だけに特化したNPU(Neural Processing Unit)が注目されています。
NPUはAI処理に最適化された設計がされており、GPUに比べて電力効率が良く、製造コストや供給の面でも有利です。データセンターや通信事業者、クラウド企業など、AIの推論機能を効率的に使いたい企業がNPUを求める理由がここにあります。
FuriosaAIは、既に主要なパートナー企業へのサンプリングを進めており、来年初めには第2世代の半導体が本格的に量産され、市場への供給が拡大する予定です。

世界各国からの高い関心
今回のイベントで、FuriosaAIはオープンイノベーションを通じた連携の議論と並行して、「AI半導体特別館」にて8枚のRNGDカードを搭載したRNGDサーバーとRNGD半導体を展示しました。
RNGDサーバーは、8枚のRNGDカードと2基のAMD EPYC 9354プロセッサーで構成され、データセンターでの利用を想定しています。カード1枚あたり48GBのHBM3メモリを搭載し、合計384GBをサポート。高性能ながらも効率的なAI推論を実現します。

NPUサーバーやその説明を受けられる環境だったこともあり、NPUの導入を検討している多くの企業や機関の関係者がブースを訪れました。FuriosaAIの関係者によると、日本の東京渋谷区、名古屋、神戸を含む6つの地方自治体や、タイの政府関係者、政府向けビジネス事業者も、AI導入の解決策を探るためにブースを訪れたとのことです。

これらの訪問者からは、「クラウドよりも、自社の施設内でAIを運用する(オンプレミス)環境を好む傾向がある」という声が聞かれました。政府が求める性能と予算のバランスをNVIDIAのGPUだけで実現するのが難しい場合、FuriosaAIのNPUが解決策となるかどうかの相談が多く寄せられたといいます。また、各国の様々な政府プロジェクトでNPUを導入できるかという意見も寄せられました。
韓国AI半導体の未来と展望
韓国のAI半導体企業は、国内外での確実な需要を確保するため、初期の導入事例を増やし、産業のエコシステムを構築することに力を入れています。NVIDIAが現在のAI半導体市場をリードしているのも、長年のソフトウェアエコシステム構築の努力があったからです。
FuriosaAIは、LG AI研究院へのLLM(大規模言語モデル)推論用半導体の供給実績を基に、国内外の企業にLLM推論用途での可能性を提案しています。また、他の韓国企業もNPU導入実績の確保や、カスタムソフトウェア開発、共同開発支援などを通じて、NPUの活用を広げる努力を続けています。
FuriosaAIは2025年の海外実証支援事業を通じて、Douzone Bizonと協力し、日本の中小企業向けサービス導入も開始しました。これは、企業のカスタムAIサービス「Douzone Bizon ONE AI」の演算処理をFuriosaAIのRNGDで実行するというものです。2026年にはRNGDの本格量産が予定されており、これによりNPUの導入事例がさらに増え、韓国AI半導体企業の実力が世界に示されることが期待されます。

