楽天が国内最大級の高性能AIモデル「Rakuten AI 3.0」を発表
楽天グループ株式会社は、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)プロジェクト」の一環として、新たな高性能AIモデル「Rakuten AI 3.0」を発表しました。
この新しいAIモデルは、楽天がこれまで開発してきたAIモデルの中でも最大規模を誇り、日本語のニュアンスや文化、慣習を深く理解できるよう設計されています。将来的には、オープンウェイトモデルとしての公開も計画されており、より多くの人々がこの技術を利用できるようになることが期待されます。

「Rakuten AI 3.0」とは?日本語に特化した大規模AI
「Rakuten AI 3.0」は、「Mixture of Experts(MoE)アーキテクチャ」という、複数の専門家AIを組み合わせたような仕組みを採用した大規模言語モデル(LLM)です。LLMとは、人間のような言葉を理解し、生み出すことができる大きなAIモデルのことです。約7,000億個もの「パラメータ」を持っており、これはAIが学習する際に調整する、知識の量や複雑さを示す数字です。
このモデルは、楽天独自の高品質なバイリンガルデータと技術力、研究成果に基づいて開発されています。そのため、日本の独特な言語表現や文化、慣習をより深く理解できる点が大きな特徴です。
また、計算効率を高めるために、約7,000億個のパラメータのうち、個々の情報処理に対して約400億個のパラメータのみを効率的に使用する設計がされています。これにより、大規模で複雑なデータを迅速に学習し、処理することが可能です。
優れた日本語性能とコスト削減効果
「Rakuten AI 3.0」は、その高い日本語性能が評価されています。日本語の会話能力や指示に従う能力を測る評価基準である「日本語版MT-Bench」において、他の主要なモデルと比較してトップスコアを達成しました。
「日本語版MT-Bench」に関する情報はこちらで確認できます。
https://arxiv.org/abs/2306.05685
以下の表は、「Rakuten AI 3.0」と日本語に特化した主なモデルの比較を示しています。

楽天のこれまでのモデルとの比較では、その性能向上がより明確に示されています。

さらに、このモデルはパフォーマンスと効率性のバランスに優れており、「楽天エコシステム(経済圏)」のサービスで活用する試験では、他社の同規模モデルを使用した場合と比較して、最大90%のコスト削減が実現したとされています。
今後の展望:オープンモデルとしての公開も計画
「Rakuten AI 3.0」は、生成AI APIを統合した開発用プラットフォーム「Rakuten AIゲートウェイ」のAI群に加わり、「Rakuten AI」エージェントプラットフォームを通じて、楽天の様々なサービスに順次導入される予定です。これにより、楽天のサービスがさらに進化し、ユーザー体験が豊かになることが期待されます。
楽天グループのChief AI & Data Officer(CAIDO)であるティン・ツァイ氏は、「高品質でコスト効率の高いモデルの開発に注力しており、ユーザー体験を豊かにし、価値のあるAIを提供することを目指している」とコメントしています。
経済産業省AI産業戦略室長の渡辺琢也氏も、「高い性能を持つ大規模で効率的なAIモデル開発という成果を歓迎し、社会実装を通じてAIエコシステムを拡大し、日本のAI産業をリードしていくことを期待する」と述べています。
楽天は今後も、豊富なデータと最先端のAI技術を活用し、世界中の人々へ新たな価値を創出していくとしています。

